攻めたい気持ちをぐっとこらえる。飛車を使ったなかなか切れない攻め方を身に着けよう!【第42回 矢倉の崩し方】

攻めたい気持ちをぐっとこらえる。飛車を使ったなかなか切れない攻め方を身に着けよう!【第42回 矢倉の崩し方】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年07月11日

今回のコラムも、矢倉に対して4七銀、3七桂型から攻めていく指し方を見ていきます。それでは第1図です。

【第1図は▲3三桂成まで】

いま、▲3三桂成と金をはがしたところです。前回のコラムでは、桂・金・角で取るのはどうなるのかを見てみました。△3三同桂は▲4三銀△3一桂▲3四金、△3三同金は▲4三金、△3三同角は▲4八飛でいずれも先手が十分になりました。

では、残る一つの応手、△3三同玉はどうなるのかを見ていきましょう。これに対しては二通りの攻め方があります。まずは、▲4八飛(第2図)と回る手です。

【第2図は▲4八飛まで】

次の▲4三金を後手は防がなくてはなりません。4三に後手は駒を足さなければなりませんが、△3四銀と受けてみましょう。次に△4五歩と打たれると、先手は攻めが困難になってしまいます。よって急いで攻め続けなければなりません。勢い、▲4三金と打ち込みますが△同銀▲同歩成△同金と進んだ局面でどう攻めて行くかが問題です。ひと目は▲2二銀(第3図)ですね。

【第3図は▲2二銀まで】

△3二玉は▲4四歩、△3四玉は▲4五銀△2五玉▲1一銀成で▲2九香と▲3六銀△同歩▲4三飛成の二つの狙いがあって攻めきれます。△2二同玉も▲4三飛成と金を取りつつ飛車を成り込んでこれも先手成功ですね。

また、第3図の▲2二銀に代えて▲3四歩も有力です。△3四同金なら、▲2二銀がより厳しくなります。△3二玉も▲4一銀が厳しいですし、△3四同玉も▲4五銀△3三玉▲4四銀打と押し潰すように攻めていけます。しかし、もし後手の飛車が8二にいる場合は、△3四同金▲4三銀△4五歩と頑張る順を与えてしまうのでそこは注意が必要です。

では、▲4八飛に△4五歩はどうでしょうか? 「大駒は近づけて受けよ」の格言通りの手筋です。△4四玉と拠点を払われてしまうので、先手は▲4五同飛と取ります。そして、△3四銀が飛車取りになることが歩を捨てた効果です。今度▲4三金△同銀▲同歩成△同玉▲2二銀と攻めるのは、△3四玉(第4図)が飛車取りとなってうまくいきません。

【第4図は△3四玉まで】

よって、△3四銀には攻めたい気持ちをぐっとこらえて▲4八飛(第5図)と引いておきます。

【第5図は▲4八飛まで】

第2図と比較してみると、ゼロ手で3四に銀を打ちつけられて大損したようですが、後手を歩切れにしたことも大きいのです。一歩あれば△4五歩で後手がよいですが、残念ながらその歩は打ち捨ててしまっています。△3七角には▲4九飛と引いておけばよいですし、次こそ▲4三金からの攻めや、▲3六歩と合わせる(△同歩なら▲3五歩△同銀▲4三金)攻めもあって後手を引いてもなかなか攻めが切れることはありません。

では、ここでプロの実戦例を見てみましょう。第6図は平成27年6月30日、第41期棋王戦本戦、▲石井健太郎四段ー△飯塚祐紀七段戦(肩書は当時)です。

【第6図は△3三同玉まで】

ここから石井五段は、▲4八飛と回って攻め続けていきました。飯塚七段もコラム同様に△4五歩▲同飛と打ち捨てて△3四銀と補強し、▲4八飛に△5二銀とさらに守りを固めました。こう固められるとすぐに攻め潰すのは困難ですので、石井五段は▲7一銀△8一飛▲6二銀成と遠巻きに攻めていきます。飯塚七段は△5三銀▲5二成銀に△3七角▲4九飛△6五歩(第7図)と反撃し、局面は激しさを増していきました。

【第7図は△6五歩まで】

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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