阿部VS橋本の激しい攻め合いや、三枚堂の新工夫。最近指された相居飛車戦をご紹介【プロの技】

阿部VS橋本の激しい攻め合いや、三枚堂の新工夫。最近指された相居飛車戦をご紹介【プロの技】

ライター: 君島俊介  更新: 2017年08月03日

今回は最近指された相居飛車戦を紹介します。

まず、5月2日に行われた第67期王将戦一次予選▲阿部光瑠六段-△橋本崇載八段戦から。第1図は横歩取りの出だしから、互いに横歩を取らず玉を立って様子を見たところ。昨年から実戦例が増えている局面です。

【第1図は16手目△5二玉まで】

▲3四飛△3三角と進めば横歩取りの定跡形に合流しますが、阿部六段は▲2二角成△同銀▲7七角△8九飛成▲2二角成と踏み込み、△1五角▲2一馬△2四角▲3二馬△8六桂▲6九金△2八歩▲同銀△7八桂成▲同銀△9九竜▲2五歩△2六飛(第2図)と激しい攻め合いになりました。早くも終盤戦の様相です。

【第2図は34手目△2六飛まで】

第2図までの手順中、△2八歩▲同銀を利かしたのが大事で、単に△7八桂成から▲2五歩(参考図)まで進めると、第2図と違って△2六飛の威力が低く、△3五角と逃げるのも▲5五桂で先手よしとされています。

【参考図は▲2五歩まで】

第2図で▲2四歩と角を取るのは△2八飛成▲3八銀△7七香▲同銀△7八銀と迫って後手が指せます。第2図からは▲3九銀が最善で、後手は2六の飛車が働くかどうか。橋本八段は△5七角成から猛攻しましたが、少し後手が足りないようです。

5月16日に指された第58期王位戦挑戦者決定リーグ紅組▲澤田真吾六段-△広瀬章人八段戦では、広瀬八段が▲3九銀に△2五飛と歩を取りました(結果は先手勝ち)。ほかに△3五角も有力で結論はまだ出ていません。若手中心に研究会などで調べられている将棋です。

5月8日に指された第30期竜王戦ランキング戦5組▲三枚堂達也四段-△伊藤真吾五段戦は流行の横歩取りの将棋。第3図まで第75期名人戦七番勝負第1局と同じ出だしでした。ここで▲3八銀と1手で引き締めたのが新工夫。

【第3図は28手目△7三桂まで】

以下△2三銀に▲2四歩△3四銀▲3三角成△同桂▲7七桂△8四飛▲2三角(第4図)と猛攻に出ました。この攻め筋自体はよくありますが、持久戦にしても先手不満なしという認識があり、あまり指されていませんでした。第4図以下△2三同金▲同歩成△2五歩▲3六飛△3五歩▲3三と△3六歩▲3四と、と激しく駒を取り合っています(結果は後手勝ち)。

【第4図は37手目▲2三角まで】

先手はいつ▲7七桂と跳ねるかは難しいところ。▲7七桂△8四飛の交換があれば、△4四角の筋の負担や五段目の横利きを消せます。しかし、桂を早く跳ねてしまうと△7五歩と突く手が四段目の飛車の利きを通しながら桂頭を攻める味のいい手になってしまい、一利一害です。

本局の翌日に指された第58期王位戦挑戦者決定リーグ紅組▲阿久津主税八段-△木村一基八段(現九段)戦では、▲7七桂を跳ねずにすぐ▲2三角と攻めています。攻めの成否はまだ判断が難しいです。後手は▲3八銀に△6二金とする手もあって、駆け引きが複雑になりました。今後もこの型に注目していきたいと思います。

これがプロの技!

君島俊介

ライター君島俊介

2006年6月からネット中継のスタッフとして携わる。順位戦・棋王戦・棋聖戦などで観戦記も執筆。将棋連盟ライブ中継の棋譜中継で観る将ライフを楽しむ日々。

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飯島栄治

監修飯島栄治七段

棋士・七段
1979年9月東京都生まれ。桜井昇八段門下。2000 年プロ棋士となる。居飛車党で、攻めの棋風。飯島流引き角戦法で第37回升田幸三賞を受賞。 著書に『研究で勝つ!相横歩取りのすべて』『横歩取りハメ手裏定跡』(マイナビ出版)などがある。
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