藤井聡太四段の正確かつすばやい攻め。△8六桂と捨てたのが鮮やかな決め手【プロの技】

藤井聡太四段の正確かつすばやい攻め。△8六桂と捨てたのが鮮やかな決め手【プロの技】

ライター: 君島俊介  更新: 2017年12月22日

2017年も残り僅かとなりました。今年は藤井聡太四段の活躍や羽生善治永世七冠達成など、将棋界にとって歴史的な一年となりました。そこで、今回は第30期竜王戦6組ランキング戦準決勝の▲金井恒太六段-△藤井聡太四段戦に注目してみました。藤井聡四段が15連勝目の対局でした。

本局は先手の矢倉模様に藤井聡四段が左美濃急戦で対抗しました。「藤井四段が後手で急戦の最新形を選んだのは、この対局が初めてだと思います」と飯島栄治七段は指摘します。

デビュー戦となった第30期竜王戦の対加藤一二三九段戦はがっぷりした相矢倉でした。藤井聡四段の対局は角換わり腰掛け銀が多く、その中でも△8一飛・△6二金と構える最新形を中心に戦っています。ほかの戦型では、本局のように1局ごとに作戦や駒組みの手順を変えて工夫しています。

本局は序盤で金井六段に攻め合いに持ち込むタイミングを逃したため、後手が主導権を握る展開に進みました。

【第1図は71手目▲9八歩まで】

第1図は後手が攻め続けているところ。ここで△6四角が左右に利く急所の角打ちでした。飯島七段は「藤井四段の将棋はこういう角打ちが随所に見られます。角の使い方がうまいですね」と解説します。

実戦は△6四角以下▲4六桂△8五飛▲同銀△9七歩成▲7九玉△4六角▲同歩△8七桂と強襲して後手勝勢になりました。金井六段は▲4六桂と打って駒をたくわえてからの▲2二角の頓死筋を含みにしていましたが、△8五飛から端を破ったあとに△4六角と切ったのがうまく後手玉が安全です。なお、△8五飛に▲8七歩と辛抱する手もありますが、△8二飛と引いておけば後手よしです。

【第2図は83手目▲8七同金まで】

第1図からしばらく進んだ第2図。先手から▲2六桂と▲2二角からの詰みを狙う手があるので後手は的確に攻めなければなりません。

そうした局面で△8六桂と捨てた手が鮮やかな決め手になりました。これが△6八銀からの詰めろ。先手は受けなければなりませんが、(1)▲8六同金なら△7七銀と上から押さえつける手が厳しく、(2)▲8九金も△9八香成と攻める手があります。

実戦は(3)▲8八玉と早逃げしましたが、△7八金から寄り筋に入って藤井聡四段が制しました。後手の囲いが残って終局となったため、差のついた将棋に見えますが、左美濃の弱点を突く▲4六桂や▲2六桂からすぐに攻守が入れ替わってもおかしくありません。それを許さない、正確かつすばやい藤井聡四段の攻めが光りました。飯島七段も「第1図からあっという間に勝勢にしていく技術が素晴らしい将棋でした」とうなる一局でした。

これがプロの技!

君島俊介

ライター君島俊介

2006年6月からネット中継のスタッフとして携わる。順位戦・棋王戦・棋聖戦などで観戦記も執筆。将棋連盟ライブ中継の棋譜中継で観る将ライフを楽しむ日々。

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