「タイトル戦初出場・菅井」VS「王位6連覇中・羽生」将棋界夏の風物詩、王位戦の展望は?

「タイトル戦初出場・菅井」VS「王位6連覇中・羽生」将棋界夏の風物詩、王位戦の展望は?

ライター: 相崎修司  更新: 2017年07月06日

将棋界夏の風物詩といえば王位戦七番勝負。今期(第58期)は羽生善治王位に、タイトル戦初出場の菅井竜也七段が挑戦する。

挑戦者の菅井七段は、現在第88期棋聖戦で羽生に挑戦中の斎藤慎太郎七段と並ぶ、関西気鋭の若手棋士だ。2010年4月に17歳で四段昇段を果たすと、いきなり32勝10敗の好成績を挙げる。この成績が評価され、翌年度の大和証券杯ネット将棋・最強戦に参加。初戦で羽生を破るとそのまま勢いに乗って棋戦初優勝。11年度の新人賞を受賞した。

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第58期王位戦リーグ最終局、千日手指し直しで駒を並べる菅井七段。撮影:常盤秀樹

タイトル戦出場も早くから期待されており、王位戦では2年前に挑戦者決定戦へ進出。この時は広瀬章人八段と熱戦を繰り広げたが、終盤に逆転されて惜しくも挑戦はならなかった。今期は挑戦者決定戦で、やはり関西の俊英である澤田真吾六段を破り、満を持して初のタイトル戦へ臨む。

過去、羽生王位とは1勝1敗。今期リーグでも渡辺明竜王や佐藤天彦名人を破っており、すでに一線級の力があることは間違いない。棋風は関西の先輩である久保利明王将を目標とする振り飛車党だが、芸域を広めるため、一時期居飛車を連採していたこともある。

対する羽生王位。王位戦では現在6連覇中で、通算では18期獲得。同一タイトル18期は羽生自身の持つ王座24期、大山康晴十五世名人の王将20期に続く3位タイ(大山は名人が18期)である。棋聖戦では五番勝負の第3局で斎藤七段に不覚を取ったものの、2勝1敗で防衛まであと一歩に迫っている。11日に行われる第4局で防衛を決めれば、この夏は王位戦七番勝負へ全力投球が可能となる。

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第57期王位戦七番勝負第7局終局直後の羽生王位。撮影:牛蒡

棋聖戦、王位戦、そして9月から始まる王座戦ではいずれも現在5連覇以上を継続中と、夏に無類の強さを誇る羽生王位だ。当然ながら連戦も慣れているため付け入るスキなどなさそうだが、羽生がタイトル戦で振り飛車党と戦うのは相当に久しぶりとなる。さかのぼってみると、まず目につくのは2期前の王位戦で戦った広瀬八段だが、当時の広瀬は番勝負で1局しか振り飛車を指さなかった。羽生のタイトル戦が全て振り飛車となったのは5期前の王位戦で藤井猛九段と戦った時以来である。最新型の振り飛車とは大舞台で戦ってないともいえるので、研究家の菅井が序盤でどのような駒組みを見せるかが注目だろう。

菅井の師匠である井上慶太九段は「弟子がタイトル戦に出るのは夢だったので、名人戦の稲葉君(陽八段)に続いてくれたのはうれしい。稲葉君は残念だったが、弾みとして次にステップしてほしいし、菅井君にもいい経験になるでしょう」と目を細める。そして「強敵を相手にした菅井君が勝つ気満々なのは頼もしく思いますね」と続けた。

タイトル戦を戦う弟子の注目点を尋ねると「勝負に全身全霊で打ち込んでいる、ファンの方にはその姿を見てもらいたい」と語り「おそらく、居飛車対振り飛車の対抗形になると思います。タイトル戦では久々なので、ファンの方に見ごたえのある将棋になるのではないでしょうか」と番勝負の展望を述べた。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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