矢倉囲いを雀刺しで攻めきる!不成という選択肢を考えよう

矢倉囲いを雀刺しで攻めきる!不成という選択肢を考えよう

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年10月11日

今回のコラムも、矢倉に対する雀刺しでの攻め方の続きです。それでは第1図です。

【第1図】

▲1三桂成と端に桂を成り込んだ手に対して、△3一玉と逃げたところです。前回のコラムでは、△3一玉で△1三同桂と△1三同香はどうなるかを見ていきました。どちらも▲1四歩と突き出して、先手が気持ちよく攻めきることができましたよね。

△3一玉と逃げるようでは、桂を端に成り込まれているし、矢倉から追い出されるしで全然ダメ、と思いがちですが、そうばかにできたものでもありません。第1図が仮に後手の手番だとして、△1三香や、△1三桂と成桂を取ってくれれば、▲1四歩と突き出して駒に当たりをかけつつ攻めて行くことができますが、第1図は先手の手番です。

はて、桂を成り込んだものの、どう攻めていくものだろうか? と思われる方もいることでしょう。これで先手から、後続の端攻めがないとすると、場合によってはいちばんよいタイミングで1三の成桂を取られ、桂を補充されて攻めを逆用される恐れも心配しなくてはなりません。では、第1図からどう攻めを続けていくかを見ていきましょう。なにはともあれ、▲1四歩(第2図)と突き出していきます。

【第2図は▲1四歩まで】

1筋の歩を進めていかないことには、1七の香と1八の飛が攻めに働いていきません。さあ、第2図でも、まだ1三の成桂はどこに進めても取られてしまいますよね。逆に、もし1三の成桂がいなかったら? ▲1三歩成と成り込んで攻めていくことができますね。ということで、1三の成桂をうまく捨てて攻めていきます。まずは、▲1二成桂と進め、△同香に▲1三歩成(第3図)と攻めてみましょう。

【第3図は▲1三歩成まで】

△1三同香▲同香成△同桂▲同角成となって、角を成り込みながら王手を掛けて攻めが成功しました。と、言いたいところですが、第3図から、△1三同香▲同香成のときに放置されると、意外と後続の速い攻めがありません。▲1二成香~▲1九香と前回ご紹介したような攻め方が有力なのですが、前回と比較してみると、大幅に攻めの速度が遅くなっています。

ということで、第2図から、▲1二成桂と捨てる攻めはあまりオススメしません。では、ほかにどう攻めるのか? もっといい攻めを伝授いたします。

第2図で、▲2三成桂と、2三へ捨てる手が好手です。△2三同金と、1三への利きを足されながら取られてしまうようですが、▲1三歩成(第4図)としてみると、△1三同香▲同香成△同桂▲同角成△同金▲同飛成と、先手のほうがまだ1三への利きの数が多く、端を破ることができます。

【第4図は▲1三歩成まで】

さらに、今度は2三の金への当たりになっているため、1三に先手が駒を成っていった手に対して、後手は手抜きをすることができません。1二へ成桂を捨てる手よりも、はるかに攻めが速いことがおわかりいただけると思います。

根本的なところに話は戻りますが、第1図は2五の桂を1三に成り込み、2二の玉を3一へ逃げたところです。1三へ桂を成った手に疑問を感じた方はいらっしゃいましたか? 第1図の2手前に、▲1三桂不成(第5図)と、攻める手も有力です。

【第5図は▲1三桂不成まで】

この桂を香や桂で取れば、▲1四歩で桂を成った順と同じになりますし、後手が放置すれば、▲1四歩と突き出し、▲2一桂成△同玉▲1三歩成と、桂を捨てずに攻めていくことができます。

三段目に駒が行ったとき、成らない手を考えることも、とても大切です。1三へ桂を進める前に、成ったほうがいいのか、それとも不成で突っ込むのか? 駒を進める前に、手を止めて考えることができるようになれば、それだけでも立派な上級者と言えるでしょう。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。
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