寄せの段階に入ったら、難しい手は要らない?豊島二冠の対局から寄せの格言を学ぼう!【将棋の格言 第27回】

寄せの段階に入ったら、難しい手は要らない?豊島二冠の対局から寄せの格言を学ぼう!【将棋の格言 第27回】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年10月05日

今回も寄せに関する格言を見てみましょう。

「寄せは俗手で」とは、寄せの段階に入ったら、難しい手は要らず平凡な手で十分という意味です。勝勢~勝ちの局面なら、自然な手を重ねれば勝ちが近付いてきます。逆に苦しい局面だったら自然な手を指すと分かりやすく負けてしまうので、ひねった勝負手などが必要になってきます。

【第1図】

第1図は先手が勝勢です。3二の成銀が消えたり、△4六香~△3五歩のようになって左辺に逃げだされる展開だけ気をつければ良いでしょう。勝ち方は色々ありますが、▲1五歩△同歩▲1四歩が「端玉には端歩」の基本的な寄せ。以下△1四同銀▲1五香△同銀▲同銀と銀をはがして寄り形です。「金はトドメに残せ」という格言もありましたが、金を手持ちに残しておくことで、寄せが分かりやすくなっています。駒得しながらの寄せはいちばん分かりやすいでしょう。

受け方として最も厳しいものの一つに両王手があります。

【第2図】

第2図では▲2三桂成なら△1三歩でも△1九飛成でも△2一玉でも大丈夫です。しかし▲2三桂不成が厳しい王手。桂と香の両方で王手をされているため、後手は△2一玉とかわすしかありませんが、▲1一香成で簡単に詰んでしまいました。

このように両王手に対しては合駒をする手や、根元の駒を取るような応手が利かず、玉をかわすよりありません。その厳しさは「鬼より怖い両王手」とも言われます。

【第3図は△6二銀まで】

第3図は中飛車の出だし。初心者のころにこの筋を食ってしまった方もいるのではないでしょうか。▲3三角成が一発で勝ちを決める手。5八の飛と3三の馬の両王手となっており、後手は指す手がありません。まだ序盤でしたが、あっという間に玉を詰まされてしまいました。△4二玉のように「居玉は避けよ」としておけば何事もありませんでしたが、これが両王手の恐ろしさです。

なお、図では▲7三角成と王手飛車をかける手もあります。こちらは「開き王手」と呼ばれます。間接的に玉が飛、角、香ににらまれている形では両王手、開き王手に気を付けましょう。

【第4図は86手目△6一金まで】

第4図は今期王位戦七番勝負の第2局(▲豊島将之棋聖△菅井竜也王位※肩書は対局当時のもの)の終盤戦です。先手がはっきり優勢ですが、どう決めるのが良いでしょうか。実戦は▲4一金△3二竜▲5一金△4一歩▲6一金△同銀▲4四歩と攻めていきました。▲4一金が俗手の好手。△5二竜や△6二竜なら▲4二銀とさらに俗手で数を足す手が厳しくなります。後手は△3二竜と逆方向にかわしましたが、▲5一金~▲6一金で、歩切れを解消しながら後手の守り駒をはがすことに成功しました。最後の▲4四歩も攻めに厚みを加える手堅い手で、以下は先手が押し切っています。差がついている時の寄せは俗手が分かりやすいという例でした。

将棋の格言

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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