"4連覇なるか"里見香奈倉敷藤花vs"三度目の正直なるか"谷口由紀女流二段。2年前と同じ顔合わせとなった大山名人杯倉敷藤花戦の展望とは

ライター: 渡辺弥生女流初段  更新: 2018年11月06日

倉敷藤花戦三番勝負は里見VS谷口

9月28日、東京・将棋会館の「特別対局室」で、第26期大山名人杯倉敷藤花戦の挑戦者決定戦が行われた。勝ち上がってきたのは、第17期の挑戦者、中村真梨花女流三段と、第24期の挑戦者、谷口由紀女流二段。二度目の挑戦をかけた実力者同士の激戦を制したのは、谷口だった。三番勝負の展望を予想してみよう。

思い入れの深いタイトル

谷口を迎え撃つのは、女流棋界のスター、里見香奈倉敷藤花。現在、女流王座、女流名人、女流王将、倉敷藤花の四冠だ。タイトル戦登場回数は37回、うち獲得数はなんと32期にのぼる。

里見が初タイトルを獲得したのが、ちょうど10年前、2008年の第16期倉敷藤花戦。当時の清水市代倉敷藤花と三番勝負を戦い、二連勝で倉敷藤花を奪取した。里見にとって思い入れの深いタイトルだ。第21期で甲斐智美女流王位(当時)に敗れて一度倉敷藤花を失ったものの、第23期でその甲斐を破って復位。現在3連覇中である。

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第24期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第1局終局後の里見倉敷藤花。撮影:常盤秀樹

里見の今期の成績は5勝3敗、勝率0.625。5月から6月にかけて行われた第29期女流王位戦では、渡部愛女流二段(現女流王位)に敗れ、女流王位を失う。しかし10月に行われた第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負では、2連勝で防衛。加藤桃子奨励会初段の挑戦を退けた。倉敷藤花戦の番勝負と並行して行われている第8期リコー杯女流王座戦五番勝負では、挑戦者清水市代女流六段との第1局を制したところだ。

加えて、里見が勝ち上がっているのが、女流棋士の枠で出場している男性棋戦の公式戦。4月からの成績は5勝6敗。見事な戦いぶりだ。

図1は10月3日に行われた第67期王座戦一次予選、島本亮五段との一戦。先手の島本が▲2一角成と桂馬を取ったところだ。ここから里見が一気に先手玉を寄せ切った。

【図1は▲2一角成まで】

△7五歩▲6七銀△同銀成▲同金△7六銀▲7八玉△6七銀成▲同玉△7六歩。

最後の△7六歩が決め手。▲7六同玉は△6六金▲8六玉△7五歩▲同玉△7四歩▲同玉△8三銀▲7五玉△7二飛(参考図1)で、先手玉は寄りだ。快勝した里見は王座戦で三回戦へ進出。

【参考図1】

里見は女流棋戦でも現在4連勝中で、調子はまずまずとみて良さそうだ。

谷口、三度目の正直なるか

一方、挑戦者となった谷口も調子は上々だ。4月からの成績は15勝6敗。全女流棋士中のランキングは、対局数21局が1位、勝数15局が2位、勝率0.714が5位。また6月末から9月の始めにかけて8連勝し、こちらも連勝ランキング2位だ。常に高い勝率をあげている谷口だが、ここ数年で従来の鋭い攻めに加え、受けの強さが随所に見られるようになり、安定感が増してきた。

谷口にとって今度の倉敷藤花戦は三度目のタイトル戦。二度目が、2年前の第24期倉敷藤花戦三番勝負だ。倉敷藤花はこのときも里見だった。

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第24期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第1局終局後の室谷女流二段。撮影:常盤秀樹

図2はその三番勝負の第1局の中盤戦。先手で里見が居飛車を採用した。図2は里見が▲2二飛成と飛車を成りこんだところだ。

【図2は▲2二飛成まで】

ここで谷口(当時は旧姓室谷)はグイッと△6六金。この手が3七の銀取りになっている。▲6六同金△同歩▲6五桂と進むと飛車角の両取り。しかしこれには△5五角(参考図2)が、次に▲6七歩成(王手)と2二の龍取りをみた厳しい一手で、後手優勢。

【参考図2】

実戦、里見は△6六金に▲5五歩△同角▲4二龍△5四飛▲4六桂と飛車に当てつつ銀取りを受けたが、△6四飛▲9八玉に△9五歩が「端玉には端歩」の格言通りの攻めで、谷口がペースをつかんだ。以下も快調に攻めた谷口の快勝となった。結果は2勝1敗で里見の防衛となったものの、谷口も存分に力を見せた番勝負だった。

読みと勢いがぶつかる番勝負

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第24期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負(里見香奈倉敷藤花 対 室谷[現・谷口]由紀女流二段)第1局対局開始の模様。撮影:常盤秀樹

里見と谷口はこれまでに7度の対戦があり、里見の6勝、谷口の1勝。また、里見が戦った9度の倉敷藤花戦の番勝負のうち、敗れたのは第21期の甲斐との三番勝負のみである。

この数字を見ると、里見が強すぎる、ということになるが、なんといっても谷口の1勝が倉敷藤花戦の番勝負の1局目だった、というのが大きい。内容も完勝である。倉敷藤花戦は三番勝負だ。またこのときのように1局目で流れをつかめば、ここまで勝ち上がってきた勢いで2連勝する可能性は高い。

谷口は振り飛車とみて間違いないだろう。里見は居飛車、振り飛車のどちらも指すので、戦型は里見次第ということになる。里見は相手が振り飛車のときは居飛車を採用することも多く、1局は居飛車対振り飛車の対抗型を見ることができそうだ。

現在里見は26歳、谷口は25歳。現在女流棋界で一番脂の乗っている世代同士の対戦に、注目だ。

三番勝負は11月6日、東京「将棋会館」にて開幕する。

渡辺弥生女流初段

ライター渡辺弥生女流初段

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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