将棋コラム

郷田真隆九段の語る、プロレスと将棋の共通点とは?【棋士と趣味】

郷田真隆九段の語る、プロレスと将棋の共通点とは?【棋士と趣味】

更新: 2017年11月15日

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棋士と趣味

棋士の趣味についてのコラムが始まるらしく、私がトップバッターとのこと。私の趣味は、昔からスポーツ全般の観戦で、今回は、プロレスについて書いていきたいと思います。

さまざまな機会に話しているので私のプロレス好きをご存知の方もいらっしゃるかと思う。きっかけは、子供の頃何となく見ていたジャイアント馬場さん率いる全日本プロレスのテレビ中継だった。その頃の全日本プロレスの中継はゴールデンタイムで行われていて、初めは意味も分からずぼんやりと見ていたのだが、いつしか自然にプロレスの世界に引き込まれるようになっていた。

馬場さんを筆頭に、全日本プロレスの選手たちはとにかくデカい。ジャンボ鶴田さんが若きエースで馬場さんと二枚看板。そこにアメリカのやはりデカくて強い選手たちが挑み、挑まれる構図は、見ていて分かり易かった。

気付けば毎週のテレビ中継が待ち遠しく、そのエンディングで流れる坂本龍一さん作曲の「カクトウギのテーマ」を聴くと、何とも言えず淋しい気持ちがしたものだ。

少しして、馬場さんのライバル、アントニオ猪木さん率いる新日本プロレスのテレビ中継も並行して見るようになった。ちょうどその頃、藤波辰爾さん、長州力さんが台頭、タイガーマスクの出現があり、当時テレビ朝日の若手アナウンサーだった古舘伊知郎さんの名実況と相まって、こちらも凄い盛り上がりを見せていた。一方の全日本は角界から天龍源一郎さん、輪島大士さんが入ってきてさらに活況。とにかくテレビ中継を見るのが楽しかった。

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撮影:常盤秀樹

今、若い選手たちの試合を見ていて、往年の名プロレスラーと呼ばれる選手たちの試合を見ていて良かったなあ、とつくづく思う。どちらが良いというのではないが、往年のレスラーたちは皆個性的で、何とも言えない味を感じさせる人が多い。

ザ・ファンクスのドリー・ファンク・Jrとテリー・ファンク、ザ・デストロイヤー、ミル・マスカラス、アブドーラ・ザ・ブッチャーに、ハーリー・レイス、ニック・ボックウィンクル、リック・フレアーのチャンピオンたち。新日本ではタイガー・ジェット・シン、アンドレ・ザ・ジャイアント、ビル・ロビンソン、ブルーザー・ブロディ、スタン・ハンセン、ハルク・ホーガン。

その強さからプロレスの神様とも言われるジャーマンスープレックスが有名なカール・ゴッチの試合も少し見ていたはずだ。そして、チャンピオンの中のチャンピオン、鉄人ルー・テーズさんのバックドロップは、一度映像で見たことがあるだけだが、その切れ味にとても驚かされた。記憶を辿れば、今もその選手たちの試合が鮮やかによみがえってくる。

ここで、どうしても書いておきたいのは、私が長年(40年)プロレスを見ていて一番好きな技のこと。もう亡くなってしまったが、アメリカで活躍して度々日本にも来ていた、ディック・マードック選手の技「カーフ・ブランディング」がそれ。これはコーナーポストに相手を押し込めた後、自らポストの上に登って背後から頭を掴み、ヒザを中心に全体重を後頭部に浴びせかけて、まるで判子を押すようにしてマットに顔を叩きつける大技である。和名「仔牛の焼印押し」。

この技は軽量の選手がやっても迫力がなく説得力もないが、マードックのようなデカくて太くて厚みのある体型の選手がやると、何とも説得力がある。実際どの程度効くのか、痛いことだけは間違いないと思うが、マードックがこの技を掛けてフィニッシュとして勝ったシーンはあまり思い出せない。だが何とも味のある技であり、その姿が印象的であった。

現在のプロレスは以前のような曖昧な決着(リングアウトや反則決着など)はほとんどなく、アスリート寄りの試合になっている。これは時代の流れで自然なことなのだろうが、一方で、あまりに危険な技が増えつつあることが気になる。『レスラーは強くて超人的であって欲しい』これはプロレスファンの願いかもしれないが、レスラーもやはり生身の人間である。ボクシングのようにレフリーの権限を強くする(レフリーストップを増やす)などして、対策を考えていただければと思うこの頃です。

私は人生で一番素晴らしいことは感動することだと思う。今までプロレスから、たくさんの感動を頂いてきた。これからもずっとプロレスを見続けていきたいと思うし、楽しんでいきたいと思う。

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撮影:常盤秀樹

プロの将棋にはプロレスのような見た目の派手さはない。地味で静かな戦いである。それでも、感動は確実にそこにある。まだ対局を見たことがない方には、プロの将棋をぜひとも一度見ていただきたいと思うし、すでに注目していただいている皆さんには、引き続きご声援をお願いする次第です。

ことプロレス(スポーツ)の話となると、このコラムの分量ではとても足りない感じです。連載にしてくれないかな(笑)

棋士と趣味

郷田真隆九段

ライター郷田真隆九段

1971年東京都の生まれ。1982年に奨励会6級で大友昇九段に入門。1990年4月に四段。1992年の第33期王位戦で谷川浩司王位(当時)に挑戦し、王位のタイトルを奪取。四段でのタイトル奪取は将棋史上初。他にも棋王、王将、棋聖合わせてタイトル獲得は6期。棋戦優勝は7回。

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