必ず実戦で役に立つ!寄せに関する将棋の格言を羽生竜王の実戦から学ぼう!【将棋の格言】

必ず実戦で役に立つ!寄せに関する将棋の格言を羽生竜王の実戦から学ぼう!【将棋の格言】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年09月04日

前回に続き、終盤で役立つ格言を見ていきます。

「王手は追う手」
「王手するより縛りと必至」
「玉は包むように寄せよ」

いずれも意味としては近いものです。

【第1図】

第1図、先手は金銀をたくさん持っています。▲6二金、もしくは▲6二銀から王手はかなり続きますが、後手玉は9三からの逃走ルートが開けているので捕まりません。角を持っていれば簡単に詰むのですが、金銀だけでいきなり詰ましにいくのは「王手は追う手」になってしまいます。

第1図では▲9三銀が手筋で、挟撃形を築けます。△9三同香でも△同桂でも9三への逃げ道を封鎖できるので、容易な追い詰めとなります。また、別の筋として▲9二金△同香▲9一銀という縛り方もあります。駒を1枚渡しますが、持駒が少なくても必至を掛けることができます。状況に応じて判断しましょう。

【第2図】

第2図もやさしい寄せの問題です。ここで▲5二金と絡むのは△3一金で、後手にも粘りを与えてしまいます。スパっと▲4一竜と切り飛ばし、△同玉に▲2二金まで、やはり左右挟撃の必至です。これも基本的な形なので、実戦で逃さないようにしましょう。

【第3図は△2五桂まで】

次は監修の髙﨑一生六段の実戦から見ていきます。第3図は第76期順位戦C級1組8回戦(▲高崎一生六段△真田圭一八段)から。ここで▲1三銀から迫るのは詰まず、駒を渡して先手玉も危険になってしまいます。実戦は▲3一角が退路封鎖の一手で、後手の投了となりました。「王手するより縛りと必至」です。▲3一角は2二、1三に利かした寄せの好手で、指すなら△同金ですが▲1三銀△同桂▲同歩成△2一玉▲1二角以下の詰みとなります。玉の逃げ道に駒を放り込む寄せは覚えておきたいものです。

最後に、ハイレベルな「玉は包むように寄せよ」を羽生善治竜王の実戦から紹介します。

【第4図は▲6七銀まで】

第4図は第30期竜王戦七番勝負第4局(▲渡辺明竜王△羽生棋聖 ※肩書は対局当時のもの)の終盤戦。先手玉は広く、どう包囲網を築くか難しい局面です。まずは△8八金から入ります。▲同玉は△6七飛成で、竜を作って後手の攻めが分かりやすくなるため成功です。先手は広い方へ▲6八玉と逃げますが、△6五飛▲3四銀△6六歩▲5六銀(第5図)と攻めていきます。

【第5図は▲5六銀まで】

第5図は色々と駒が当たっている局面ですが、△3六桂が好手。あれほど広そうだった先手玉も8八金、6六歩、3六桂と攻め駒を設置することによって段々と狭くなってきました。△3六桂に▲6五銀は△6七金▲5九玉△2八桂成で下段に落としながらの寄せになります。実戦は▲3八飛ですが、△3四銀▲6五銀△4八銀(第6図)で包囲網が完成しました。

【第6図は△4八銀まで】

以下▲4四香△4三銀としてから▲4八飛△同桂成▲5七玉と脱出を図ったものの、△6八飛がトドメの好手で先手玉は受けなしとなりました。▲6八同玉は△6七金、▲5六玉は△6七飛成から詰みです。広そうな玉も急所さえ押さえれば捕まえることができます。

将棋の格言

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。

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