ちょっとした手順の違いが矢倉攻略の成否を決める?【矢倉囲いの崩し方】

ちょっとした手順の違いが矢倉攻略の成否を決める?【矢倉囲いの崩し方】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年02月14日

今回のコラムも、飛車角銀桂を理想的に配置した形から、矢倉を攻めていく指し方を見ていきましょう。それでは第1図です。

【第1図は▲2五銀まで】

▲2四歩△同銀と突き捨て、▲2五銀とぶつけた局面です。

前回のコラムでは、△3三銀と引いた手を見ていきました。これには、▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同角△同角▲同飛△2三歩▲2八飛と角銀総交換をしても先手十分ですが、▲1四歩△同歩▲同銀△同香▲同香△1三歩▲同香成△同桂▲1四歩△1二歩▲1三歩成△同歩▲2五桂△2四銀▲3三歩とガンガン攻めて先手よしが前回の結論です。

今回は、第1図から平凡に△2五同銀と銀交換に応じる手はどうなるのかを見ていきましょう。対して、▲2五同飛と取り返すのは、△3六銀▲2九飛△4七銀成(第2図)とされ、▲6八角△3七成銀と桂を取られてしまいます。

【第2図は△4七銀成まで】

以下、例えば▲5二銀と攻めても△3三金寄で、3七の桂を取られてしまっているので▲2五桂と跳ねる手がなく、攻めが続きません。よって、▲2五同桂(第3図)と桂で取るほうが正しい手となります。

【第3図は▲2五同桂まで】

さて、第3図ですが、もしこのまま後手がなにも受けなかったらどうなるかをまずは考えていきましょう。端は伸びており、桂も絶好の位置にいますね。ただし、▲3三歩△同桂▲同桂成△同金寄などと普通に進めるのは、歩切れになってしまうので、工夫して攻めたいところです。

では、どうやって攻めていくのか? そちらをご覧いただきましょう。何通りか攻め方はありますが、まずは▲1四歩と端を攻めてみましょう。△同歩と突き捨てを入れてから▲3三歩と打ちます。△同桂(第4図)と取られますが、さてどう攻めていくのがよいでしょうか?

【第4図は△3三同桂まで】

第4図で、▲1三銀が見えた方はなかなか鋭いですね。2一の桂を3三に跳ねさせて端の守りからそらし、薄くなったところを攻める。その感覚はとても正しいです。△1三同香なら、▲同桂成△3一玉▲2三成桂と、調子よく攻めが続いていきます。これにてよし、と読まれた方は残念。不正解です。

▲1三銀に△3一玉と逃げられるとどうでしょう? ▲3三桂成△同金寄▲2五桂は△4三金寄で3三へ打つ歩がありません。△3一玉に、▲1四香も重い形で△4五歩▲6八角△6四角くらいでも先手難局です。もう少しスマートに攻めたいところですよね。

第4図から、平凡に▲3三同桂成はどうでしょう? △同金寄で▲2五桂と打っても△2四金とされて3三に打つ歩がありませんよね。でも、実はよい攻め方があります。△3三同金寄に、先に▲1四香と捨て、△同香に▲2五桂(第5図)と打つのが厳しい攻めとなります。

【第5図】

第5図は、▲1三角成△2一玉▲1二銀までの詰めろです。よって、後手はなにか受けなければなりませんが、△2四金は▲1三銀△3一玉▲3三歩が厳しい攻めになります。第5図で△2四香と受けるのも、▲1三銀△3一玉▲3三桂成△同角に▲2五歩△1七香成▲2六飛でよしです。▲2五歩では、▲2四銀成△同歩▲同角△同角▲同飛としても先手十分となります。

よって、第4図からは平凡に▲3三同桂成と取った後、▲1四香と香を捨ててから▲2五桂と打つのがうまい攻めで、気持ちよく先手は攻め込んでいくことができました。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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