叩き合いになる激しい展開が相矢倉の醍醐味!プロの実戦から矢倉の崩し方を学ぼう

叩き合いになる激しい展開が相矢倉の醍醐味!プロの実戦から矢倉の崩し方を学ぼう

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年11月19日

今回のコラムも、矢倉における4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。

【第1図は△3三同桂まで】

いま▲3三歩と打った手に対し、△同桂と応じてきたところです。前回のコラムでは、▲2四角と出る手をプロの実戦例とともに見ていきました。 今回は、もうひとつの攻め方である▲1三桂成はどうなるのかを見ていきましょう。後手の応手は玉で取るか、香で取るかです。まずは△1三同香から見ていきましょう。これには、▲2四角が目につきます。▲1四歩△同香▲同香となれば受けにくいですね。しかし、あいにく手番は後手。△2三銀▲6八角△3五桂(第2図)と持ち駒を惜しみなく投入され、これは後手陣が見るからに手厚いですね。

【第2図は△3五桂まで】

これでは、桂損の代償は得られそうにありません。少し工夫が必要になりそうです。△1三同香に、▲3五歩△同歩と打ち捨ててから▲1四歩と突いてみます。一見意味がわかりにくいですが、△1四同香▲同香△1三歩▲同香成△同玉のときに▲3五飛(第3図)と走るのが狙いです。

【第3図は▲3五飛まで】

第3図で△3四歩には、一発▲1四歩と打ち、△2二玉(△同玉は▲1九香△2二玉▲1五飛で飛車成りが受からない)▲1五飛とするのが狙いです。以下、△1二歩には▲1三銀とガリガリ攻めていきます。△1三同歩▲同歩成△3一玉には▲2三香と攻める要領です。 第3図から△2三桂にはやはり▲1四歩と打ち、△同玉は▲1九香△1五歩▲同香△同桂▲3四歩、△2二玉には▲3八飛と引いておいて▲1三銀の打ち込みや、▲3四歩を狙っていきます。第3図で△2三銀もやはり▲1四歩と叩き、△同銀に▲3四歩と打てば攻めは続いていきそうです。 それでは、△1三同玉の変化はプロの実戦例を見ながら解説していきましょう。第4図は平成18年12月12日、第65期順位戦C級2組、▲村中秀史四段ー△伊奈祐介五段戦(肩書は当時)です。

【第4図は△1三同玉まで】

いま△1三同玉と伊奈六段が成桂を取ったところです。ここから村中六段は▲3五歩と打ち、△同歩に▲1四歩△2二玉▲3五飛△3四歩▲1三歩成△同香▲同香成△同玉▲1四歩△2二玉▲1五飛△1二歩と進めました。伊奈六段は1三の成桂を玉で取りましたが、もし香で取って同じ進行になった場合は持ち歩の数が先手が二枚、後手が0枚となっているところでした(ぜひ第4図の局面を△1三同香として玉を2二に置き、▲3五歩△同歩▲1四歩△同香▲同香△1三歩▲3五飛△3四歩▲1三香成△同玉▲1四歩△2二玉▲1五飛△1二歩とした手順を盤面に並べて確認してみてください)。そこで、村中六段は▲7二歩(第5図)と垂らしました。

【第5図は▲7二歩まで】

すぐに▲1三銀と攻めるのではなく、飛車の横利きを止めて▲5二銀と打つ手を作って攻めやすくしています。もし第5図で△7二同飛なら、飛車が8筋からそれて先手陣への脅威が少なくなります。対して伊奈六段は、△7五歩▲同金△6五歩と歩の叩きと4二の角を生かし、反撃に出ました。こうなってみると、やはり△3四歩、△2四歩としっかり受けの手を指されているので、攻めは続くもののはっきり優勢、とまではいきませんね。ただ、このような叩き合いになる激しい展開は、相矢倉の醍醐味とも言えます。第4図から△6五歩までは対局のほんの一部ですが、プロの激しい戦いを楽しんでいただけたらと思います。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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