将棋コラム

上田初美女流三段自戦記。第10期マイナビ女子オープン五番勝負を振り返って【後編】

上田初美女流三段自戦記。第10期マイナビ女子オープン五番勝負を振り返って【後編】

更新: 2017年07月05日

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開幕早々カド番に追い込まれてしまったが、自分でも指し手を読めていないのをハッキリ自覚していた。こういう状態は前にも一度経験したことがあるが、おそらく精神面の強さが足りないのが原因なのだと感じている。人間に精神的な波があるのは当たり前の事だが、その中で常に勝っている人は技術だけでなく精神も他者に勝っているのだと思う。

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「西浦温泉 旬景浪漫 銀波荘」前の三河湾を臨む浜辺で記念撮影。撮影:常盤秀樹

3局目は西浦温泉 旬景浪漫銀波荘での対局。目の前に海原が広がり、時間がゆるやかに流れている様に感じた。旅館の皆さまの気遣いが温かく、今度、プライベートでも訪れたいなと思った。タイトル戦は今まで91回行われ、女流棋戦開催は今回が初めてだそう。これをきっかけに女流棋戦開催の歴史も重ねていただけたらと願う。

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昼休時に対局室を出る上田女流三段。「銀波荘」では過去91回対局が行われており、92回目となる今回が初の女流タイトル戦開催となった。撮影:常盤秀樹

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終局後の模様。対局室からは、海を眺めることができる。撮影:常盤秀樹

後が無い3局目は四間飛車穴熊を採用した。子どもの頃から大好きな戦型で、安心して気持ちを預けられる。予想では相穴熊になると思っていたが、加藤女王は天守閣美濃から銀冠に組み替えた。普通の銀冠とは少し違った指し方だが▲7七角を上がらない事により▲6八銀~▲7七銀と固めようという工夫だ。

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3連勝で防衛を果たした加藤女王。撮影:常盤秀樹

角(47手目図5)の局面が最初のポイントで後手としては△6五歩と突くべきだった。▲同歩△同銀▲6六歩には△7六歩も△5四銀も有力だ。

【第5図】

△5一角と引き、△7三角~6五歩を狙ったが▲2四歩△同歩▲5五歩△同銀▲2四角△2二飛に▲4六角(図6)

狙いの一手。普通の形であれば△2七歩で受かるのだが、△5五角が2二飛に当たるので成立しない。▲4六角は見えていたのだが、先程の△6五歩と比べると守勢に立たされてしまう。

【第6図は▲4六角まで】

なによりこの直後にまた悪手を指してしまう。▲2八同角(57手目)に対して△3三角(参考図3)が有力だった。▲7二歩△同金▲5五角△同角▲7五飛が痛い様に見えるが△7一歩▲5五飛△3九飛は銀損ながら後手玉が固い。△3三角を逃してからはかなり苦しい将棋になってしまった。

【参考図3は△3三角まで】

シリーズを通して急所で間違えてしまい、良い所が出せなかった。3連敗という結果よりも内容の方が残念に感じてしまう。マイナビ女子オープンは私にとって唯一獲得したことのあるタイトルで、愛着もある。タイトル戦となって10年経つが、色々な事があり、一つ一つが貴重な経験となり、私自身を成長させてくれた棋戦だ。今年こそという気持ちもあったが、盛り上げる事ができなかった事も不甲斐なく思う。しかしどんなに不甲斐なくてもこの世界で生きる以上、また戦うしかないのだ。また大舞台で戦える様、日々を過ごしていきたいと思う。

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上田女流三段にとって、今回の番勝負は無念のシリーズとなってしまった。撮影:常盤秀樹

上田初美女流三段

ライター上田初美女流三段

1988年11月16日生まれ。東京都小平市出身。伊藤果八段門下。第31期女流王将戦でタイトル初挑戦。第4期マイナビ女子オープンで初タイトルを奪取。2015年11月から2016年3月まで産休の為休場していたが、復帰後の第43期岡田美術館杯女流名人戦、第11期マイナビ女子オープンを一児のママとしてタイトル戦に挑戦した。

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