影響を受けたのは、タイトル挑戦者にもなったあの二人【船江六段インタビュー vol.4】

影響を受けたのは、タイトル挑戦者にもなったあの二人【船江六段インタビュー vol.4】

ライター: 池田将之  更新: 2017年08月06日

最終回となる今回は、ライバルでもありよき友人でもある仲間の話や、船江恒平六段自身の将棋に対する取り組みや考え方など、さらにはプライベートの話をしていただきました。

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第1回電王戦(2012年1月14日)で、米長邦雄永世棋聖(当時・日本将棋連盟会長)とコンピュータソフト[ボンクラーズ]の対局後に記者会見が行われた。既に2013年開催の第2回電王戦出場が決まっていた船江四段(当時)も記者会見に同席した。撮影:常盤秀樹

――奨励会時代、詰将棋の年間最優秀作品に贈られる「看寿賞」を2004年度に受賞されました。

「詰将棋は稲葉くんの解けない問題をという一心で創っていました。そういうなかで偶然、よい作品ができました。詰将棋を解くほうは嫌いではないのですが、率先してという感じではなかったです」

――しかし、2010年に詰将棋解答選手権で優勝されました。

「解答選手権も竹内(貴浩、指導棋士四段)君と都成(竜馬四段)君に負けたくないという気持ちで頑張りました。甘い人間なので競争したり、押し上げてもらったりるすることで、今の自分があるんだなと。すごく周りの人の影響を受けやすいと思いますね」

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第2回電王戦は、プロ棋士とコンピュータソフトで5対局を行う団体戦方式での開催となった。2013年4月6日に第3局目として船江五段(当時)とコンピュータソフト[ツツカナ]との対局が行われた。写真は、対局開始の模様。開始時は、コンピュータの手を開発者の一丸貴則氏が指した。

――プロ棋士になった2011年、この年に新設された第1期加古川青流戦で優勝、C級2組順位戦では10連勝で昇級されました。

「三段リーグ時代の貯金としか言いようがないですね。特にうれしかったのは順位戦で菅井(竜也七段)君に勝ったことですね。地元棋戦の加古川青流戦が始まり、さらに優勝することができました。あんなにうまくいくとは不思議な感じでした」

――棋士になってから大きな影響を受けた対局はありますか?

「第2回電王戦で"ツツカナ"と指したのは大きかったですね。当時は負けることは許されないという空気でしたし、本当にあの将棋は勝ちたかったですね。あれからなんとなく棋風は変わったかなと。元々かなりの攻め将棋だったのですけど、割とバランスを取るようになったというか、いろいろな手を考えられるようになりました」

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電王戦で対局中の船江五段(当時)

――昨年は第1回上州YAMADAチャレンジ杯で優勝されました。

「運よく星が集まった感じでした。決勝戦で、いままでずっと負けていた千田(翔太六段)君に勝つことができたのがうれしかったですね。苦しい将棋だったと思いますが、あの持ち時間の中では我慢できたのかなと納得しています」

――井上一門の棋士とは仲がよいですね。

「菅井君とは先ほど言った順位戦が公式戦での初手合いでした。奨励会はぼくの6年後輩でした。菅井君と指すようになったら、(追いつかれてしまったという意味で)終わりだなと言っていましたが、結局は追い抜かれました。それも当然と思えるくらい、彼は本当にストイックです。棋士になって、やはり稲葉君と菅井君の影響は大きいです。3人で月に1度くらいは師匠の教室で会うのですが、夜は食事にいっても酒を飲まずに将棋の話をしています。彼らの背中が見えるうちに、追いつけるように頑張りたいです」

――最近の気分転換はいかがですか?

「お酒を飲んだり、美味しいものを食べに行ったりするのが好きですね。稲葉君や西川(和宏六段に)さんと一緒に行くことが多いですね。彼らとは好みや趣味が合います。スポーツが昔から好きで、連盟の部活動にも参加しています」

――同世代の棋士とは子供のころから戦ってきましたね。

「みんな変わらないですね。幼なじみで同業者、かつ友人という。彼らと過ごす時間は楽ですね。ありのままの自分でいられるというか、いまさら着飾っても仕方ないですし。なぜ戦う相手と酒が飲めるのか?それだけ狭い世界なんでしょうね。子供のころからの知り合いでないとこうはいかないでしょうね。大人になってから急に勝負するとなると別な感じだと思います」

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電王戦での対局は、船江五段(当時)の敗北となり、改めてコンピュータソフトの進化を見せつけられることになった。写真は、終局後の記者会見で答える船江五段。

――4月で30歳になりますね。

「びっくりしますね。棋士として将棋の勉強をもっと頑張りたいと思います。師匠からの年賀状に「忙しくなると思いますが、将棋ももっと頑張ってください」と書いてあったので頑張りたいと思います」

――NHK将棋講座の講師を4月から務めていますね。

「うれしいですね。前任者が佐藤天彦名人だったのでちょっと緊張しますけど。講座では好きな分野である終盤を題材にしています。聞き手の室谷(由紀女流二段)さんと頑張っていますので、ぜひご覧になってください」

今回の船江六段のインタビューを通して感じることは、関西所属棋士の結束力の強さが自身の将棋においても成長の原動力になっているのだろうと思います。

すでに棋戦優勝を2回している船江六段ですが、タイトル戦の舞台で見る機会もそう遠くない時にあるかもしれません。今後の活躍に期待したいと思います。

取材協力船江恒平六段

1998年に6級で井上九段に入門。2010年に四段。2016年に六段。2011年の第1期加古川青流戦、2016年の第1回上州YAMADAチャレンジ杯で優勝。

船江恒平六段インタビュー

池田将之

ライター池田将之

2010年からフリーライターとして活動開始。2015年まで将棋連盟モバイル中継記者。現在は新聞社に観戦記、将棋世界で「関西本部棋士室24時」などの記事を執筆している。

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