将棋コラム

伊藤果八段の考える、詰将棋創作で大切な考え方とは?

伊藤果八段の考える、詰将棋創作で大切な考え方とは?

更新: 2017年11月18日

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「詰将棋の魅力」第2回は、皆さんお待ちかねの、いや待っていなかった方にも詰将棋の創り方・逆算式をやさしく伝授いたします!詰将棋は誰でも作れるのか......この問いにはイエスです。しかし、良質なものをとなると、少しばかりの工夫とエッセンスが必要です。

まずは江戸時代から伝わる(??)昔話から初めましょうか。ある寺に「お前はダメじゃ。人間、わしのように、いつも欲は捨てないとな」と、厳しく和尚から説教をされている小僧さんがいました。悔しい小僧さんは和尚が本当に欲深くないのか確かめたく、一計を案じ、詰将棋を出題したのです。(古作3手詰)

【古作3手詰】


和尚はうんうん唸りながら、どうしても解けません。ではといって、小僧さんは盤上から2五馬を取り去って、持駒を銀歩と変えてみたのです。すると...。

【古作3手詰 参考図】


「なんじゃ馬鹿にしおって、これは頭に歩を打てば簡単じゃないか!」

「そうでした、失礼しました。では元の配置に戻します」

「う~ん、これなんじゃよ、これがどうしても詰まない!!」

歩だとすぐに捨てられても、同じ理屈であるのに▲5二馬とは、なかなか捨てられない...和尚も欲が深かったわけですね。

"詰将棋とは捨てるものなり"これこそが詰将棋の重要な要素であり、ここをいかに組み込んでいけるかが、創作という作業なのです。

では「逆算式」という作り方からお教えしましょう。まずどのようなものでもいいですから、簡単な3手詰あたりの素材を見つけてください。頭金、逃げて、頭金まで詰みなんてものでも構いませんよ。

【基本図】


基本図は、▲3三角成△同玉▲3四金までの3手詰ですね。ちゃんと捨て駒が入っていて、なかなかの素材でしょ。ここからです、知恵を絞ってどう作品として進展させていくか......。

玉の位置を2二に変えて、3一銀を手駒に変えて見る、この発想が浮かべば、しめたものです(進展図1)。

【進展図1】


初手に▲3三金は△1一玉で詰まず、また▲3三銀は△2三玉で詰みませんね。となると、初手は▲3一銀からの5手詰と進展しました。解く方は欲があると邪魔になりますが、創作はいくら"欲"があってもいいのですよ。大いに欲深くの姿勢で......。

5手詰では不満と感じた方は、次なるステップへと進みましょう。▲3一銀の前に何か捨て駒を加えてみたいじゃないですか。玉を1二に移動させて、持ち駒を「金金銀」として、初手▲2二金捨てという発想もありです。これでなく、玉を2三に配置して、1一香を追加して、攻め駒に3四桂と変えてみる発想ではどうでしょう(進展図2)。

【進展図2】


玉方の1一香配置は、初手1二銀からの詰みを防いでいます。初手▲2二桂成捨て......なんか、ちょっとオシャレと感じた方は、次なるステップへ進めますよ!進展図2を見て、何か閃かないですか?

そうですよ、そうこなくちゃ。玉方に4四歩を追加して、玉を3三の位置にすれば、持駒角金銀として、初手を▲4二角からスタートできますね。(進展図3)

【進展図3】


▲4二角△2三玉▲2二桂成△同玉▲3一銀△2三玉...これで基本図となり、初手から9手詰作品となりました。詰将棋創作は、1一香や4四歩のように自由に駒を追加したり、もし変な時は取り外したりと常に柔軟でいきましょう。

さあもう、欲深き姿勢は9手詰でストップですか? 初手▲4二角がなんだか平凡だなぁ~と感じられれば、いよいよ最後のステップへと進みましょう。(完成図)

【完成図】


玉を2三に戻して、4二角を持ち駒に変え、2二角を追加すると、どうです俄然カッコよくなったでしょ。

創作は慣れてくると、将棋の手筋のように勘が働いたり、閃いたりしてきます。逆算式は、最後の形が決まっているのですから、安心して良いものに仕上げていけるのです。

次回は「正算式」という、創り方ですよ。お楽しみに......

伊藤果八段

ライター伊藤果八段

1950年京都市に生まれ、1963年奨励会6級で入門。1972年に東京に移り、高柳敏夫名誉九段門下となる。1975年に四段。1981年の第12期新人王戦で準優勝。1982年の第31回NHK杯で準優勝。竜王戦は、第9、10期と1組に在籍。2011年に現役引退。現役時代から詰将棋創作で定評があり、塚田賞も2度受賞している。風車戦法と呼ばれる独特の将棋を指し、若い頃から身嗜みがダンディであることでも知られてもいた。

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