羽生善治竜王への挑戦を決めるのはどちらか。第31期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負・広瀬章人八段VS深浦康市九段戦の見どころは?

羽生善治竜王への挑戦を決めるのはどちらか。第31期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負・広瀬章人八段VS深浦康市九段戦の見どころは?

ライター: 相崎修司  更新: 2018年08月14日

第31期竜王戦決勝トーナメントも大詰めを迎えた。挑戦者決定戦三番勝負に勝ち残ったのは1組優勝の広瀬章人八段と2組2位の深浦康市九段である。羽生善治竜王への挑戦を決めるのはどちらか。両者のこれまでの戦いを振り返ってみたい。

両者の対戦と言えば、まず思いつくのが2010年の第51期王位戦七番勝負だ。王位三連覇中の深浦を、当時23歳の広瀬が4勝2敗(2千日手)で下し、初のタイトルを獲得したシリーズである。初の大学生タイトルホルダーということでも話題になった。

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広瀬八段は、久保利明王将を下して挑戦者決定戦に進出した。撮影:紋蛇

タイトル奪取の相手ということで自信をつけたか、両者の通算対戦成績は広瀬の10勝4敗で、直近は広瀬の3連勝中。竜王戦ではこの挑戦者決定戦が初の手合いだが、A級順位戦でも広瀬が4連勝中。対局数がさほど多くないとはいえ、深浦がこうも分の悪い相手というのも珍しい。だが、2015年の銀河戦決勝トーナメントでは広瀬を下した深浦がそのまま勝ち進み、初の銀河戦優勝を果たしている。

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深浦九段は、三浦弘行九段を下して挑戦者決定戦に進出した。撮影:宮本橘

では、今期挑戦者決定戦三番勝負の舞台はどうなるか。竜王戦の挑戦者決定戦三番勝負は2011年の第24期から7年連続で第3局までもつれている。トータルで見ても2連勝決着が12回、1勝1敗からの決戦が17回と、第3局が実現する可能性のほうが高い。

ちなみに、それまでの十段戦が発展解消されて始まった第1期ではトーナメント準決勝でぶつかった高橋道雄十段―米長邦雄九段戦と中原誠九段―島朗六段戦(段位は当時)でそれぞれ三番勝負が行われ、いずれも2勝1敗で勝ち上がった米長と島による七番勝負が行われた。島が4連勝で初の竜王となり、昭和最後のタイトル戦を飾った。

第2期以降、29回行われた挑戦者決定戦を振り返ると、ランキング戦の上位者が制したケースが17回あるが、決勝トーナメントが現行の制度に変更となった第19期以降をみるとランキング下位者の8勝4敗となっている。

また「1組優勝者は挑戦できない」は長年知られた竜王戦に関するジンクスである。第24期の丸山忠久九段がそれを破り、初めて1組優勝者として七番勝負登場を果たしたが、それ以降も1組優勝者はなかなか挑戦には至っていない。前期1組優勝の松尾歩八段も決勝三番勝負で涙を呑んでいる。ポールポジションともいわれる決勝トーナメントベスト4からの位置でも、挑戦を果たすのが難しいのが、強者がそろう竜王戦決勝トーナメントともいえるだろうか。

広瀬は意外にも今期が初の1組、それどころか過去には決勝トーナメント進出やランキング戦優勝の経験もない。自身の実績と比較すれば相性の悪い棋戦ともいえるのかもしれないが、初の1組で無敗のまま勝ち上がったのはさすがである。

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広瀬八段が挑戦者になれば、2015年以来のタイトル戦登場となる。写真は、第52期王位戦七番勝負第6局。撮影:常盤秀樹

深浦は前期に1組から2組へ陥落したが、すぐに復帰を果たした。2組決勝で敗れた三浦弘行九段を準決勝で下し、こちらも初の挑戦権を虎視眈々と狙っていると言えよう。第22期では三番勝負で森内俊之九段に敗れているので、今度こその思いは強いはずだ。

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深浦九段も2011年以来のタイトル戦登場を狙う。写真は、第82期棋聖戦挑戦者決定戦。この時、佐藤天彦六段(当時)を下し、2年連続で挑戦者となった。撮影:常盤秀樹

三番勝負の戦型はどうなるだろうか。前述の王位戦七番勝負では広瀬が振り飛車穴熊を連採し、王位奪取に結びつけたことが知られている。

だが、最近の広瀬は振り飛車穴熊を指さず、ほとんどが居飛車である。角換わりを中心とした最新形を追っているという雰囲気だ。

やはり居飛車党の深浦との一戦となれば角換わりの連続登場か......とも考えられるが、最近の深浦は先後にかかわらず角交換拒否の雁木模様に組む傾向が強い。竜王戦でもこの作戦を多用して勝ち上がってきた。最も直近の公式戦で深浦が角換わりの将棋を指したのは、今年2月のA級順位戦。相手は広瀬だったというのも面白いデータである。

挑戦者決定戦第1局が行われるのは8月14日。相居飛車の最新形がみられるのか、それとも広瀬が久々の振り飛車穴熊を採用するのか、注目である。

広瀬章人八段VS深浦康市九段 【棋士データ・成績比較】

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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