将棋コラム

里見香奈がまた防衛か、伊藤沙恵が初タイトル獲得か。女流名人戦五番勝負の展望は?

里見香奈がまた防衛か、伊藤沙恵が初タイトル獲得か。女流名人戦五番勝負の展望は?

ライター: 渡辺弥生女流初段  更新: 2018年01月12日

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4度目の番勝負

1月14日に開幕する第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負。女流棋界の第一人者である里見香奈女流名人に挑戦するのは伊藤沙恵女流二段に決まった。今期の両者の番勝負における対戦は、第28期女流王位戦、第39期霧島酒造杯女流王将戦、第25期大山名人杯倉敷藤花戦に続き4度目となる。

タイトルホルダーの里見に挑戦者の伊藤が挑んだこれまでの3度のタイトル戦は、すべて里見の防衛という結果に終わった。女流名人獲得連続8期の里見が今度もまたタイトル防衛を果たすのか?里見と数々の熱戦を繰り広げながらも、あと一歩のところでタイトルに及ばなかった伊藤が悲願の初タイトル獲得となるのか? 簡単に今回の女流名人戦五番勝負の展開を予想してみようと思う。

8連覇中の女流名人、里見女流五冠

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第43期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局終局後の里見女流名人。挑戦者の上田初美女流三段に出たしから2連敗しカド番に追い込まれた里見であったが、第3局から3連勝して防衛を果たした。撮影:常盤秀樹

タイトル獲得数は早くも30期を数える女流棋界のスター・里見香奈女流五冠。2010年の冬に行われた第36期ユニバーサル杯女流名人戦(第42期より冠名を岡田美術館杯女流名人戦へ変更)五番勝負において、当時の清水市代女流名人より女流名人を奪取。以来一度もタイトルを失うことなく8期連続で女流名人の座を守り続けている。クイーン名人の資格保持者だ。

鋭い攻めと抜きんでた終盤力から「出雲のイナズマ」の異名を持つ里見は、今では将棋に厚みと受けの強さも加わったオールラウンドプレーヤーだ。今期の成績は12勝4敗、勝率0.75。自身の持つ5つのタイトルすべての防衛に成功し、残りの1つであるマイナビ女子オープンも現在本戦トーナメントを勝ち上がっている。相変わらずの強さで、調子も良好と見ていいだろう。

図は11月26日に岡山県倉敷市で行われた第25期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第2局の終盤戦。戦型は後手の伊藤の向かい飛車に先手の里見が居飛車左美濃で対抗する、居飛車対振り飛車の対抗型となった。持ち時間も少ない中、巧みに手を作り、飛車角を捌いた里見が、瞬く間に後手陣を切り崩した。馬取りに打った図の△5二桂に、1分将棋の中、里見が踏み込んだ。

【第1図は△5二桂まで】

▲6二馬△同玉▲5三金△同玉▲4三金まで、里見女流五冠の勝ち。

▲6二馬を△同銀と応じるのは▲8三銀△同玉▲8四香△7二玉▲8二金△6一玉▲4一飛成△5一銀▲7二金打まで。実戦は△同玉と取ったが、最終手▲4三金以下、△5四玉▲5二飛成△4五玉▲5六竜△3五玉▲2六銀△3四玉▲3三成銀で、後手玉は即詰み。この終盤の読みの正確さ、速さこそ里見の強みだ。

リーグ全勝優勝の挑戦者、伊藤女流二段

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第44期岡田美術館杯女流名人戦のリーグ最終戦の伊藤女流二段。最終局の中村真梨花女流三段にも勝利し、9戦全勝で里見女流名人の挑戦者となった。撮影:常盤秀樹

一方、挑戦者になった伊藤沙恵女流二段は絶好調だ。今期の成績はここまで25勝8敗、勝率0.758。対局数、勝数、勝率、連勝ランキング全てにおいて第1位である。女流名人リーグはなんと9戦全勝で優勝した。

がっちり組み合う持久戦を得意とする手厚い受け将棋。相矢倉と相振りが十八番のオールラウンドプレーヤーだ。細かい攻めをつなぎ、相手の攻めをきっちりと一手余す勝ち方は危なげがなく、今一番強い挑戦者であることに間違いない。

図は今期の女流名人リーグの2戦目、上田初美女流三段戦の中盤戦。先手の伊藤が▲1八角と自陣に角を打ったところだ。攻め駒を責めるこの角打ちが良い手で、伊藤がペースを掴む。

【第2図は▲1八角まで】

△4四飛▲4六歩△5四銀▲5七銀上△6五桂▲同銀△同銀▲6三角成

途中▲4六歩を△同銀と取るのは▲6三角成で金がタダ。上田は△5四銀とこれまたタダのところへ銀を引く勝負手を放つ。▲5四同歩は△4六飛▲4八銀△3九角▲同銀△4九飛成で飛車に成りこまれてしまう。じっと▲5七銀上と上がった手も伊藤らしい冷静な一着だ。▲6三角成と急所に馬を作った局面は先手良し。次に△2四歩が厳しい。以下、激しい寄せ合いを制した伊藤が勝利した。

戦型、中終盤の攻防が見どころ

ここまでの里見と伊藤の対戦成績は里見8勝、伊藤3勝。現在里見の5連勝中だ。今回の女流名人戦五番勝負が4度目のタイトル戦である。過去3度のタイトル戦はすべて里見が防衛している。内容は中盤に伊藤が優位に立つ将棋が多いものの、やはりここ一番の勝負所では里見が強い。今回もやや女流名人の里見が有利と言えるだろう。

伊藤としては、いかに里見の勝負術に飲み込まれずに自分のペースで戦えるかがカギとなりそうだ。両者とも何でも指すので、戦型は相振り飛車から相矢倉、居飛車・振り飛車の対抗型まで、さまざまな戦いを見ることができそうだ。序盤の駆け引き、そして両者の持ち味の出る中終盤の攻防に注目していただきたい。

五番勝負第1局は神奈川県「岡田美術館 開化亭」にて開幕する。

渡辺弥生女流初段

ライター渡辺弥生女流初段

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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