竜王戦参加資格は誰の手に?アマチュア竜王戦全国大会の様子をご紹介

竜王戦参加資格は誰の手に?アマチュア竜王戦全国大会の様子をご紹介

ライター: 渡部壮大  更新: 2017年08月02日

6月24、25日に第30回記念アマチュア竜王戦全国大会が東京都港区「チサンホテル浜松町」にて開催された。全国の都道府県の予選を勝ち抜いた代表54人に招待選手2人を加えた総勢56人で行われる。優勝賞金50万円の他、上位入賞者は第31期竜王戦へアマチュア代表として出場できる魅力のある大会だ。また、アマ竜王戦は全国大会で唯一優勝者にアマ七段が贈られる大会でもある。

アマタイトル経験者や元奨励会三段が多数揃うハイレベルな大会だが、優勝候補は横山大樹さん(北海道)だろう。昨年秋から赤旗名人戦、支部名人戦、朝日アマ名人戦と優勝しており、史上初のアマ三冠となっている。

大会の前日には前夜祭が行われ、そこで予選リーグの組み合わせが発表される。代表選手にとって全国大会は真剣勝負でもあるが、大切な交流の場でもある。組み合わせを見ながらしばし歓談を楽しんでいた。

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アマ竜王戦の特色として、海外から招待選手が一人出場する。2013年の第26回大会ではカロリーナ・ステチェンスカさん(現女流1級)が出場した。今年はベルギーのフレデリック・ヴェレイデンさんが招待選手に。職業は外交官で、現在はパキスタンのイスラマバードに駐在している。そちらに比べると日本はまだ気温が低いが、湿度がすごいと話していた。

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今回は予選1回戦で山本伸一郎さん(大阪)に敗れ、2回戦で菊池裕太さん(神奈川)に敗れ2連敗で予選敗退となってしまった。ともに激戦区の代表で、ちょっと当たりが厳しかったようだ。

元々はチェスプレイヤーだったフレデリックさんは、日本に駐在していた際、チェスクラブを探しているうちに将棋と出会ったそうだ。フレデリックさんは外交官としてさまざまな人と会う上で、将棋はコミュニケーションに役立ったと話す。日本語は話せないが、日本の文化である将棋を指せると知ると、相手が親しみを持ってくれるのだそうだ。国境を越えた交流ができるのも将棋の魅力だ。

フレデリックさんは敗れたあとも、翌日の決勝まで熱心に観戦を続けていた。

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今大会最年少選手は高知県代表の沢村現真くん。中学1年生で初出場だ。 予選の1回戦は敗れ、2回戦では島根県代表の小畑悠太朗くんと対戦。小畑くんは中学2年生で、非常にフレッシュな組み合わせだ。

結果は序盤のスキをついて動いた小畑くんの快勝。沢村くんは残念ながら2連敗で敗退となってしまった。 「相手が強かった。もっと時間を使って考えるべきだった」と感想を話してくれた。もっと強くなってまた全国大会に出場することだろう。

2勝通過、2敗失格の予選を終えると決勝トーナメントへ。大会初日はベスト16までを決定する。決勝トーナメント進出者28人のうち、4人はシード枠で即2日目が決定する。得クジを引いてガッツポーズをする選手もいた。

ベスト4以上が竜王戦の出場選考対象になるため、ここを目標にする選手も多い。今大会で快進撃を見せたのが愛媛県代表の野島進太郎くん。初出場の高校2年生ながら強豪をなぎ倒しベスト4へと進んだ。高校は山根ことみ女流初段と同じで、後輩に当たるそうだ。

準決勝では横山大樹さん(北海道)に敗れたものの、3位決定戦では古作登さん(奈良)を破り3位入賞。「まさかの結果。自分が一番信じられない気持ち」と驚いた様子だった。思わぬ快進撃に愛媛に帰る飛行機がギリギリ、表彰式の写真には間に合わない結果となってしまった。

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3位決定戦で敗れた古作さんは今大会最年長の54歳。「年を取っていても合理的なトレーニングをすれば若い人と戦えると思っているので、それを証明できたのは良かった」と話した。

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決勝戦は横山さんと藤原結樹さん(大阪)。横山さんは苦戦続きだったが、地力を見せて勝ち上がってきた。藤原さんは初出場だが、元奨励会三段の実力者。戦型は相掛かりに。横山さんが優勢に進めていたが、藤原さんもギリギリの攻めで楽をさせない。

【図は100手目△6六馬まで】

図は△8五歩▲同玉△8四歩▲8六玉△7四桂以下の詰めろで、意外と受けが難しい。横山さんは▲6二金から詰ましに出たが、際どく詰まず藤原さんの勝ちが決まった。横山さんとしては図の直前に玉の逃げ場を誤ったのが敗因となってしまった。目前に迫っていたアマ四冠だが、今回はお預けとなった。

藤原さんは2015年の第58回三段リーグまで森信雄七段門下で在籍。アマチュア大会復帰後、1年経たずに嬉しい全国優勝となった。「最後は詰まされても仕方ないと思ったが、運良く詰みませんでした。最高の結果です。(プロの竜王戦については)いい将棋を指せるように、5時間じっくり考えたい」と感想を話した。

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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