ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年10月24日
10月に入り、注目の竜王戦七番勝負が開幕。王座戦も第3局を終えて、激戦が続いています。また、女流王将戦も開幕し、里見香奈女流四冠の秋の防衛戦シリーズが始まりました。
竜王戦七番勝負第1局 羽生竜王VS広瀬八段
【第31期竜王戦七番勝負第1局 △4四同歩まで】
第1図は第31期竜王戦七番勝負第1局(▲羽生善治竜王△広瀬章人八段)。お互いに飛車を取り合って、いよいよ終盤戦というところです。ここでは▲8一飛も自然な攻めですが、やや迫力不足。できれば王手や金取りになる形で打ちたいところ。実戦は▲7三と△6一金▲5三桂成△同玉▲4一飛と進行しました。▲7三とは「金は斜めに誘え」の手筋で、△同金なら▲6二飛と打てます。対する△6一金は「金は引く手に好手あり」で、飛車打ちを警戒した受け。5三の地点が薄くなったのを見て、▲5三桂成~▲4一飛と攻め込みました。▲4一飛以下は△2五角が攻防手ですが、▲2一飛成△3一飛に▲2四桂が妙手で先手がペースをつかみました。最後は際どい終盤戦となりましたが、羽生竜王が勝って防衛に好発進を切りました。
【第66期王座戦五番勝負第3局 ▲4九香まで】
第2図は第66期王座戦五番勝負第3局(▲斎藤慎太郎七段△中村太地王座)。図の▲4九香は「下段の香に力あり」の攻防手ですが、△2四香が歩の裏を突く厳しい手。歩合ができない時の香打ちは厳しいものです。以下▲2四同飛△同銀▲4七香に△1一馬と抜いて、後手の勝ち筋に入りました。2連敗と苦しい出だしだった中村王座ですが、土俵際で踏みとどまり、第4局へ持ち込みました。
【第49期新人王戦決勝三番勝負第1局 ▲6六同金まで】
第3図は第49期新人王戦決勝三番勝負第1局(▲出口若武三段△藤井聡太七段)。藤井七段初の番勝負は、奨励会三段相手となりました。手番を握っている後手が優勢ですが、先手陣の急所はどこでしょうか。
実戦は△3六桂▲3一竜△3九角が「要の金を狙え」と寄せのセオリー通りの攻め。5七には桂が利いているため、金をかわすことはできません。以下▲2三角と攻めましたが、詰めろにはなっていないため△4八角成▲6九玉△7七桂成で後手勝勢となりました。
【第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第1局 ▲5五角まで】
第4図は第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第1局(▲加藤桃子初段△里見女流王将)。先手は美濃囲いの小ビンを攻めて、プレッシャーを掛けています。ここで対応を誤ると危険ですが、△5三銀が「遊び駒は活用せよ」と味の良い受け。次に△6四銀と角取りで受けることができれば手厚い形です。以下は手堅くまとめて、里見女流王将の快勝となりました。
【第39回日本シリーズ △2五香まで】
第5図は第39回日本シリーズ(▲菅井竜也七段△中村王座)。先手がうまく盤面を制圧して優勢な局面です。ここから▲3七玉△2九香成▲2三歩成△3五角▲3三歩成△5一玉▲3六玉が「中段玉は寄せにくし」の力強い受け。単騎の玉ですが、上部は2枚のと金が制圧しており、安全地帯です。不敗の態勢を築いた菅井七段が押し切っています。
【第12期マイナビ女子オープン本戦 ▲3四歩まで】
第6図は第12期マイナビ女子オープン本戦(▲中村真梨花女流三段△礒谷真帆アマ)。礒谷アマがうまい指し回しで優勢を築き、差を広げた局面です。図で自玉の安全を見切って△4八飛成▲同金△2八銀が「玉の腹から銀を打て」の格言通りの寄せ。腹銀の寄せは受けづらく、いっぺんに先手玉は寄り筋に入りました。礒谷アマは強敵を下し、アマチュアながら本戦1回戦を突破。女流棋士申請資格を得るベスト8に進出しました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段