藤井聡太五段 強敵撃破の▲4四桂! 『藤井聡太全局集 平成28・29年度版 愛蔵版』のご紹介!

藤井聡太五段 強敵撃破の▲4四桂! 『藤井聡太全局集 平成28・29年度版 愛蔵版』のご紹介!

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2018年07月06日

『藤井聡太全局集 平成28・29年度版 愛蔵版』(箱入り・上製本)の発売日、7月9日(月)が迫ってまいりました。

8日(日)までのご予約なら、藤井七段のトレーディングカード付きとなっておりますので、お早めにお求めください。

本書に掲載されている全59局のうち、大きな節目となった対局、特に熱戦だった対局12局は、第1部「重要対局詳解編」として、村山慈明七段による解説付きでお楽しみいただけます。藤井七段のこれまでの公式戦の中でも屈指の名手とされる▲4四桂のが現れた「第11回朝日杯将棋オープン戦決勝 対広瀬章人八段戦」も、初優勝、最年少六段昇段を決めた対局として、もちろんこの12局に含まれております。

本欄では『藤井聡太全局集』から、▲4四桂が現れた場面から、優勝が決まるまでをご覧ください。
※ウェブ掲載用に書籍から内容を一部変更しています。

全棋士参加棋戦で優勝、六段に

【対局情報】
藤井聡太五段対広瀬章人八段
第11回朝日杯将棋オープン戦決勝
平成30年2月17日
東京都千代田区「有楽町朝日ホール」
持ち時間各40分(チェスクロック使用)

中空の桂

【第1図は△3七角まで】

第1図で▲3七同金は△4九飛成(A図)で、これは先手負け。この角を取る手はない。普通は4筋のどこかに歩を打つことを考える。

【A図は△4九飛成まで】

村山「私はネットテレビで観戦していて▲4六歩を予想していました。プロなら一目見える中合いの手筋で以下△同角成▲7五銀△5七馬▲同金△4九飛成▲8八玉(B図)。あるいは△5七馬で一回△7七歩(C図)とたたいて▲同金、▲6八金などの変化を読み、先手がいけそうながらもう一山ありそうかなと見ていました。やはり4一の飛車でダイレクトに王手される変化は怖い」

【B図は▲8八玉まで】

【C図は△7七歩まで】

第1図からの指し手

▲7三歩成△同 桂 ▲同成銀 △同 金
▲同桂成 △同 玉 ▲4四桂 (第2図)

【第2図は▲4四桂まで】

藤井は7三で駒をばらした。「あれ、なにをやるのだろう? さっぱりして味消しではないかと思いました」と村山七段。

「正直意図が分からなかったんです。△7三同玉まで進んでも狙いがよく分からず、藤井五段も秒に追われて慌てたのかなと思って見ていましたが、次の▲4四桂を見て、▲7三歩成からの手順が一本の線でつながっていたということに気付きました。▲4四桂は自分も全く見えていませんでしたし、ネットテレビで解説していた棋士も見えていない様子でした。事実上この手で藤井五段の勝ちが決まったわけですが、この手を見える棋士がどのくらいいるでしょうか。非常に珍しい筋だと思うし、この手を秒読みの中で発見した藤井五段には感服するしかありません」

▲4四桂。中空に打ったただの桂である。このただの桂が、15歳の優勝を決めた。▲4四桂のところ、▲4四歩のような手では△2六角成(D図)で粘られる。

ここは桂でなくてはならないのだ。

【D図は△2六角成まで】

妙手一発

▲4四桂の妙手一発で勝負は決まった。△同飛は▲4五歩(E図)と打たれ、どちらかの大駒が取られてしまう。大駒を取られては玉の薄い後手はひとたまりもない。しかし、本譜も金をボロっと取れては勝負ありだ。

【E図は▲4五歩まで】

△4三飛はつらい手だが、△4八飛成は▲同飛△同馬に▲7四歩△同玉▲6五銀以下の即詰み。

藤井は▲7四歩△同玉に▲6五銀と圧力を加え、ここからは大差になった。あとは藤井の上から押しつぶす理想的な寄せを見るばかりである。

第2図からの指し手

△2六角成▲3二桂成△4三飛 ▲7四歩
△同 玉 ▲6五銀 △8三玉 ▲8五銀
△4五角 ▲7四歩 △8一桂 ▲6四銀
△8二銀 ▲8四金 △7二玉 ▲7三歩成
△同 桂 ▲7四銀      (第3図)

【第3図は▲7四銀まで】

15歳の優勝なる

△8五桂▲同金△7六歩。そこで▲5五桂(F図)と寄せに行っても勝ちだが、実戦の▲5六桂は万が一にも負けない指し方だ。

【F図は5五桂まで】

△3六馬に▲3七金が鮮やかな決め手。これを見て広瀬が投了を告げた。投了図以下は△3七同馬に▲4五飛△同飛▲6三銀直成以下の詰み。

終局午後4時28分。佐藤天彦名人戦を思い出すような圧勝劇。もう誰も驚かない結果だが、この内容には驚く。万雷の拍手が起こり、また歓声が上がった。少し照れながらもうれしそうにしている藤井の姿をカメラの群れが追う。

第3図からの指し手

△8五桂 ▲同 金 △7六歩 ▲5六桂
△3六馬 ▲3七金       (投了図)

まで117手で藤井五段の勝ち(消費時間=▲40分、△40分)

【第4図は▲3七金まで】

名手▲4四桂の周辺、いかがでしたでしょうか。

『藤井聡太全局集』では、ここから優勝決定後の描写、村山七段による対局総括へと続きます。

その内容や、「重要対局詳解編」の他の11局、第2部「解説編」48局は、『藤井聡太全局集』にてお楽しみいただけます。

将棋情報局(マイナビ出版)

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