急戦矢倉ってどういう戦法?ポイントは▲6六銀【矢倉の崩し方 vol.16】

急戦矢倉ってどういう戦法?ポイントは▲6六銀【矢倉の崩し方 vol.16】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年07月30日

これまでのコラムでは、「棒銀」と「右四間飛車」による矢倉の攻め方をご紹介してきました。今回より、「急戦矢倉」という戦法をご紹介していきます。「棒銀」は銀を飛車先に進出させて銀交換や端攻めを狙いました。「右四間飛車」では、8八角のラインを生かして、4筋から飛車角銀桂歩を使って攻め込んでいきました。

では「急戦矢倉」とはどういう戦法なのでしょうか?まずは、どのような形かを先手の駒だけで初手から進めて見ていただきます。▲7六歩▲6八銀▲7七銀▲5六歩▲4八銀▲7八金▲6九玉▲5八金(第1図)。

【第1図は▲5八金まで】

ここまでは、なんの変哲もない矢倉戦の序盤ですよね?ではもう少し進めていきましょう。▲2六歩▲2五歩▲3六歩▲4六歩▲4七銀▲3七桂(第2図)。

【第2図は▲3七桂まで】

飛車先を伸ばし、銀と桂を押し上げて攻撃陣を整えました。これが、先手で指す急戦矢倉を指す場合ではいちばんオーソドックスな形となります。ここから、▲6六歩(第3図)と突くとどうでしょう?

【第3図は▲6六歩まで】

▲7九角~▲6七金右~▲6八角~▲7九玉~▲8八玉(第4図)とがっちりした矢倉囲いには組めます。

【第4図は▲8八玉まで】

攻撃陣も、銀と桂が活用できそうな形で、とても美しいですね。

ですが、これでは急戦でもなんでもないただの矢倉囲いですね。▲6六歩と突いてしまうと、角筋が7七と6六で二重に止まってしまうので、その時点で積極的に攻めていく、ということはできなくなってしまいます。

それでは、第2図からどう進めていけば先手は急戦を仕掛けていけるのか? 次の一手が急戦矢倉の骨子になります。▲6六銀(第5図)と、矢倉囲いでは上部からの攻撃を受け止める、重要な守備駒を進出させます。

【第5図は▲6六銀まで】

このように、守りは薄くなってしまいますが、8八角のラインを生かして戦うのは右四間飛車と同じですが、タッグを組む相手が飛車から銀へと変わります。飛車は2筋のままで、5筋から右の歩をどんどんぶつけて戦いを起こしていきます。

この戦法も、飛車角銀桂歩を使って攻めますので、右四間飛車のように破壊力はありますが、桂をポンと跳ねて4五から仕掛けていく、というようなわかりやすさはあまりありません。さまざまな攻め筋を組み合わせて攻めていくことになりますので、いろいろな攻めのパターンを学ぶのにはとてもよいと思います。守りの7七銀を進出させて、玉も薄くなりますので、なかなか指しこなすには難しい戦法です。こんな攻め方があるよ、みたいな感じで軽くご紹介していきます。

また、急戦矢倉には、今回ご紹介した形以外にもさまざまな形がありますので、本格的な攻め方に移っていく前に、次回のコラムでご紹介していきます。

矢倉の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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