豊島JT杯覇者VS山崎八段の対局も。8,000人以上が集まった大盛況の将棋日本シリーズ東京大会の様子をご紹介

豊島JT杯覇者VS山崎八段の対局も。8,000人以上が集まった大盛況の将棋日本シリーズ東京大会の様子をご紹介

ライター: 相崎修司  更新: 2017年12月12日

11月19日、JT将棋日本シリーズの東京大会が行われた。まずはテーブルマークこども大会が開始された。3,500名を超える参加者と、それを見守る同伴者の方を含めると、会場にいる人の数は8,000人を超えるだろう。「最も参加者が多い将棋大会」と称してさしつかえない規模だ。

jt2018_report_01.jpg

今年の東京大会は昨年までの東京ビッグサイトから、会場を幕張メッセに移して行われている。都心部からは、やや離れたことになるが、参加者の数は昨年よりも増加した。このことからも少年少女の将棋ブームは、より高まっていると考えられる。

その理由の一つが昨年10月のデビューから快進撃を続けている藤井聡太四段の人気だろう。今回初めて参加した小学5年生の丸山靖元君は「中学生なのにすごいと思った」と藤井四段について話す。お父さんの勝也さんは「将棋を知らない人とも、その話題で話せるのは驚きですね」という。

jt2018_report_02.jpg
インタビューに答えていただいた丸山さん親子。息子の靖元君は、本大会に初めて参加した。

普段は学校のクラブ活動で指しているという靖元君は「人数が多くて緊張したけど、知らない人と指せるのは楽しく、また参加してみたいです」と大会の感想を語った。

こども大会は低学年の部と高学年の部の2部門に分けて行われる。負けても自由対局として、1日に何局でも指すことができ、終日楽しめるようになっている。また、「どうぶつしょうぎ」の体験コーナーや、指導将棋など、参加者を飽きさせない工夫が随所にある。
その一つとして、今回の目玉が「将棋代指しロボット『電王手一二さん』とリレー将棋コーナー」だろう。電王戦のソフト側の着手を務めたロボットアーム、「電王手一二さん」と参加者がリレー対局を行う。盤面のみならず、ロボットアームの動きに皆が見入っていた。

jt2018_report_03.jpg

jt2018_report_04.jpg
「電王手一二さん」とリレー将棋で対局。こども達も興味津々。

決勝戦はそれぞれ、和服を着用して壇上での公開対局で行われる。低学年の部は北原優君(船橋市立前原小学校3年生)と三好剛瑠君(川崎市立戸塚東小学校3年生)が決勝を戦い、北原君が勝利し、優勝した。

jt2018_report_05.jpg
低学年の部・決勝戦の模様。

北原君は今年の倉敷王将戦でも優勝している。二冠目については「狙っていました」。大会会場がある千葉県在住なので「地元で優勝したいと思っていた」とも明かす。初めて参加した将棋大会が3年前の本大会(低学年の部は未就学児でも参加できる)だったそうだ。お父さんの久さんは「地元での締めくくりとして(注・来年以降は高学年の部への参加)、優勝できてよかった」と語る。お子さんの将棋熱に関しては「勉強もしっかりやっているし、将棋を始めたことのデメリットがない。考える力、我慢する力がついてきたと思う」という。

jt2018_report_06.jpg
低学年の部で優勝した北原さん親子(優勝した優君をはさんで右が久さん、左が喜子さん)。

高学年の部は塩谷大暉君(八王子市立秋葉台小学校5年生)と小雀悟君(横浜市立本牧小学校5年生)が戦い、塩谷君が勝って優勝。塩谷君は3年生の時に参加した東京大会の低学年の部で準優勝している。2年ぶりに参加して、うれしい初優勝となった。

jt2018_report_07.jpg
高学年の部・決勝戦の模様

「前回は準優勝で悔しかったので、今回はうれしい。望外の結果です」と笑顔で語る。お母さんの亜弓さんは「この大会は参加者が多いので、全部勝つのは大変。本人も特に気負っていなかったのがよかったようです」と感想を述べた。

jt2018_report_08.jpg
高学年の部で優勝した塩谷さん親子(優勝した大暉君をはさんんで、右が公洋さん、左が亜弓さん)。

参加者の少年少女だけでなく、保護者の方々にも話を聞いたが、「将棋を指していてよかったこと」という質問に対して「生涯の趣味となること」「同年代だけではなく、様々な年代の方々と知り合えること」という言葉が多く返ってきたのが印象に残る。

こども大会の後はプロ公式戦の決勝戦。こちらのカードは豊島将之JT杯覇者対山崎隆之八段戦である。前回の優勝で自身初の棋戦優勝を果たした豊島の2連覇がなるか、あるいは山崎が自身初のJT杯優勝を果たすか。

jt2018_report_09.jpg

山崎の先手で始まった本局は相掛かりに。途中、豊島がうまく攻めを決めたように見えたが、山崎も頑強な粘りを見せて決定打を与えない。そうしてむかえた終盤が図の局面である。

【図は▲4五飛まで】

直前でミスを自覚していた山崎は、ここでは負けと思っていたそうだが、図から豊島が指した△4五同桂が敗着。▲9三桂成でいっぺんに後手玉が受けなしとなり、形勢が入れ替わった。豊島は△8七馬▲同銀△4八飛と迫るが、▲7八角で先手玉には有効な王手が続かない。7九の底歩が光っている。

△4五同桂では△6八銀と、先手玉を王手がかかる形にしておくのが急務だった。以下は▲9六歩△同玉▲9七銀△9五玉▲9六歩△9四玉▲4八飛△8四歩が一例で「足りないかと思った」と山崎。

山崎は初のJT杯優勝。「豊島さんの踏み込みに苦しい場面が多かったのですが、最後まで諦めない気持ちが幸運な結果につながったと思います」と感想を述べた。

jt2018_report_10.jpg

jt2018_report_11.jpg

JT杯覇者の最初の仕事が、東京会場を訪れた参加者の方々を握手で見送ること。多くのファンが山崎に祝福の声を送っていたのが印象的だった。

写真撮影:相崎修司

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています