穴熊退治には地下鉄飛車?地下鉄飛車の組む際の注意点と発展形とは【玉の囲い方 第54回】

穴熊退治には地下鉄飛車?地下鉄飛車の組む際の注意点と発展形とは【玉の囲い方 第54回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年11月09日

前回のコラムでは、「地下鉄飛車」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、地下鉄飛車に組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲9六歩、▲9五歩、▲2五歩、▲6六角、▲7七桂、▲8八銀、▲6八金上、▲3六歩、▲3七桂▲2九飛、▲9八香、▲9九飛(第1図)。

【第1図は▲9九飛まで】

それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点

第2図をご覧ください。

【第2図は△5二金左】

いま、後手が△5二金左と上がってきたところです。もちろん、ここから▲7七桂や▲3六歩として駒組みを進めても一局ですが、大きなチャンスを逃すことになります。なにがチャンスかわかりますか? 少し考えてみてください。ヒントは後手玉の位置です。

それでは答え合わせです。第2図から、すぐに▲5七角と引いてしまうのがチャンスを逃さない一手です。▲2四歩△同歩▲同角△同角▲同飛となってはまずいので、△4五歩▲8八銀に△4三銀として、△2二飛を用意するのが振り飛車の受けの常套手段です。しかし、構わず▲2四歩△同歩▲同角と突っ込んでいきます。通常は△2二飛と受けられて▲3三角成は△2八飛成、▲2五歩も△4四角とかわされたりしてあまりうまくいきませんが、△2二飛に▲3三角成(第3図)とした図を見てください。

【第3図は▲3三角成まで】

第3図から△2八飛成は? そうですね。▲5一馬と後手玉を取ってハイ、それまでです。よって、後手は△3三同桂と取るしかありませんが、▲2二飛成と飛車得になってあっという間に先手必勝となります。もし、△9五歩と突く手の代わりに△6二玉と上がっていたら、この順は成立しませんので、そちらは注意が必要です。続いては、第4図です。

【第4図は△6五歩まで】

いま、△6五歩と角取りに突き出されたところです。ここで、タダだからと喜んで▲6五同桂としては、△5四銀と上がられて6五の桂が助かりません。すぐに歩に飛びつかず、▲5七角と引かなくてはいけません。また、第4図から、▲5七角△6三金となった局面でも、▲6五桂とするのは今度は△5四銀に▲6六歩と桂を支えられますが、▲8五桂から端を攻める手がなくなってしまいます。また一歩を持たれると△6四歩で桂を取られてしまいますので、6五の歩は基本的に桂では取らないほうがよいでしょう。次に囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形

第1図から、▲8六歩~▲8七銀と7六の桂頭を補強する指し方もあります。ただし、▲8五桂と跳ねたときに△4五歩と突かれると9九の飛車取りになったりしますので、一長一短ともいえます。ほかには、第5図のような指し方もあります。

【第5図は△3三角まで】

平成27年7月27、28日、第51期王位戦第2局、▲深浦康市王位ー△広瀬章人六段戦(肩書は当時)です。深浦九段は9筋を伸ばす前に、▲8六歩~▲8五歩と突いていきました。そして、第5図から▲8四歩△同歩▲同角と8筋の歩を交換し、一歩を手に入れました。この後、深浦九段は▲3六歩~▲3八飛~▲3五歩と3筋から戦いを起こしたため、地下鉄飛車にはなりませんでしたが、歩を手に入れたことを生かして、▲9四歩△同歩▲9三歩と穴熊を攻略していきました。 手数は掛かってしまいますが、8筋の歩を切ってから地下鉄飛車にしていくのも、歩を持っているぶん破壊力が大きくなります。穴熊に悩まされている方は、一度試してみてはいかがでしょうか?

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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