羽生善治王座VS中村太地六段。王者の邁進か世代交代か。第65期王座戦五番勝負の展望は?(両者インタビューあり)

羽生善治王座VS中村太地六段。王者の邁進か世代交代か。第65期王座戦五番勝負の展望は?(両者インタビューあり)

ライター: 松本哲平  更新: 2017年09月04日

いよいよ第65期王座戦五番勝負が開幕する。現在5連覇中の羽生善治王座に挑むのは、王座戦2度目の挑戦となる中村太地六段。4年前にフルセットの死闘を繰り広げた両者が、再び相まみえることになった。

圧倒的実績の絶対王者

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第64期王座戦五番勝負第1局終局後。羽生王座は、糸谷八段の挑戦を3連勝で退けた。撮影:常盤秀樹

羽生王座は王座獲得24期、他の追随を許さない絶対王者だ。さまざまな大記録を持つ羽生王座だが、こと王座戦に関しては驚くべき実績を残している。

初めて王座を獲得したのは1992年のこと。第40期五番勝負で福崎文吾王座に挑戦すると、3連勝で王座を奪取した。このとき羽生王座は21歳。そしてここから19連覇という前人未到の偉業を成し遂げることになる。

この間、羽生王座は五番勝負において19連勝という驚異的な記録を打ち立てた。挑戦権を勝ち取って勢いに乗る挑戦者を退けるだけでも大変なことだが、1勝も許さずに6期連続のストレート防衛は信じられないというほかない。第59期に渡辺明竜王の挑戦を受けて失冠、20連覇は阻まれたものの、翌年の第60期に復位してからの5連覇は、羽生王座の強さを再認識させる結果となった。

雪辱を期す若獅子

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第65期王座戦挑戦者決定戦終局後の模様。中村六段は、青嶋未来五段を90手で下し、王座戦2度目の挑戦権を手にした。撮影:常盤秀樹

挑戦者の中村六段は29歳。これまでにタイトル挑戦を2回経験し、2011年度には歴代2位となる勝率0.8511をマークした。対局以外では、NHK将棋フォーカスの司会を務めていることでおなじみだろう。端正な顔立ちで、人気の高い棋士のひとりである。

今期は挑戦者決定トーナメントで阿久津主税八段、広瀬章人八段、菅井竜也七段(現王位)、青嶋未来五段という実力者を次々に破り、4年ぶりにタイトル戦の大舞台へと舞い戻った。

過去に登場した2回のタイトル戦では、2012年の第83期棋聖戦五番勝負、2013年の第61期王座戦五番勝負と、いずれも羽生王座と争ったが敗退。雪辱を期す戦いに臨む。

4年前の死闘

2人が前回戦った2013年の五番勝負は、フルセットにもつれ込む激戦になった。第3局を終えて中村六段が2勝1敗、タイトルにあと一歩まで迫る。そして迎えた第4局では、千日手指し直しの末に羽生王座が勝ってカド番をしのいだ。終盤は中村六段に勝ちがあったが、決めきれなかった。当時、私は現地で取材していたが、熱戦に興奮する検討陣、終局直後の羽生王座の疲労困憊(こんぱい)した表情が強く印象に残っている。第5局は羽生王座が勝って逆転防衛。初タイトルを目前まで引き寄せた中村六段だが、戴冠は叶わなかった。

振り返れば、このシリーズは挑戦者の奪取で終わっていてもおかしくなかっただろう。だが、羽生王座の土俵際での強さが上回った。

王者の邁進か、世代交代か

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撮影:常盤秀樹

ここ数年、王座戦では若手の挑戦が続いている。2014年には豊島将之七段(現八段)、2015年には佐藤天彦八段(現名人)が羽生王座をカド番まで追い込んだが、奪取は成らなかった。昨年は糸谷哲郎八段が挑むも、ストレートで退けられている。

こうした状況に中村六段が風穴を開けるかが、今シリーズの注目点だ。羽生王座がまたも若手精鋭を退けて防衛すれば、あらためて「王者強し」を将棋界の内外に印象づけることになる。逆に中村六段が奪取すれば、30歳前後の棋士が八大タイトルの過半数を保持することになり、世代交代の流れを大きく促進させるだろう。

開幕直前インタビュー

――挑戦者の中村六段の印象について教えてください。

羽生 攻めが鋭く、研究熱心で序盤戦術にも精通している印象を持っています。

――前回、中村六段の挑戦を受けた五番勝負を振り返ってどう思われますか。

羽生 大変な激戦でした。どう転んでもおかしくなかったシリーズだと思っています。

――再び中村六段の挑戦を受けますが、五番勝負に向けて。

羽生 前回以上に白熱したシリーズになればと思っています。

  

――羽生王座の印象について教えてください。

中村 常にトップを維持し、高いパフォーマンスを発揮されていると感じています。

――前回挑戦した五番勝負を振り返ってどう思われますか。

中村 自分のいいところも悪いところも出た番勝負だったと思います。

――今期五番勝負への意気込みをお願いします。

中村 いい結果を出せるよう精いっぱいやります。応援よろしくお願いいたします。

五番勝負は9月5日(火)、宮城県仙台市「仙台ロイヤルパークホテル」で開幕する。

松本哲平

ライター松本哲平

2009年、フリーの記者として活動を始める。日本将棋連盟の中継スタッフとして働き、名人戦・順位戦、叡王戦、朝日杯将棋オープン戦、NHK杯戦、女流名人戦で観戦記を執筆。連盟フットサル部では開始5分で息が上がる。

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