羽生善治竜王「将棋の真理に近づきたい」第30期竜王戦七番勝負を振り返る【将棋世界2018年2月号のご紹介】

羽生善治竜王「将棋の真理に近づきたい」第30期竜王戦七番勝負を振り返る【将棋世界2018年2月号のご紹介】

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2017年12月28日

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将棋世界2018年2月号(12/29発売)のメインは「羽生善治 永世七冠達成!」。巻頭カラーを始め、決着局となった第5局の自戦記、第1局から第4局までを局面を通して振り返るインタビュー記事などで偉業を大きくとりあげています。

本記事では、インタビュー記事の冒頭部分をご紹介。七番勝負直前に菅井竜也、中村太地に相次いでタイトルを奪われた羽生の心境、そして第1局をどう戦ったのか・・・

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なぜ一冠になったのか

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撮影・中野伴水

ーー竜王戦の前に王位戦、王座戦で失冠して13年ぶりに一冠に後退しました。いま振り返って敗因は?

「王位戦は全般的にずっと押されていましたね。ただ第1局で数多くのチャンスを逃して負けたので、そのミスの多さが全体的に尾を引いたと思っています」

ーー菅井王位の多彩な振り飛車に戸惑った部分はありましたか?

「第5局の作戦には本当に驚きましたね。アハハ。阪田流にも驚きましたけど、△3二飛ってそんなバカな(笑)。最初は意味がよくわかりませんでした。いろんな作戦があるんだなあ、と」

ーー菅井王位の早指しにペースを乱されたことはありますか?

「それよりは、私が感覚的に予想しない手を指されることが多かったので、そこに戸惑っていた部分はあります。先ほどの阪田流△3二飛にも驚いたし、第4局の▲5八飛と振ってから▲2八飛と戻した構想もそうです。こちらと全然読みが合わなくて、時間を使わざるをえなかったところはありますね」

ーー1勝3敗で敗れた王座戦は?

「これも初戦のいい将棋を落としてしまったのが痛かったです。お互いにチャンスがありましたが、時間がなくても最後はきちんと勝ちきらなければいけない将棋でした。そこは悔いが残ります」

ーー2004年にも一冠になっていますが、そのときとはどう違いますか?

「若い世代の人に負かされたので、以前よりも深刻な状況です。強い人がドンドンと現れるので、私もタイトル戦に出ることすらままならなくなってきたので」

ーー若手との戦いはどう乗り越えるのですか?

「若手といってもみな同じではなくて、それぞれの個性や持ち味があります。棋譜を見たり対戦をしたりする中で、自分なりに理解していく姿勢が大事です」

7年ぶりの竜王挑戦

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第5局の終局後、インタビューに答える羽生竜王 撮影・中野伴水

ーー竜王戦の挑戦は久しぶりでした。

「そもそもタイトル戦の挑戦権を獲得したのがいつだったかすぐに思い出せないんです。アハハハ」

ーー郷田王将(当時)に挑戦した2016年の王将戦ですね。

「ええっ、でもあれって......。そうか、2年前か。それ以来だったんですね」

ーー竜王戦開幕前の調子は?

「王座戦が終わったばかりでしたし、それほどよい感じではありませんでした。ただせっかく大きな舞台に出るので、何とかコンディションを整えていい状態で迎えたいと思っていました」

ーー渡辺棋王はニコニコ生放送の竜王戦のPVで、「自分は最近の将棋についていけていない」という趣旨の発言をしていました。羽生さんは最近の将棋にはどう対応されているのですか?

「いやあ、戦術の移り変わりが激しいので、ついていくのは大変です。こんなに雁木ばっかりになるとは、春の段階では夢にも思っていませんでしたから。棋譜を見てどう変わったのかを時系列で追っていき、自分なりに意味を考えていますが、わけがわからないのも多い(笑)」

ーー渡辺棋王に2日制で勝ったことがなかった、と第5局の後の共同記者会見で語っていました。そもそも2日制は1日制よりも勝率が悪いですが、それについてはどう考えていますか?

「うーん、結果としては1日制のほうが明らかにいい。2日制に苦手意識を持っているわけではないですが、結果としてはそうなってしまっています。ただ特別に対策を講じたりはしていません」

ーー渡辺竜王との対戦成績は長らく互角で推移していましたが、竜王戦の開幕前は4連勝していました。

「ただ最近は頻繁に対局していませんでしたから。1年で2局くらいですかね。だからそのたびに対応している感じでした。渡辺さんと2日制で戦うのは2014年の王将戦以来だったので、また新たな気持ちでと考えていました」

鬼門の初戦を制する

ーー第1局は公開対局でしたが、感想は?

「部分的な公開で長時間ではないですし、観戦者はそれほど多くなかったので、公開対局という感じはしませんでした。ただ対局場が能舞台だったので、緊迫感は感じました。花道から将棋盤の前に向かうのですが、ああいう導線はなかなかないですよね(笑)」

ーー第1局は相掛かりになりました。印象に残っている局面は?

「中盤の終わりくらいで▲5五銀(A図)と打った手です。銀に銀をぶつけているので異筋ですが、思ったよりも効果的でした。△同銀▲同馬で馬を活用しているのですが、どちらかと言えば5四の銀を消すことによって▲4五桂と跳ねたいのです。だから3七の桂を活用する意味なのですね」

【A図】

ーー初戦を制しましたが、心境は?

「いいスタートが切れたので、気分が楽になりましたね。王位戦、王座戦も初戦の好局を落としていたことが敗因につながっていたので」

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続きは将棋世界2018年2月号で。本記事の続きは「将棋世界2018年2月号(12/29発売)」でご覧いただけます。

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