藤井七段も実戦で採用!覚えておくと役に立つ飛車や竜に関する3つの格言とは?

藤井七段も実戦で採用!覚えておくと役に立つ飛車や竜に関する3つの格言とは?

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年07月12日

今回は飛車や竜に関する格言を見ていきます。

【第1図】

第1図は矢倉で部分的に出てきやすい変化です。ここから▲2四歩△同歩▲7一角が攻めの筋。以下△7二飛なら▲4四角成△同金▲2四飛、△4二飛には▲4四角成△同金▲5三銀△4三飛▲2四飛のように攻めて、いずれも▲4四飛と取る手が生じます。「飛車は十字に使え」という格言は、このように飛車を縦と横同時に使うことです。これを十字飛車と言います。

【第2図は△5四香まで】

第2図は横歩取り△4五角戦法の一変化です。ここでは▲8五飛が定跡化された一手。▲8一飛成を狙いながら、△4五桂を受けています。また、△5七香成▲5八歩△8八飛という攻めも防いでおり、3方向に利いた飛車打ちです。第1図は駒得を狙う攻めの十字飛車でしたが、こちらは受けに重点を置いた攻防の十字飛車です。

「内竜は外竜にまさる」という格言があります。「内竜」、「外竜」とは?と思う方もいるでしょう。第3図をご覧ください。

【第3図】

相穴熊でこれから終盤戦という局面です。手番をにぎっている方が▲8六香または△8四香と縦から攻めたりすることが考えられるでしょう。お互いの陣地が盤面左側にありますが、陣形に近い先手の3一竜を内竜、陣形から遠い後手の2九竜が外竜です。なぜ内竜が外竜にまさるのか。それは先手のみ▲3九歩と、縦の利きを生かして受ける手段があるからです。同じ陣形での寄せ合いですから、この受けがある分内竜の方に利があるのです。

飛車は主に攻めの主役となることの多い駒ですが、強い駒なので効果的に使えば受けにも力を発揮します。それが「自陣飛車に好手あり」です。

【第4図】

第4図で△8九飛は一見厳しい攻めですが、先手も飛車を持っていれば▲7九飛、または▲3九飛で受けることができます。手順に一段金の形を作り、打ち込みに対して安定した陣形となります。飛車の打ち込みに対して飛車を合わせて受けるのは、最も多く見られる自陣飛車でしょうか。

【第5図は▲8六桂まで】

続いてプロの実戦から自陣飛車の好手を見ていきます。第5図は▲米長邦雄八段(当時)と△大山康晴十五世名人の対局(1982年・名将戦)から。先手は居飛車穴熊から食いつき、後手は大きな駒得ながら大駒の働きが悪く大変です。平凡な△7三金引は▲6二銀△8二玉▲7三金△同金▲7四歩で一手一手。実戦の△7三飛が頑強な自陣飛車です。以下▲6二銀△8二玉▲7三金△同金引▲6一飛△7二金打でなかなか決め手を与えません。以下は先手が攻めを誤った瞬間に突き放し、最後は大差で後手が勝ちました。

【第6図は△2九飛まで】

第6図は▲藤井聡太六段(当時)と△大石直嗣七段の対局(2018年・棋王戦)。先手はスカスカの一段目に飛車を打ち込まれて苦戦です。ここで▲8九飛が粘り強い一手。△8九同飛成▲同玉△2九飛なら▲7九歩で、第6図で▲7九歩と受けるよりも玉が攻めから遠ざかっています。実戦は△2八飛成と飛車交換を拒否しましたが、▲2九歩△1九竜に▲8五歩と今度は飛車を縦にも使い、反撃に出ました。形勢は難しいながら、決め手を与えなかった先手が逆転勝ちを収めています。

将棋の格言

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。

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