豊島王位が誕生した王位戦や、佐藤名人が初優勝した銀河戦など5つの注目対局を棋譜付きで振り返ろう【注目対局プレイバック 2018年9月下旬】

豊島王位が誕生した王位戦や、佐藤名人が初優勝した銀河戦など5つの注目対局を棋譜付きで振り返ろう【注目対局プレイバック 2018年9月下旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年10月15日

9月下旬は豊島将之王位が誕生した王位戦第7局や、王座戦の第2局、それに佐藤天彦名人が初優勝を果たした銀河戦の放映などがありました。注目局から格言、手筋を学んでいきましょう。※肩書・段位は対局当時のもの

王位戦七番勝負第7局 豊島棋聖VS菅井王位

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写真左:菅井王位/写真右:豊島棋聖

【第59期王位戦七番勝負第7局 106手目△9三同桂まで】

図は第59期王位戦七番勝負第7局(▲豊島将之棋聖△菅井竜也王位)。先手の穴熊はスカスカですが、この瞬間は絶対に詰まない形です。先手がはっきり一手勝ちの情勢ですので、「寄せは俗手で」と迫っていきます。

図以下▲8二角成△同玉▲7三銀△同金▲同歩成△同銀▲7四香△7二銀▲7三香成△同銀▲7四銀△6二金▲6三金以下先手の勝ち。

穴熊に対しては玉を引っ張り出す寄せが効果的になります。▲8二角成と切り飛ばし、拠点に▲7三銀と打ち込むのが俗手ながら厳しい寄せ。守りの駒をはがしていき、たちまち後手玉は受けなしになりました。

王座戦五番勝負第2局 中村王座VS斎藤七段

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写真左:中村王座/写真右:斎藤七段

【第66期王座戦五番勝負第2局 57手目▲2九飛まで】

図は第66期王座戦五番勝負第2局(▲中村太地王座△斎藤慎太郎七段)。中盤戦で、これから戦いが始まろうかという局面です。ここから△7五歩▲同歩△8六歩▲同銀△6五歩と動きます。「開戦は歩の突き捨てから」です。△7五歩~△8六歩の突き捨てを入れたことにより、後に7六に桂を打つ空間もできました。先手玉の小ビンも開いて、気持ちの悪いところです。突き捨てを効果的に入れたので、攻めの筋が格段に広がっています。実戦も後に△7六桂の筋が生じ、後手の攻めがつながって、後手の斎藤七段が競り勝っています。

新人王戦準決勝 青嶋五段VS藤井七段

【第49期新人王戦準決勝 47手目▲5五同角まで】

図は第49期新人王戦準決勝(▲青嶋未来五段△藤井聡太七段)。先手は矢倉右玉から、5筋で銀を交換したところです。ここから△5六歩▲同銀としてから△5二飛と回りました。単に△5二飛と回った方が角取りなので厳しそうですが、それには▲5六歩と受けた形がしっかりしています。「敵の打ちたいところに打て」と先に△5六歩を利かすことで、先手の形を悪くしています。実戦も△5二飛に▲5七歩と受けましたが、△3五歩の桂頭攻めがうるさくなりました。実戦も藤井七段が快勝し、決勝三番勝負への進出を決めました。

将棋日本シリーズ 佐藤名人VS丸山九段

【第39回将棋日本シリーズ 73手目▲2五龍まで】

図は第39回将棋日本シリーズ(▲佐藤天彦名人△丸山忠久九段)の終盤戦。ここで△6七角成では▲6八歩で大変です。△3九銀が手筋の寄せ。以下▲3九同玉△5八竜となった局面は「金なし将棋に受け手なし」で、いっぺんに寄り筋となりました。こうなっては先手も粘りが利かず、佐藤名人の連勝がストップしました。

銀河戦決勝 行方八段VS佐藤名人

【第26期銀河戦決勝 140手目△6六同角まで】

図は第26期銀河戦決勝(▲行方尚史八段△佐藤天彦名人)。ここで▲6八金や▲7七歩のような受けでは上から押さえられてしまいます。実戦は▲6七玉△8八角成▲8三成香△5五桂▲7六玉と「中段玉は寄せにくし」とギリギリのしのぎ。入玉含みの受けで、後手にプレッシャーをかけています。以下も熱戦が続きましたが、最後は際どい寄せ合いを制した佐藤名人が銀河戦で初の優勝を飾っています。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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