桂の貴公子・三枚堂達也六段が教える「桂の技法」【将棋世界2018年3月号のご紹介】

桂の貴公子・三枚堂達也六段が教える「桂の技法」【将棋世界2018年3月号のご紹介】

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2018年02月02日

将棋世界2018年3月号(2/2発売)の戦術特集は、「桂の潜在力」。

三枚堂達也六段による「桂の技法」、梶浦宏孝四段による「次の一手」、かりんの振り飛車WATCH「振り飛車党は桂が命」の3部で、盤上の天使・桂馬の正しい使い方を学びます。

本記事では、三枚堂六段による講座の一部をご紹介。「桂の貴公子」のやさしいレクチャーで、良い桂使いを身に付けましょう。

桂は特殊な駒

ーー三枚堂達也六段は現役棋士の中では、桂使いが巧みとの評判です。本コーナーでは桂という駒の特性、実戦に役立つ使い方などを解説してもらい、読者の理解度を深めてもらいます。

「自分では意識していませんが、確かに他の同年代の棋士たちからは、桂をよく跳ねる将棋だといわれることが多いですね。棋風が攻め将棋なので、そう思われているのかもしれません。」

ーーそれでは本誌は「桂の貴公子」ということで推していきます(笑)。桂という駒は他の駒にはない特徴があります。

「桂はクセが強く、他の駒に比べると特殊です。前どころか周囲1マスは動けませんし、将棋を覚えたばかりの方にとっては扱いづらい駒でしょう。それでも間に駒があっても飛び越えていけるのは、桂ならではの特権です。囲いを崩すのにも強い攻め駒といえます。」

ーー桂の短所はどんなところですか。

「守りにはあまり役に立ちませんし、跳ねたら後戻りができません。特に桂頭が弱点で、歩で攻められると弱いですし、桂頭に銀を打たれると跳ねる手を防がれてしまうので、弱点も多いですね。」

ーー序盤の駒組みでは、どんな点に注意をするべきでしょうか。

「最近はプロでも桂がポンポンと跳ねていく戦法が増えましたが、基本的な考え方としては、跳ねてもすぐに取られないことが大前提です。飛車角銀などの攻め駒で、桂頭をサポートしながら使っていきます。桂は足が速い駒で、3手で敵陣に成り込むことができます。まずは援軍を先に前線に送り出してから、最後に桂を跳ねるイメージですね。」

ーー中盤以降は、桂が持ち駒になることが多くなります。

「桂は使わなくても持っているだけで威力を発揮します。中盤では桂の両取りや、終盤に入れば桂があれば詰む形という局面が出てくるので、相手の形を限定させるという抑止力にもなっています。また駒台に桂を置いておけば、桂頭攻めを食らう心配もありません(笑)。」

桂の価値は状況で乱高下

ーー一般的に銀桂交換なら桂を持ったほうは駒損の認識です。現代将棋でも桂の価値は、金銀よりも低いのでしょうか。

「総合的に考えれば、やはり銀のほうが動けるマス目は多いですし、汎用性はあるので価値は高いですね。」

ーー桂の価値が高くなる状況というのは、どんな場面ですか。

「桂があれば、相手玉が詰んだり寄せがある局面や、桂の両取りが掛かる局面では、どの駒よりも価値が高くなる可能性を秘めています。また桂は飛び道具なので、取っ掛かりのない玉に、いきなり王手を掛けられるのも魅力です。」

ーー同じ小駒で同格の価値と見られる、香との違いはいかがですか。

「ケースバイケースです。『相手に歩のない場合の香は角と同じくらい』という某棋士の発言があるぐらい、香も市場価値が高い駒なので、香の価値が上と見る棋士もいるでしょう。桂の価値も局面の状況次第で乱高下します。」

ーー安い駒である歩との交換は損ですか。

「一般的には桂のほうが価値は高いですが、敵陣の急所の歩を削ることができますし、たとえば桂を渡しても、相手が歩切れの場合や敵陣を大きく乱せれば、形勢十分の場合もあります。たとえば振り飛車の8五桂ポンは、▲8五桂(第1図)に△同飛で桂損でも、▲8六歩〜▲8五歩〜▲8四歩と進んで、飛車先の逆襲を狙って、十分戦えます。」

【第1図は▲8五桂まで】

「不成」か「成」の判断は?

ーーまずは桂の基本的な使い方についてです。序盤は駒組みの中で▲3七桂や▲7七桂と跳ねる手があります。どんなタイミングで跳ねるのがよいですか。

「桂跳ねのタイミングはプロでも難しいのですが、いよいよ攻めるときか、桂頭の弱点がカバーできたら跳ねましょう。ときにはうまくいかないこともありますが、桂を使わないで後悔するよりも、失敗を恐れずに積極的に跳ねたほうがいいでしょう。やはり桂を攻めに使えれば厚みを増します。」

ーー▲1七桂や▲9七桂の端桂は実戦であまり現れませんが、中央に跳ねるほうがよいケースが多いのでしょうか。

「第2図を見てください。」

【第2図は△9三桂まで】

「同形矢倉からの変化で、先手は▲4五歩から中央に桂を使えますが、後手の桂は動く場所が8五しかありませんので、それを防がれてしまうと使いづらくなります。また端に跳ねた形は香車の利きに入るので、1歩あると▲9五歩△同歩▲9四歩と桂頭が狙われます。端桂は横歩取りや相掛かりなどでは出てきますが、▲2五桂や△8五桂と跳べる形が約束されていないと、指しづらいですね。」

ーー例えば第3図は実戦からですが、敵陣の三段目に桂が飛び込んだ場合、▲5三桂成と成るか、▲5三桂不成と両金取りを掛けるかの判断はいかがですか。

【第3図は△6四香まで】

「不成でいく場合は、相手の玉の寄せが見えない場合です。まだ中盤戦で、確実な駒得を目指したほうがいい場合は、不成でどちらかの金を1枚取ったほうがいいでしょう。終盤の寄せで相手玉に迫っている場合は、スピード重視なので、成ったほうがよい場合が多いです。相手玉の安定度はどの程度なのか、また自分の玉形や持ち駒の数などがどうなっているかが判断材料になります。」

ーー第3図から▲5三桂不成、次にどちらの金を取るのがよいでしょうか。

速い攻めなら▲6一桂成△同銀と右金を取ります。成桂を渡しますがそれ以上に敵陣を薄めたり手番を得ることが、大きなアドバンテージです。確実な攻めなら▲4一桂成と左金を取って、成桂を残します。

押さえておくべき桂の攻め筋

ーー桂の両取りは最もポピュラーな桂の技で、掛ければ気持ちいいですよね。

「プロでも両取りはうれしいものです(笑)。ただし戦場から離れているソッポの駒に両取りを掛けるのは、筋の悪い手になる可能性があります。」

【第4図】

たとえば第4図ですが、▲7三桂不成と飛車金両取りを掛けるよりも、持ち駒があれば▲5三桂成と迫ったほうがいいでしょう。狙う駒が遊び駒なら両取りを掛けないほうがいいので、見極めて指しましょう。

ーー第5図は、矢倉囲いの崩し方の桂の手筋として有名です。

【第5図】

「図から▲2四桂と打つ手が習いのある手筋ですね。△同歩なら▲同歩と伸ばしておいて、次に▲2三銀と打ち込む手が厳しい狙いです。△3一桂と受けても、▲4一角と数を足して攻めていけます。また▲2四桂に△4二金寄とかわすのも、▲3二歩や▲1五歩△同歩▲1二歩と、攻めが続きます。」

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本記事の続きは将棋世界2018年3月号(2/2発売)」でご覧いただけます。

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