将棋コラム

森信雄七段が語るこれから。「あと10年はパワーアップして将棋の仕事をしていきたい」

森信雄七段が語るこれから。「あと10年はパワーアップして将棋の仕事をしていきたい」

更新: 2017年11月02日

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まずはじめに、「森一門祝賀会」(2017年5月5日開催)の師匠(森信雄七段)スピーチをどうぞ。

「棋士になって41年になるんですけれども、長くやってこれたなと思います。引退するという感覚はまったくなくて、むしろこれから仕事をせなあかんというプレッシャーのほうが強いです。あと10年ぐらいはパワーアップして将棋の仕事をしていきたいなと思っています。

弟子がすごく増えています。いつも言っていますが、僕は弟子を増やそうとか、強い弟子がどうとかはあまり考えていません。ただ弟子になったら、強いとか弱いとかは関係なしにひとりずつ向き合っていきたいな、と思って続けてきました。僕はもう弟子が大好きで、弟子が勝ってくれたらいいけど、負けたらすごくキツくて落ち込むから、あまり弟子の将棋を見るのはやめようかなとも思ったりします。やっぱり強い弱いにかかわらず、一生懸命やってくれるのが好きなので、これからも弟子の応援をよろしくお願いいたします」

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森一門祝賀会での模様。撮影:虹

 ――2017年5月16日、競技者としての現役生活にピリオドを打ちました。

「最近は身体の調子が悪くて、対局するのがキツくなってきたんで、早く引退できればなと思っていたんですけど。でもその日がきたらもったいないかなとか、寂しいなという気がしました。勝てそうかなという勝負ができるのなら、まだまだやりたかったかなと思います。ただ、引退になったという実感はまだありませんね。対局することがまったくなくなる、というのはピンときません」

 ―引退から少し時間が経ちました。あらためて引退についてどういった感想をお持ちですか。

「最近は腰とヒザが痛いのもあったけど、やっぱりもうちょっと丁寧に将棋を指しておけばよかったかなと。大野(源一九段)先生との将棋も、引退したから懐かしくなったんですよね(第3回コラム参照)。あぁそうか、自分もこうやってキチッと、弱いなりに丁寧に指していたんだなぁ、というのがあったんで。」

 ―今後の活動について教えてください。

「公式戦の対局は引退ですけど、それ以外はスタートしたところがあります。将棋教室だとか、将棋に関する仕事を増やしていって、元気にやっていきたいと思います。ずっと将棋をやっていけるのは幸せですね」

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第6期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局前夜祭で弟子達と森七段とで登壇。撮影:常盤秀樹

 ―2016年10月、初めて女流のタイトル戦(第6期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局)で立会人を務められました。

「ずいぶん前に弟子のタイトル戦で立会人を断ったことがあるんですけど、それ以来のお話でしたね。段位のこともあると思いますし、ヒザの痛みで正座ができなくて周りに迷惑をかけるのは僕も気にしてしまうから。やりがいはあるんですけどね。あぐらでもいいですよ、というところがあればまたやりたいですね(笑)」

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第6期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局で森七段は、立会人を務めた。対局開始の時の様子。撮影:常盤秀樹

 ―詰将棋創作や将棋教室運営、また「逃れ将棋」(※「王手のかかった局面で詰みをいかに逃れるか」という概念、またはそれを主題とした問題集。2014年、第26回将棋ペンクラブ大賞技術部門大賞を受賞。2015年、3巻まで刊行)という新しいジャンルの開拓など、棋士としていろいろな分野にチャレンジし続けてきました。

「依頼されたことをプロとしてこなしたいというのがあります。3手詰の創作を頼まれたら、3手詰のプロになりたい。5手詰の創作を頼まれたら、5手詰のプロになりたい。例えば5手詰だと、簡単なのは10級ぐらいから、難しいのは五段ぐらいの作品ができると思うんですよ。それを30段階ぐらいで創っていくという、そういうことを考えてしまうんです」

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撮影:虹

 ―その原動力は何ですか。

「やっぱり好きだからでしょうね。毎朝起きたら将棋盤の前に寝転んで、1手詰を創ったりだとか『逃れ将棋』を考えたりだとかするのが好きなんで。新しいものは何かないかなぁと考えたり。謎解きでも難しいものだけではなくて、簡単なんだけどハッとするのが好きですね」

 ―ほかにチャレンジしたいことはありますか。

「いまだと、小さい子に将棋を教えるときに『どうやったら強くなるのか』がテーマですね。八枚落ちを1局指すだけで5~6割分かるんですよ。その子が初心者の中でも、10段階のどれぐらいの強さなのかが。その子に対してどういう教え方をすればいいかを考えるのが面白いんですよね。それにはまだ答えがなくて、ある程度のマニュアルもありそうでない。八枚落ちだけでも奥が深すぎるんです。六枚落ちになると、上手の指し方は対初段から対20級まであるかもしれません。駒落ちの将棋もプロがいないんですよ」

「僕が思うのは、いままでの駒落ちの本もそうなんですけど、下手に自由に指させるという本がなさすぎるんですよ。それはなぜかというと、教えるのが難しすぎるからです。でも自由な指し方から教えたほうが、本当は強くなるんじゃないかと思って。例えば守るのが好きな子がいて、ずっと攻めてこないときに『こう攻めないと強くなれないよ』なんて言ったらダメなんです。守るのも個性ですから」

将棋の上達に関して、もう少し大きなところからとらえた言葉が必要なんですよね。何かね。そういうのを明快に伝えられれば面白いなと思いますね」

 ―千田翔太六段が以前、「具体的な勉強方法ってどこにも書いていないじゃないですか。そういうのを何とか見つけたい」というふうにおっしゃっていました。

「テーマは似ていると思いますね。千田君の元にあるのは、柔軟さと好奇心でしょう。単に『自分が勝つ』だけじゃないんですよ。技術的には難しすぎて分からないんですけど、千田君の発想や考え方は、僕はすごく分かりますね」

「それぐらい将棋は面白いということと、深いということと。あとやっぱり、好奇心が持てるようなことがまだまだいっぱいあるから先入観にとらわれないほうがよい、ということがスタートなんですよね」

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道場受付内スペースにて日常まま。仲良しスタッフと雑談。森七段曰く「ここがいちばん和みますね」撮影:虹

 ―そんな将棋の魅力は何ですか。

「将棋の駒を動かすということ自体が謎めいていて、不思議な動きや特性があって、組み合わせがあって。中でもいちばんは、常に新しい局面が出てきて変化があるところですね」

 ―「将棋」を別の言葉にするならば。

「"遊び"だね。すべて遊びです。やっぱり自分が遊び心でやっているので。単に追求心だけではなくて、そこに遊び心が入ったらスイッチONになりますね。それがないと自分の頭が機能しません」

 ―最後に、森ファンへ向けてメッセージをどうぞ。

「将棋は面白いんで、いっしょにやりましょう!」

将棋を楽しく指す、といったことは、何よりの上達法かもしれません。以上、森七段のインタビューでした。全4回にわたりご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

虹

ライター

2011年6月、将棋の中継記者として関西で活動開始。元システムエンジニア。日々是好日。目の前にスイーツを出されたら何でもします。

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