地下鉄のように飛車が移動する?対振り飛車の囲い「地下鉄飛車」の特徴と組み方とは【玉の囲い方 第53回】

地下鉄のように飛車が移動する?対振り飛車の囲い「地下鉄飛車」の特徴と組み方とは【玉の囲い方 第53回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年11月05日

今回のコラムでも、振り飛車に対する囲いをご紹介します。見ていくのは、「地下鉄飛車」です。地下鉄の飛車? まったく想像がつかない方もいらっしゃるでしょうが、どういう囲いなのか? そちらを見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図は△1一飛まで】

平成9年5月7日、第69期棋聖戦1次予選、▲山口英夫七段ー△宮坂幸雄八段戦(段位は当時)です。後手の飛車の位置を見てください。一段目の駒を移動させ、飛車を8一に引いて1一まで横にすべらせて移動してきたところです。まるで、駒の地下を走って移動しているように見えませんか? このように、地下鉄のように飛車が移動することから、「地下鉄飛車」と呼ばれます。対振り飛車では、8筋や7筋方面から戦いが起こることが普通ですが、第1図を見ればわかるように、先手陣の左側を突破してから、穴熊を攻めるのではなく、左側はほうっておいて直接穴熊を攻めてしまおうという狙いです。

ここから山口八段は▲3八金寄と、さらに守りを固めましたが、宮坂九段は△2五桂と跳ね、▲4五歩△5三角▲6五歩に△1七桂成▲同銀△同角成! ▲同香△1六歩と、端から殺到していきました。次に第2図をご覧ください。

【第2図は▲9九飛まで】

平成29年2月23日、第67回NHK杯争奪戦予選、▲阿部光瑠六段ー△室岡克彦七段戦です。第1図は穴熊でしたが、第2図は美濃に対して地下鉄飛車の陣形を使っています。これは、後手が早めに9筋の位を取ってきた手を逆用してしまおうという狙いです。通常は▲9六歩△9四歩と突き合いますので、先手は駒をぶつけるまでに▲9六歩~▲9五歩と二手かかりますが、第2図は端の位を取られていますので、▲9六歩の一手だけで戦闘を開始することができます。

第2図からは、△6四銀に▲9六歩△5四歩▲9五歩と阿部六段が端を逆襲していきました。このように、端の位を早めに取ってくる、藤井システムにも有力な囲いとなっております。それでは、先手の駒を配置して、囲いを組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順

▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲9六歩、▲9五歩、▲2五歩、▲6六角(第3図)。

【第3図は▲6六角まで】

今回は、第1図のような穴熊に対しての手順ですが、藤井システムに対する場合は、▲5八金右のあと、すぐに▲6六角と上がって組んでいきます。第3図から、▲7七桂、▲8八銀、▲6八金上、▲3六歩、▲3七桂(第4図)。

【第4図は▲3七桂まで】

これで8筋から3筋までの駒をすべて移動させることができました。ここから、いよいよ飛車の大転回です。第4図から、▲2九飛、▲9八香、▲9九飛(第5図)。

【第5図は▲9九飛まで】

飛車を引き、香を上がって9九までできた線路に飛車を走らせます。ここから、▲8五桂などとして、端から殺到していきます。それでは、次回のコラムでは、地下鉄飛車に組む際の注意点と発展形をご紹介していきます。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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