藤井聡太四段の公式戦29連勝ってどれくらいすごい?過去の連勝記録を振り返る

藤井聡太四段の公式戦29連勝ってどれくらいすごい?過去の連勝記録を振り返る

ライター: 宮本橘  更新: 2017年09月21日

2017年6月26日。この日は将棋界にとって、後世まで語り継がれる伝説の日となった。若干15歳の天才棋士、藤井聡太四段が公式戦29連勝の新記録を樹立した日だ。

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撮影:常盤秀樹

連勝記録の更新は実に30年ぶり。今回の新記録がいかに偉大な記録かがうかがえるが、それ以前に達成されている記録もまたすごい。今回は、30年間破られなかった大記録を含めて、過去に記録された連勝記録ベスト5を振り返ってみたい。

1)神谷広志八段の28連勝

神谷八段は1981年3月に19歳で四段プロデビュー。そして、驚異の28連勝は神谷八段が五段時代の1987年2月から8月にかけて達成している。それ以前の記録は22連勝だったので、23連勝目が新記録を樹立した日になるが、これが7月10日のことだった。

この記録が達成される前の連勝記録は、あとで紹介する塚田泰明九段の22連勝で、1986年の11月に達成されている。つまり、神谷八段の記録は前の新記録樹立からわずか8カ月後に達成されたことになる。塚田九段は運がなかったといえるが、最終的には22連勝から一気に6勝も記録を更新されているので、そこはかえってスッキリしたともいえそうだ。

2)丸山忠久九段の24連勝

歴代3位となるのは丸山九段の24連勝である。神谷八段の28連勝達成から7年後の1994年6月~10月にかけて達成された。プロ入りから4年後、五段時の記録だ。

この記録のすごいところは、当時のA級棋士など、八段、九段のトッププロを次々と倒しており、その中には当時名人を奪取して五冠王だった羽生善治(現二冠)も含まれていたこと。歴代新記録ではなかったためインパクトこそ弱かったが、内容については高く評価されている記録だ。

3)塚田泰明九段の22連勝

歴代4位の22連勝は3人の棋士が達成しているが、達成した順に見ていこう。まずは1986年11月、当時の新記録として達成された塚田九段の22連勝だ。

神谷八段の項で紹介したように、この記録はわずか8カ月後に更新されてしまうのだが、内容的な価値は現在でも薄れていない。というのも、この連勝の原動力になった「塚田スペシャル」という伝説的な戦法があるからで、後にも先にも、1つの戦法を原動力としてこれだけの連勝記録が達成された例はない。連勝記録と一世を風靡する戦法で、将棋界の歴史に2つの大きな足跡を残した大記録だ。

4)羽生善治二冠の22連勝

22連勝の2人目は将棋界の第一人者である羽生二冠の記録だ。1992年の4月から9月にかけて達成された記録で、当時の歴代2位タイの記録。前年に棋王を奪取した羽生は、それ以来、今日まで何かしらのタイトルを持ち続けている。

連勝の初期には、第10回全日本プロトーナメントの決勝五番勝負(対森下卓六段)、第4局、第5局を制して棋戦優勝を達成。さらに連勝の後半では、第40期王座戦の挑戦者決定戦(対米長邦雄九段)に勝ってタイトル挑戦を決め、そのまま五番勝負(対福崎文吾王座)の第1局まで勝っている。その後連勝は止まったものの、五番勝負は3連勝でタイトルを奪取し、そこから伝説の七冠ロードが始まっていくことになる。

また、羽生二冠は1987~1988年にかけてと、2005~2006年にも18連勝を達成している。特に2005~2006年の記録達成時は四冠王であり、18連勝中の7局がタイトル戦の番勝負、さらに7局が竜王戦1組とA級順位戦の戦いで、対戦相手はトップクラスの棋士ばかりだった。内容的な価値でいえば、このときの18連勝が最も高いといえるかもしれない。

5)山崎隆之八段の22連勝

22連勝の最後は山崎八段の記録だ。1998年のプロデビューから約5年後、五段時代の2003年3月から7月にかけて達成されており、当時の歴代3位の記録だった。

当時の山崎八段は猛烈に勝ちまくっていた。まず、2002年4月から8月にかけて16連勝を記録、2003年1月~2月にも7連勝を記録するなどし、2002年度の勝率1位と連勝賞を獲得した。そして2003年3月から22連勝を記録して2003年度も連続で連勝賞を獲得した。現在も通算勝率は6割5分を超えており、全棋士の中でも上位に位置している。

連勝の先にあるもの

連勝記録は、その時代ごとにさまざまなドラマを作ってきた。藤井聡太四段の29連勝も、何十年も語り継がれていく伝説になることだろう。ただし、連勝記録はあくまでも一時期の結果に過ぎない。重要なのはタイトルを獲ることや、将棋ファンの記憶に残る名局、名手を指すことだろう。藤井聡太四段が29連勝の衝撃を上回るほどの名勝負を見せてくれることを期待したい。

宮本橘

ライター宮本橘

1990年から印刷プロダクションでライター兼デザイナーに従事。2009年に独立してフリーライターとなる。2010年、日本将棋連盟のネット中継記者(ペンネームは八雲)を担当。2016年より棋王戦の新聞観戦記を執筆。ほか、マイナビニュースで電王戦関連の記事を執筆

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