藤井聡太四段も5敗!? プロへの最終難関である「三段リーグ」とは?

藤井聡太四段も5敗!? プロへの最終難関である「三段リーグ」とは?

ライター: 玉響  更新: 2017年12月06日

昨年のプロ入りから現在に至るまで、大活躍中の藤井聡太四段ですが、プロになるまでは奨励会に在籍し、最終難関である三段リーグを突破して、プロデビューを果たしました。その後、大きく話題を呼んだ歴代単独1位の29連勝につながっていくことになります。ここでは奨励会がどのようなものかをご紹介していきます。

1.プロになるには「奨励会」という壁を乗り越えなければならない

プロ棋士になるには奨励会というプロになるための養成機関に入る必要があります。正式名称は「新進棋士奨励会」。東西2つに分かれており、原則的に6級(※2017年11月時点では7級)から三段で構成されています。そして、四段になると晴れてプロ棋士となります。

まず、奨励会に入会するには、年に1回行われる奨励会試験に合格しなければなりません。試験内容は割愛しますが、誰でも受けられるというわけではなく、師匠の推薦(現在は受験する条件によってこの限りではない)、つまりプロ棋士と師弟関係を結んだ上で受験することになります。

多くはスタート地点である6級を受験しますが、そこにも年齢制限がいくつか設けられています。例えば、満18歳の場合、3級以上の級で受験しなければなりません。そのため、一般的には年齢が若いほど有利といわれています。実際、小学校高学年のうちに入会することも珍しくなく、中学2、3年では、やや遅いといわれるほどです。

そして、対局態度はもちろんのこと、何より大事になってくるのは実力。6級というとそんなに大したことないのでは、と思うかもしれませんが、奨励会6級は、アマチュアでいうと四、五段クラスの力があります。町道場ではほとんど敵無し、学生大会で上位に名を連ねるような少年たちが全国から集まってきます。つまり、奨励会に入る前から何年も腕を磨いているわけです。その試験に合格すると、奨励会員としてプロ棋士を目指す修業が始まります。

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撮影:常盤秀樹

2.三段までは規定の成績を収めて上がっていく

奨励会は月2回行われる例会で、奨励会員同士による対局を行います。そこで規定の成績を収めることで段級が上がります。基本的には、級位者が3局、有段者は2局指すことになっており、成績優秀だからといってすぐに三段リーグに上がれるわけではありません。成績が振るわなければ、降級もあります。

また、年齢制限があるため、一定の年齢になるまでに結果を出さなければなりません。月2回しかない例会で、日頃の成果をぶつけるわけです。そして、昇級昇段を積み重ねていき、二段から三段に昇段すると、いよいよ三段リーグを戦うことになります。

3.プロ棋士の卵たちがしのぎを削る三段リーグ

現在の「三段リーグ」は、1987年度から開始されました。リーグ戦を半年間かけて行い、それぞれが18局を戦います。また、三段からは東西が統一されたリーグ戦になります。近年では30人前後が在籍しており、そのリーグ戦で上位2人が四段に昇段します。つまり、1年で4人しかプロになれません(※1)。そして、満26歳の誕生日までに四段に昇段できなかった場合は年齢制限の規定により、退会となります(※2)。

この三段リーグが最も難関とされ、人生を賭けた熾烈な戦いが繰り広げられています。「ここまで来てようやく半分」ともいわれるほどで、三段リーグに10年近く在籍した人もいます。位置的にはプロの一歩手前ですから、実力もほとんど遜色がありません。

(※1)リーグ戦の第3位は次点となり、これを2回獲得するとフリークラス入りの権利を得ることができる
(※2)期間中に満26歳の誕生日を迎える場合は参加できる。また、勝ち越せば満29歳の誕生日まで在籍可能

4.三段リーグを1期で抜けてプロ入りする人も

四段昇段を決めた人の多くは、複数期在籍した上でチャンスをモノにしたケースがほとんどです。しかし、中にはたった1期で昇段を決めた例があり、順に中川大輔八段、先崎学九段、小倉久史七段、屋敷伸之九段、川上猛七段、松尾歩八段、三枚堂達也五段、藤井聡太四段の8人が1期抜けを決めています(ただし、中川八段と先崎九段は、三段リーグ制度が開始される前から三段)。

上記のメンバーの中には藤井四段の名前も挙がりましたが、三段リーグでは負けなしだったわけではなく、13勝5敗というギリギリの成績でした。ちなみに、過去に全勝した例は1度もありません。

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現在活躍中の藤井聡太四段も三段リーグは、13勝5敗の成績だった。撮影:常盤秀樹

まとめ

奨励会は一般にはあまり知られていませんが、現在のプロ棋士は皆、奨励会に身を置き、壁を乗り越えてきました。奨励会員は、対局で収入を得ることはできませんし、学業との両立も大変です。進学せずに将棋一本に絞る人もいれば、学業を優先して途中で辞める人、早めに見切りをつける人などさまざまです。

中でも三段になると、「ここまで来たのだからあとには引けない」という覚悟があります。そして、年齢制限の規定により退会を余儀なくされた人もたくさんいます。それでもプロになるために、歯を食いしばって戦う舞台が三段リーグなのです。

玉響

ライター玉響

平成元年生まれ。2004年から2016年1月まで奨励会に在籍。同年5月からフリーライターとして活動開始。以来、日本将棋連盟のネット中継業務を担当している。ほかに将棋番組制作、将棋教室の仕事にも携わる。将棋漬けの日々を送っているが、実戦不足なのが悩み。

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