トークショーでは藤井四段や羽生竜王の話も? 北陸地方で開催された棋士会イベントのご紹介

トークショーでは藤井四段や羽生竜王の話も? 北陸地方で開催された棋士会イベントのご紹介

ライター: 山口絵美菜  更新: 2017年12月08日

秋は将棋の季節!毎週末、日本のどこかで将棋イベントが開催されているといっても過言ではありません。全国各地で開催される豪華イベントの数々に、体も心もいくつあっても足りない!と嬉しい悲鳴が聞こえてきそうです。

そんな10月の最終土・日曜日である28・29日。東では岩手県大船渡市で第30期竜王戦七番勝負第2局が、西では「第7回国際将棋フォーラムin北九州」が行われたほか、各地でさまざまな将棋イベントが開催されました。どのイベントに参加しようか迷われた方も多いのではないでしょうか?今回はこの二日間にわたって「北陸」を舞台に行われた棋士会主催のイベントの模様をお届けいたします!

「棋士会」は、将棋界の発展や棋士の親睦、将棋文化の普及発展を目的として各種イベントや研修会などを実施しており、中村修九段が会長を、久保利明王将ならびに畠山鎮七段が副会長を務めています。今回は会長の中村九段が発起人となり、一日目は石川県金沢市で、二日目は富山県富山市で棋士会イベントを開催する運びとなりました。

東京からは北陸新幹線に乗って中村九段・深浦康市九段・松尾歩八段・伊藤沙恵女流二段が、大阪からは特急サンダーバードに乗って畠山鎮七段・今泉健司四段・室田伊緒女流二段、そして私、山口絵美菜の計8人が北陸に集いました。

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初日は石川で「日本将棋連盟棋士会による指導対局会」。会場には幼稚園から大人まで80人近くの方々が足をお運びくださり、将棋への熱気と期待にあふれていました。参加棋士全員による挨拶で開会した後は各ブースに分かれての指導。

ステージでは中村九段と深浦九段による「模範対局」と題して、駒箱を開けるところから対局準備、終局までの「礼に始まり礼に終わる」将棋の対局作法講座。会場では多面指しの「指導対局」のほか、棋士5人が交代で指し継いでいく「ぐるぐる指導対局」と「将棋講座」を同時進行していきます。参加者は希望するブースで指導を受けられるというスタイルです。

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「将棋講座」のトップバッターは中村九段。「みなさんは詰め将棋を解いていますか?」「今日はみんなに魔法をかけてあげよう!17手詰が解けるようになる魔法だよ」と、ぐっと引き込まれるようなお話と詰将棋の考え方を織り混ぜた講座に、聞いている子供たちもキラキラと目を輝かせていました。

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続く今泉健司四段も「僕も魔法をかけてあげよう!」と、笑いあり、名言ありの詰将棋講座と形勢判断のコツを伝授。老若男女から大人気の元気あふれる指導でした。指導をすべて終えたあとは棋士と子供たちとの集合写真撮影会を行い、「まだまだ指したい!」と惜しまれつつも、会は大盛況のうちに幕を閉じました。

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2日目は富山で「将棋プロ棋士と触れあう会」。秋雨の中、100人を超える方々にお集まりいただき、中には初日の金沢にも来てくださった方や、国際フォーラムから駆けつけてくださった方まで。

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中村九段による挨拶で開会し、まずはじめはトークショー。富山は初めてという深浦九段、20余年ぶりという今泉四段、富山県砺波市生まれの室田女流二段、現在、タイトル戦挑戦で大活躍の伊藤女流二段が登壇し、僭越ながら私は司会を務めさせていただきました。

「棋界の現在を語る!」というテーマで、藤井聡太四段のエピソード、将棋飯やおやつの話、AIを使った将棋上達法までさまざまな話題に花が咲きました。おやつの話題では深浦九段が「アイスクリームは理想的なおやつなんです」と切り出し、タイトル戦で羽生善治竜王が2日目のおやつにアイスクリームを注文したものの、手をつけず盤上に没頭しているので「もう食べないのかな?」と思っていたところ、おもむろに溶けきったアイスを飲み干したのをみて「これはダメだな(自分が負けるな)と思った」というエピソードを披露。

トークショーの最後の質問コーナーでは「普段の過ごし方」や「上達に最適な持ち時間」「頭を使わない趣味でしていること」などたくさんの質問をいただきました。

次のプログラムは深浦九段対松尾歩八段による席上対局。解説は畠山鎮七段、聞き手は室田女流二段、記録係は女流アマ名人であり女流公式戦にもアマチュア枠で出場経験のある野原美蘭さんが、読み上げは私が務めました。

振り駒の結果、深浦九段の先手となり、パタパタと手が進み、相雁木の最新形へと進行。長い序盤を経て深浦九段が攻めを匂わせたところで松尾八段が先攻し、縦横無尽に飛車を活用するのに対して深浦九段が粘りつつ後手玉に迫るという展開に。

終盤は難解ながらも松尾八段の玉がするりと上に逃れて、リーチの差を生かし、先手玉を寄せきって勝利しました。

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ステージ対局と同時に行われた指導対局や高校生以下を対象とした8人1組ミニトーナメント、サイン会も大にぎわい。棋士会副会長である畠山七段のあいさつで閉幕し、将棋ブームとブームを支えてくださる方々のお力添えを実感するイベントとなりました。

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北陸での二日間を満喫し、「またぜひ来てくださいね!」という言葉を胸に棋士は東へ西へと帰路につきました。全国各地でこういったイベントがますます増えていくといいですね!

最後になりましたが、ご尽力いただきました日本将棋連盟石川県支部連合会様、ご協賛いただきましたヒューリック株式会社様ならびに株式会社住栄都市サービス様、ボランティアとしてお手伝いくださった高校生の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました!またお会いしましょう!

撮影:中村修

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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