将棋コラム

中村太地王座もサプライズで登場!里見VS伊藤、女流名人戦第1局の裏側は?

中村太地王座もサプライズで登場!里見VS伊藤、女流名人戦第1局の裏側は?

更新: 2018年01月23日

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1月14日(日)、第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負が開幕しました。女流棋界の第一人者・里見香奈女流名人(女流五冠)に、今年度、抜群の勝率を誇る伊藤沙恵女流二段が挑むゴールデンカード。両者タイトル戦で4度目の顔合わせとなる今回、里見女流名人が連続防衛記録を9期に伸ばすのか?伊藤女流二段が悲願のタイトル獲得を果たし、4度目の正直となるのか?箱根を舞台に行われた第1局の模様をお伝えしたいと思います!


仙石原のすすき草原。撮影:山口絵美菜

対局前日の1月13日。東京駅から関係者一同でバスに乗り込み、ビル群を抜けて箱根に向かいます。だんだん緑が増えていく景色を眺めているうちに思わず微睡(まどろ)み、ふと目を醒ますと、雪冠を被った富士山が視界に飛び込んできました。晴天にそびえたつ富士山に見とれつつ、曲がりくねった登り道をずんずん進み、山肌一面にうねる仙石原のすすき草原を抜けて一行が宿泊する箱根仙石原プリンスホテルに到着。きりっと澄んだ空気に迎えられました。

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岡田美術館・小林忠館長の説明を受ける里見女流名人と伊藤女流二段。奥にあるのが尾形乾山「色絵竜田川文透彫反鉢」。撮影:常盤秀樹

その後、対局会場のある岡田美術館の見学へむかい、尾形乾山の「色絵竜田川文透彫反鉢」や横山大観の「霊峰一文字」を鑑賞しました。とても一日では見尽くせないほどの所蔵品を前に「なにか一点でいいので、好きだと感じる作品を見つけてくださいね」と言われた小林忠館長のお言葉を受けて、私も心惹かれた作品を目に焼き付けました。

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前夜祭で挨拶をする日本将棋連盟・佐藤会長。撮影:常盤秀樹

その後、対局場である開化亭での検分を終え、山の端に日が沈む頃、前夜祭が行われました。佐藤康光会長の挨拶、両対局者の意気込み、山口昇士・箱根町町長のご挨拶を受け、和やかなひとときを過ごしました。

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第1局の戦型予想をする福崎九段、中村九段、里見女流初段、山口女流1級。撮影:常盤秀樹

会の終わりには立会人の中村修九段、解説者の福崎文吾九段、里見女流名人の妹で、聞き手を務める里見咲紀女流初段、そして私、山口による第1局の戦型予想が行われ、関西弁と笑い声が飛び交うという場面も。最後は清水市代常務理事の素敵な挨拶で中締め。その後、ホテルに戻り、温泉で鋭気を養い、しんしんと夜が更けていきました。

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第1局の振り駒をする小林館長。撮影:常盤秀樹

山の端から太陽が顔を出し、勝負の朝。小林館長の振り駒により伊藤女流二段が先手となり、9時30分に対局開始。ノータイムでパタパタと手が進み、相振り飛車になりました。

控え室では福崎九段が「これは僕が中学生の時に創った詰将棋なんやけど、どない~?」と継ぎ盤に詰将棋を並べ、頭を悩ます人が続出。そうこうしているうちに里見女流名人が銀を中段に繰り出し、端攻めの構想を見せて機先を制します。「里見さんが上段に振りかぶってる感じやね」「伊藤さん困ってるんじゃないの?」と継ぎ盤も動きだし、「伊藤さんならどう受けるかな~」と検討。

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足湯に浸かる福崎九段と山口女流1級。撮影:常盤秀樹

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撮影:常盤秀樹

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足湯に浸かりながら福井江太郎氏の大壁「風・刻」を鑑賞できる。撮影:常盤秀樹

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将棋盤を抱えて歩く福崎九段。撮影:山口絵美菜

思わしい手が見つからない難解な局面に伊藤女流二段の手がぴたっと止まると「じゃあ足湯にいきましょうか」とお声がかかり「せっかくやから盤持ってこ」と盤駒を抱えた福崎九段と一緒に岡田美術館前の足湯へ。福井江太郎氏が俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を創造的に再現した大壁「風・刻」に見守られながら、温泉気分で将棋を楽しみました。

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大盤解説会の模様。撮影:常盤秀樹

午後からは、いよいよ大盤解説会。まず福崎九段と清水女流六段が登壇し、笑い声が控え室まで届くほどの楽しい解説が繰り広げられました。そして福崎九段の提案で清水女流六段、里見女流初段そして私の「女流3人」による斬新な解説にバトンタッチ。

清水「咲紀ちゃんはどちら持ち?」里見咲「後手持ちです」清水「あら、それは"愛"抜きでも同じ(形勢判断)なのかしら?」里見咲「もちろんです!」とほんわかしたやりとりに続いて中村九段が和服姿で登壇。その間も淀みなく指し手が進み、伊藤女流二段が自陣に馬を引き付けて守備を固めるも、里見女流名人が追い討ちをかけて終盤戦に突入。

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撮影:常盤秀樹

のっぴきならない盤上とは裏腹に、控え室では穏やかな昼下がりに岡田美術館名物のチョコレートが差し入れられ、伊藤若沖や尾形光琳をモチーフとしたデザインのチョコレートに舌鼓を打つおやつタイム。

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「ブルガリ・イル・チョコラート」のマスターショコラティエとして活躍した岡田美術館専属ショコラパティシエ・三浦直樹による岡田美術館特製のチョコレート。撮影:常盤秀樹

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どのチョコレートを食べようかと迷う山口女流1級。撮影:常盤秀樹

そんな中、勝負はいよいよ最終盤の大詰めへ。中段にするりと逃げ、上部脱出に望みをかける伊藤女流二段の玉を里見女流名人がどう捕まえきるかに注目が集まる中、大盤解説には他の取材で箱根を訪れていた中村太地王座がサプライズゲストとして登場しました。

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中村王座がサプライズゲストとして大盤解説会に登場した。写真は取材本部で検討する様子。撮影:常盤秀樹

「おおっ!」と客席が沸いたのもつかの間、時を同じくして伊藤女流二段が投了し、第1局目は98手で里見女流名人の勝ちとなりました。すると舞台裏から福崎九段が「あれ~あなたはミスタービーンやないの~?」と登場。中村王座が笑顔で「いやいや~先生!確かに子供の頃よく似てると言われましたけども...」と答え、現王座と第39期で王座を獲得した福崎九段の「W王座」の軽妙なやりとりを前に会場は爆笑の渦に。しばらくして両対局者が大盤解説場に登場。

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終局直後の模様。撮影:常盤秀樹

福崎九段が「じゃあ、両対局者一言ずつお願いします。一言と言わず二言でもええよ~」と優しく促すと「序盤の△4五銀は自分で考えて指してみた手」「2局目以降も頑張ります」と里見女流名人。

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五番勝負を先勝した里見女流名人。撮影:常盤秀樹

続いて伊藤女流二段が▲6八角~▲1六歩の辺りで「勘違いがあって予定変更をしたのですが、変えない方が良かったのかもしれない」と本局の反省と次局に向けた抱負を語り、解説会は幕を閉じました。

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1局目はやや不本意な内容だったが、2局目以降に挽回が期待される伊藤女流二段。撮影:常盤秀樹

里見女流名人の白星で開幕した第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負。第2局の舞台は島根県出雲市「出雲文化伝承館 松籟亭」です。伊藤女流二段が星をタイに戻すのか?「出雲のイナズマ」里見女流名人が防衛に王手をかけるのか?注目の第2局は1月28日(日)に行われます!

山口絵美菜女流1級

ライター山口絵美菜女流1級

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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