決勝進出で銀河戦の出場権! 第34期全国アマチュア王将戦を勝ち抜いたのは?

決勝進出で銀河戦の出場権! 第34期全国アマチュア王将戦を勝ち抜いたのは?

ライター: 渡部壮大  更新: 2017年12月21日

第34期アマ王将戦の全国大会が12月2日に東京都港区「チサンホテル浜松町」で、2日目は翌3日に東京将棋会館で行われた。地区予選代表選手17人にアマチュア銀河戦から4人、そして今年の全国大会上位者から6人が招待された。アマ王将戦の地区予選は在住を問わないことが特徴で、遠征する強豪も多く予選から非常にレベルの高い戦いが繰り広げられる。今大会も北東北、北陸、山陽で東京在住者が代表を獲得している。

34amaohsho_01.JPG

代表選手の数は全国大会で最も少ないものの、前述のシステムにより非常に密度が高くなっている。アマ三冠の横山大樹さんに加え、元奨励会三段が2人も入る鬼ブロックも生じていた。

34amaohsho_02.JPG

負け同士の予選2回戦でアマ竜王の藤原結樹さんとアマ準名人の天野啓吾さんが対戦。結果は藤原さんが攻めをうまくつないで快勝。天野さんは予選2連敗で敗退となった。アマトップクラスでも厳しい当たりで予選落ちとなるのがアマ王将戦の恐ろしさだ。

34amaohsho_03.JPG

予選通過後は本戦を決めるクジを順に引いていく。最後に残ったのは初戦がシードになる得クジと、藤原さんと対戦する枠。横山さんと関西地区代表の折田翔吾さんが同時にクジを引き、折田さんが得クジを引く。横山さんは苦手の藤原さんを引き苦笑い。アマ竜王戦の決勝カードが再現となったが、この日も藤原さんが制した。

【第1図は△6四角まで】

第1図は東関東地区代表の秋山太郎さんと前アマ王将の小山怜央さんの対局から。秋山さんは今大会最年長の50歳ながら、最激戦区の東関東予選を勝ち抜いてきた。元奨励会三段で、アマ竜王など実績豊富のベテランだ。前アマ王将の小山さんは11月の赤旗名人戦でも優勝するなど、横山さんと並んで充実しているアマトップ。

秋山さんがうまく立ち回って優位を得たが、ここで▲9七桂はまずく、すかさず△5五香と打たれてしまった。以下▲5六桂△5一歩▲5三成銀△7六歩で混戦模様に。第1図では▲5三歩成としておけば香打ちも緩和して先手が優勢だった。

34amaohsho_04.JPG

【第2図は▲2八金まで】

第2図は折田さんと東海地区代表の田中佳久さんの一戦。2人はともに関西奨励会の同世代で、現役時代は練習将棋も多くこなしており、久しぶりの対戦だったそうだ。ここで△4八と寄のような手は次の△3九とが詰めろにならず足りない。△3八銀が穴熊戦らしい好手で、△7三角の筋も見ている。以下田中さんが猛攻を仕掛けたが届かず、折田さんが競り勝った。

34amaohsho_05.JPG

翌日のベスト4に勝ち残ったのは前アマ王将の小山さん、アマ竜王の藤原さん、関西地区代表の折田さん、東京地区代表の森村賢平さんに。小山さん以外は初出場だが、いずれも数年前まで奨励会三段リーグに在籍しており実力は十分だ。

34amaohsho_06.JPG

準決勝以降は場所を移して将棋連盟地下にあるスタジオで行われる。森村さんと小山さんの一戦は森村さんの石田流。一瞬小山さんにもチャンスが訪れたが、全体的には森村さんの押した将棋だった。小山さんは連覇ならず。森村さんは初の全国大会だったが、元奨励会三段の実力を発揮した。

34amaohsho_07.JPG

折田さんは普段将棋系YouTuberとして活動しているそうで、ネット上にも応援する声が多く見られた。藤原さんとはともに関西奨励会に所属し、三段リーグで何度も対戦した間柄でもある。

【第3図は▲6一飛まで】

角換わりから折田さんが勝勢を築いたが、危ない寄せで危険な展開に。第3図の▲6一飛に△5一歩▲同飛成△4一金も疑問。▲2一金△同玉▲4一竜で△3一銀(△3一金は詰み)で危ない局面に。そこで▲2三飛成と飛び込めば大逆転もある展開だったが、藤原さんは△2二金打の局面が読み切れず▲5七銀と手を戻してしまった。以下△3七角が厳しく折田さんの勝ち。藤原さんにとっては一瞬のチャンスを逃して悔やまれる一戦だった。

34amaohsho_08.JPG

【第4図は▲2四歩まで】

決勝進出の2人は来期銀河戦の出場権を獲得。決勝はお互いに妥協せず、横歩取りから青野流の乱戦に。第4図で△5四香が▲5四歩を受けながらの王手。対して▲5六歩なら難しい戦いだった。実戦は▲6九玉△2四歩▲7七桂に△7五飛▲同歩△5五馬が絶品で、後手の勝ち筋に入った。

34amaohsho_09.JPG

優勝の森村さんは「苦しい将棋が多かった」と大会を振り返った。スタジオ対局については「和室の対局は奨励会と同じで違和感なく、力を出しやすかった」と話した。銀河戦については「持ち時間を使いすぎないようにして、まずは1勝したい」と抱負を話した。

折田さんは「よく決勝まで来られたと思うが、決勝は弱さが出てしまった。小学生のころから見ている銀河戦に出られるのは光栄」と話した。

アマ王将戦の模様は準決勝第1局(小山怜央さん─森村賢平さん)が2018年1月27日(土)の20時~。準決勝第2局(藤原結樹さん─折田翔吾さん)が2月24日(土)20時~。決勝戦が3月31日(土)20時~に囲碁・将棋チャンネルで放映される予定。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています