端を突き捨てずに▲3三歩。桂馬で2つの地点を狙って攻める【矢倉の崩し方】

端を突き捨てずに▲3三歩。桂馬で2つの地点を狙って攻める【矢倉の崩し方】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年02月21日

今回のコラムも、飛車角銀桂を理想的に配置した形から、矢倉を攻めていく指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。

【第1図は▲2五同桂まで】

今回も、▲2五銀△同銀▲同桂と、銀交換をしたところで、後手がなにも受けなかった場合の局面からのスタートです。

前々回は第1図から、▲1四歩△同歩▲3三歩、前回は▲1四歩△同歩▲同香△同香▲3三歩と攻めました。いずれも先手がよくなりましたが、今回はまた別の攻め方を見ていきましょう。過去二回では、まず▲1四歩と突き捨てていきましたが、今回は端を突き捨てない攻め方を考えてみたいと思います。では、これまでも何度も出てきました▲3三歩(第2図)と打っていく攻め方を見てみましょう。

【第2図は▲3三歩まで】

△3三同金寄や△同金上と取ってくれば、▲同桂成と金桂交換をしておきます。前回は▲1四歩△同歩▲同香△同香と香を捨ててから▲3三歩と打ちました。今回はすぐに先手が攻めきれるというわけではありませんが、香を捨てていないぶん、後手はこの取り方には応じにくい、というところではあります。では、平凡に△3三同桂と取ってみましょう。ここで▲1四歩と突けば、△同歩▲同香△2五桂▲1一香成(第3図)と進んで、どこかで見た局面になりませんか?

【第3図は▲1一香成まで】

そうです。前々回のコラム、第5図と同一局面です。第3図から、△1七桂成は▲2一銀、△1一同玉は▲2五飛でいずれも先手十分でしたね。ただし、△1七桂成▲2一銀△2八成桂▲1二成香とする順は、飛車を取られてしまいますので、これでは不安。と、いう方もおられることでしょう。

そこで、△3三同桂のとき、▲1四歩以外の手を考えてみましょう。2一の桂を3三へ跳ねさせましたので、端が薄くなっているという点に目をつけるところは一緒です。さて、どう攻めましょうか。

▲3三同桂成△同金寄▲2五桂とするのはどうでしょう? △4三金寄と逃げれば▲1四歩△同歩▲同香として、このとき2五の桂を取られないですみますよね。では、この攻めでよいのでしょうか。▲2五桂のとき、△3五桂と打たれ、▲3三桂成△同玉(第4図)となってみるとどうでしょう。

【第4図は△3三同玉まで】

金ははがせましたが、△4七桂成や△2七銀と打って上部開拓をする手が残っていて、先手が忙しい局面ともいえます。▲3三同桂成~▲2五桂のおかわり攻めは、矢倉戦では有力になることが多いですが、相手に駒を渡してしまうので、それで徹底抗戦されると大変、ということも多々あります。では、△3三同桂のときにほかの攻めを考えてみましょう。▲1三桂成(第5図)と端に桂を捨てていく攻め方が正解です。

【第5図は▲1三桂成まで】

第5図で△3一玉は▲2三成桂ですので、△1三同香と取る一手ですが、▲1四歩と突けば、▲1三角成△2一玉▲1二銀までの詰めろがかかります。先ほどと同じように、△1四同香▲同香△3五桂とするのはどうでしょうか。今度は、▲1八飛と寄れば、▲1二香成~▲1三飛成と端を破りながらどんどん駒を成って攻めていけますので大成功となりました。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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