将棋コラム

菅井七段VS澤田六段、王位戦挑戦者決定戦の裏側で起こっていたこととは?

菅井七段VS澤田六段、王位戦挑戦者決定戦の裏側で起こっていたこととは?

更新: 2017年08月11日

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3回目となりました「関西棋士室だより」。今回は「棋士室」を飛び出して「あの部屋」からお伝えします。

梅雨入りを迎えた6月初め、関西将棋会館で第58期王位戦挑戦者決定戦が行われました。羽生善治王位への「挑戦者決定戦=挑決」とよばれる本局は、岡山県在住の菅井竜也七段と三重県在住の澤田真吾六段という「関西若手対決」の好カード。将棋会館3階の棋士室は朝から棋士や奨励会員による検討で大盛り上がり......かと思いきや、「挑決」となると話は別。検討の場は棋士室を離れ、別階に用意された専用の「検討室」へと舞台を移します。

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王位戦挑決の控室は関西将棋会館4階「水無瀬(みなせ)」の間。公式戦の対局場になることもある部屋で、片隅には「豹犬」と書かれた大きな置き駒が鎮座しているなど緊張感漂う和室です。余談ですが関西将棋会館の対局室は「江戸城」を模した5階に「御上段」「御下段」「芙蓉」の間が、4階は「水無瀬」「錦旗」の間があり、4階の間は駒の書体の名称がついています。「御上段」はほかの間より一段高く作られている最上席次の間で、挑決もここで行われました。

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「検討室」はタイトル戦の控室さながらに大賑わい。棋戦主催紙の記者の方や報道の方、棋譜中継記者はもちろんのこと対局の模様を映像配信する場合はそのスタッフの方や、挑決を戦う棋士の地元紙の記者の方などが勝負の行方を見守っています。

部屋の奥にはもちろん将棋盤があり、この日は平藤眞吾七段や今泉健司四段をはじめ、澤田六段の兄弟弟子である大石直嗣六段や千田翔太六段が、夕方からは脇謙二八段や長沼洋七段、村田智穂女流二段や長谷川優貴女流二段が検討に訪れていました。

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王位戦挑決は先手の菅井七段が角交換から向かい飛車に構え、後手の澤田六段が居飛車という「対抗型」になったため、継ぎ盤では先手側に振り飛車党が、後手側に居飛車党が座るという流れに。

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対局中の盤面を映すモニターを見つつ、序盤であれば「前例の有無」「前例との違い」が話題に上り、中盤からは複数の候補手を挙げて「具体的な変化」を突き詰め、終盤は際どい勝負なら「詰むや詰まざるや」、形勢に差がついている場合は「どうやったら逆転しそうか」「形勢が良い側が勝ち切る変化」を、実際に駒を動かして検討します。

本局は中盤で千日手を巡る攻防があり、それを澤田六段が端角で打開、その後菅井七段がリードを奪い、そのまま押し切るという展開だったので、検討の中心は「逆転するには」という話題。「この手が将来的に入れば」「この変化はどうか」という多岐にわたる候補手が検討されていましたが、対局が進行して玉が追い込まれるにつれ、だんだんと継ぎ盤は動かなくなり、やがて手は止まり、最後はモニターを全員で静かに見守る時間が流れました。

終局が確認されるとそこからはあわただしく、取材陣の方は素早く対局室へ向かい、棋士や女流棋士も感想戦を聞くためにそれに続きます。両対局者の感想戦では一局を通しての流れや指し手の検討が行われるとともに、同席した棋士が他の候補手を打診するという場面もよく見られる光景です。本局でいうと△9四角に変えて△4一飛や、▲4六桂に変えて▲4七桂が示されましたが、検討陣が「この手が良いのでは」と話していても両対局者の読みと全く異なるという見解の相違がままあるというのが「実戦心理」「対局者心理」を思わせます。

稲葉陽八段が挑戦した第75期名人戦、斎藤慎太郎七段が挑戦した第88期棋聖戦に続き、第58期王位戦は菅井七段が挑戦を決め、関西所属の若手棋士によるタイトル挑戦が続いています。関西が熱い!といっても過言ではないでしょう。

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今回は「棋士室」を飛び出し、「水無瀬」の間からお送りしましたが、いかがだったでしょうか。笑いあり、駒音あり、おやつありの「関西棋士室だより」でした。

山口絵美菜女流1級

ライター山口絵美菜女流1級

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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