将棋コラム

 「揮毫」を知ると将棋がもっと楽しい! 安食総子女流初段に聞く「揮毫の世界」

「揮毫」を知ると将棋がもっと楽しい! 安食総子女流初段に聞く「揮毫の世界」

ライター: マツオカミキ  更新: 2018年03月16日

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「棋士や女流棋士がサインとともに書く言葉が、かっこいい!」

将棋初心者の筆者は、この言葉を「揮毫(きごう)」と呼ぶことを、将棋連盟書道部を取材した前回のコラムで初めて知りました。もっと深く揮毫の世界を知るべく、今回は安食総子女流初段「どうやって揮毫を決めるの?」「揮毫するときに意識していることは?」とお聞きしてみました!

どうやって決めるの? 誰かと被ったらどうするの? 揮毫の決め方

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――最初に、安食女流初段がどのような言葉を揮毫されているのか、お伺いしたいです。

女流棋士になった時から今までずっと書いているのが『一意専心』という言葉です。将棋をずっと一生懸命やりたいと思っているので、「ひとつのことに集中する」という意味の言葉を選びました。

――この揮毫は、どのように決めましたか?

「心」という文字が好きなので、「心」が入っていて良い意味の言葉を、国語辞典で探して決めました。最近だとインターネットで調べて決める人も多いみたいですけど、私が女流棋士になった時代には、まだインターネットも普及していなかったので(笑)。

――自分が決めた揮毫が、他の棋士や女流棋士の方と被ってしまうことはないですか?

ありますよ! なるべく被らないように選ぶのですが、後から被っていることに気付いて、その言葉を使うのをやめたり。

あと、被らないようにという意味も含め、自分で言葉をつくることもあります。例えば本田小百合女流三段は、『笑棋』と書いて「しょうぎ」と読ませる揮毫がありますよね。素敵だなあと思います。

他の女流棋士から、揮毫をもらうことはある?

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――揮毫をもらうには、サイン会に行ったり公式グッズを購入したりといった感じでしょうか。

そうですね。あとは、企業の部活や同好会が開催する将棋大会の賞品としてお渡しすることもあります。この場合は事前に色紙に揮毫して持っていきますが、サイン会の場合はその場で書きます。

――ちなみに、他の棋士や女流棋士から揮毫をもらったことはありますか?

もらったというか、里見女流五冠『心月』の色紙は買いました! 里見女流の努力と才能が素晴らしく、好きな女流棋士であるということと、私の好きな「心」という字が入っているので。あと、昔から憧れている高橋和女流三段には、個人的にお願いして『継続は力なり』の揮毫をしていただき、家に飾ってあります。

それと、私ではなく父がもらったものなのですが、幼少期には実家に大山康晴名人『一歩千金』の色紙が飾ってありました。当時は意味もわからなかったですけど、最初に「すごい」と思った揮毫なので、印象に残っています。

「文字に気持ちを乗せたい」安食女流初段が揮毫に込める想い

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――書道部の取材では渡す相手によって揮毫を変えるという棋士が多かったのですが、安食女流初段も変えることはありますか?

そうですね。お子さんにお渡しするときは、夢を持って頑張ってほしいという気持ちを込めて、造語で『夢叶(ゆめかなう)』と書いています。

将棋初心者の方にお渡しするときは『転凡成聖(てんぼんじょうしょう)』が多いですね。平凡なものでも素晴らしいものになるという意味で、将棋だと一番弱い駒である「歩」も裏返すと「金」になるので、それとちょっと似ているなと思って。

揮毫のレパートリーは、プロとして長くやっていくにつれて増えるものだと思います。ずっと同じだと、何度も揮毫をもらってくださる方に申し訳ないですから。私の場合はレパートリーが10種類ぐらいあって、お渡しする相手によって書く揮毫を変えています。

――揮毫のレパートリーを増やすタイミングは、どんな時でしょうか?

私の場合は、心境の変化があった時ですね。特に調子が悪い時は、自分を見つめ直して、新しい揮毫を考えることもあります。自分が大事にしようと思うことが変わるタイミングで、レパートリーを増やす感じです。

最初に決めた『一意専心』は今でも書いていますが、そういう意味では、気持ちがずっと同じだからこそ書き続けているんだと思います。

――最後に、安食女流初段が揮毫をするときに大事にしていることを教えてください。

自分の気持ちを文字に乗せたいと思って書いています。元気がないときに私の色紙を見たら、元気が湧いてくる‥‥というのが理想ですね。もらってくれた方に、少しでも気持ちが伝わったら嬉しいです。

あとがき

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「今日は、最新作を書こうと思っているんですよ」と、インタビュー後に書いてくださったのは『荷心香(かしんこう)』という言葉。「荷心」は蓮の花のことで、「泥沼の深い所にあっても綺麗な蓮の花が咲くことから、いかなる時でも自分らしさを失わない」という意味だそう。

「小さい頃から書道が苦手で‥‥あまりうまくなくてすみません」と言いながらも、真剣な表情で、気持ちを込めて書いてくださいました。

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棋士・女流棋士の気持ちが込もった揮毫に注目してみると、それぞれの考え方や目指すものを知ることができると思います。ぜひ、好きな棋士の揮毫をチェックしたり、共感する揮毫を見つけたりしてみてくださいね!

マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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