菅井竜也王位らトップ棋士も採用し、再び注目を集める「阪田流」の狙いとは?【将棋世界2018年5月号のご紹介】

菅井竜也王位らトップ棋士も採用し、再び注目を集める「阪田流」の狙いとは?【将棋世界2018年5月号のご紹介】

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2018年04月05日

将棋世界2018年5月号(4/3発売)の戦術特集は、「豪快! 阪田流向かい飛車」

(1)鈴木宏彦さんが戦法の歴史を解説する「阪田流向かい飛車の真実」

(2)安用寺孝功六段による「阪田流今昔講座」

(3)阪口悟五段による次の一手「阪ちゃんの阪田流 戦いの急所」

の3部により、プロが使いはじめ、注目を集めている戦法を学びます。

本記事には、安用寺六段による「今昔講座」の「今」の部分を抜粋して掲載いたします。将棋世界2018年5月号の「昔」の部分もあわせてお読みいただくと、よりいっそう理解が深まります。

阪田流今昔講座

阪田流向かい飛車の歴史は深く、元となる定跡は江戸時代からあるとのことです。そして、それが阪田流向かい飛車と呼ばれるようになったのは、阪田三吉八段が大正8年5月11日に、大阪市報恩院で行われた、木見金治郎、七段昇段披露会席上で、土居市太郎八段を相手に指した一局がきっかけだと伝えられています。

さてその阪田流向かい飛車ですが近年、菅井竜也王位渡辺明棋王糸谷哲郎八段などのトップ棋士たちが採用したことで、再び注目を集めています。本講座では阪田流の主な狙いを、新旧どちらの変化もあわせて解説していきます。
(※編集注:本記事には新しい指し方を中心に掲載いたします。)

初手からの指し手(先後逆)

△3四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲7八金

△8五歩 ▲7七角 △同角成 ▲同 金

△4二玉 ▲8八飛(第1図)

【第1図▲8八飛まで】

▲7七同金から向かい飛車

角交換に対し、▲7七同金と取るのが特徴あるスタートです。通常、金は守りの駒なので、あまり前に出るのはよくないとされていますが、あえて▲7七同金と取り、▲8八飛(第1図)と振るのが阪田流向かい飛車の骨子となる形です。

主な狙いは7七の金で8筋を逆襲する逆棒金です。7七でも悪形なのに、さらにその駒で攻めようというのですから、まさに名人に定跡なしです。できることなら初めて目の当たりにした、土居八段の表情を見てみたいものですね。なお、▲7七角に角交換せずに△6二銀なら、別の戦型になります。

第1図以下の指し手②

△3二銀 ▲6八銀 △7二銀 ▲4八玉 

△3一玉 ▲3八玉 △6四歩 ▲2八玉 

△6三銀 ▲3八銀 △7四歩 ▲8六歩 

△同 歩 ▲同 金(第2図)

【第2図▲8六金まで】

現代版は玉を深く囲う

第1図から▲5八金とは上がらずに、▲4八玉から美濃囲いに組むのが、現代将棋ならではです。

後手の陣形も△3二銀から△3一玉の左美濃がはやりです。もちろんこれにも▲5八金から▲8六歩とする従来型も有力ですが、最近はとりあえず玉を深く囲うというのが主流です。

美濃囲いが完成すると、いよいよ▲8六歩から仕掛けます。先手陣は旧型に比べるとかなり堅いですが、手数を掛けた分だけ後手にも6三銀型の好形に組まれるので、簡単に潰すことはできません。

第2図以下の指し手

△7三桂 ▲8五歩 △5二金右 ▲7五歩 (第3図)

【第3図▲7五歩まで】

7六金型を目指す

△7三桂は次に△8五歩を狙っているので先に▲8五歩と押さえて、△5二金右には▲7五歩(第3図)と突きます。後手が自然に△同歩▲同金△7四歩と応じてくれば、▲7六金(参考1図)と引いておいて、先手が少し得をします。何気ないやり取りのようですが、この7六金型が手厚い構えで、8八の飛車が通って軽くなるのと、▲7七桂から局面によっては▲8四歩の突き出しを狙えます。

ちなみに▲7六金で▲8四歩は急ぎすぎで、△7五歩▲8三歩成△8七歩▲同飛△6五角で先手不利です。また▲7六金では▲8四金も考えられますが、△7二銀と引かれて、以下▲7四金には△8五飛とぶつけられて、先手が勝ちにくい展開でしょう。

【参考1図▲7六金まで】

第3図以下の指し手①

△4四歩 ▲7六金 △4三角 ▲8六飛 

△7六角 ▲同 飛 △8五飛 ▲7四歩 (第4図)

【第4図▲7四歩まで】

▲8六飛がうまい受け

第3図から△4四歩にも、▲7六金の形を作ります。△4三角とその金を狙う手がありますが、そこで▲8六飛がうまい飛車浮きです。以下△7六角と金を取る手には▲同飛から第4図のように▲7四歩と攻め合って指せますし、△8八歩と打つのも、▲8四歩△7六角▲8三歩成で先手優勢です。

また△4三角でじっと△2二玉と待つのも▲7七桂で、主導権を握っている先手の模様がよいでしょう。

第3図以下の指し手②

△4四歩 ▲7六金 △8三歩 ▲7四歩 

△同 銀 ▲6六金(第5図)

【第5図▲6六金まで】

△8三歩には▲6六金から中央に

今度は▲7六金に、ジッと△8三歩と受ける手を調べます。先手はここまで低姿勢に受けられると、8筋を一気に攻略できませんが、飛車の働きは段違いに先手がよく、ありがたい展開です。

▲7四歩△同銀に、▲6六金(第5図)と中央を目指すのがうまい方針です。▲7八飛と、7筋を目指すのもありそうですが、△6三金▲7五歩△6五銀▲同金△8七角▲7七飛△6五角成(参考2図)が一例で、難しい戦いです。

【参考2図△6五角成まで】

第5図以下の指し手

△4三銀 ▲5五金 △6三金 ▲7二歩 

△5四歩 ▲5六金 △7二飛 ▲8四歩 

△同 歩 ▲同 飛 △8三歩 ▲7四飛 

△同 金 ▲6三角(第6図)

【第6図▲6三角まで】

技が決まる

先手の狙いは▲5五金から歩の両取りです。第11図から△4三銀と受けられても▲5五金と出て、△6三銀には▲7四歩が手筋で、△同銀▲6四金で銀桂両取りとなります。▲6四金には△5五角が気になりますが、▲7八飛△6四角▲7四飛(参考3図)で先手さばけ形です。

以下△6三金には▲6四飛△同金▲7四歩△同金▲7一角で先手優勢ですし、△6三金打には▲7六飛で先手だけ銀を手持ちにして、第6図は先手が指しやすい展開です。

【参考第3図▲7四飛まで】

本記事の全文は将棋世界2018年5月号でお読みいただけます。

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