コーヤン流三間飛車で穴熊退治!その極意は▲4五歩~▲4六銀【はじめての戦法入門-第12回】

コーヤン流三間飛車で穴熊退治!その極意は▲4五歩~▲4六銀【はじめての戦法入門-第12回】

ライター: 高野秀行六段  更新: 2017年06月01日

皆さん、こんにちは。高野秀行です。「石田流」編が一段落ついたところで、次の戦法へと移ろうかと思ったのですが、三間飛車といったら、忘れてはならない棋士がいました。それは「中田功七段」。今回はプロ棋士もあこがれる「コーヤン流三間飛車」をご覧いただきたいと思います。

初手から
▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩
▲7八飛△8五歩▲7七角△6二銀
▲6八銀△4二玉▲4八玉△3二玉
▲3八銀△5四歩▲5六歩△3三角
▲3九玉△2二玉▲5七銀△5三銀
▲5八金左(第1図)

【第1図は▲5八金左まで】

ここまでは何ら変哲のない自然な手順。居飛車はどうやら「穴熊」のようですが・・・

初手から長手順進めましたが、ここまで特別な手はありません。角道を止め、▲7八飛と「三間飛車」に振り、駒組みを進めます。一方、居飛車も持久戦策からどうやら、「穴熊」を目指している様子。そうです、振り飛車の天敵ともいえる「穴熊」退治が「コーヤン流三間飛車」なのです。

ここからこの作戦の骨子ともいえる、駒組みとなります。

第1図からの指し手
△1二香▲4六歩△1一玉▲3六歩
△4四銀▲4七金△4二角▲6五歩
△2二銀▲2八玉△3一金(第2図)

【第2図は△3一金まで】

早めに▲4六歩銀?▲4七金を作ります。狙いの次の一手は?

居飛車は△1二香から予定通り「穴熊」を目指します。この形に組ませないようにするのが「藤井システム」なら、堂々と組ませて勝負するのが「コーヤン流三間飛車」。▲4六歩~▲3六歩~▲4七金と自然に駒を組み上げます。ですが、この▲4七金までを早めに作ることが第1のポイント。△4四銀から四枚穴熊に組まれてしまいそうです。どういう意味なのでしょうか。第2図で狙いの一手があります。

第2図から
▲4五歩△3三銀引▲4六銀△7四歩
▲1六歩△7三桂▲6八飛△5一金
(第3図)

【第3図は△5一金まで】

▲4五歩?▲4六銀の好形が完成。これが「コーヤン流」の極意。

▲4五歩が狙いの一手。△同銀なら▲3七桂(参考1図)で銀が助かりません。4七金の陣形を早めにしっかり作ったことが、ここで効いてきます。 そして4五の位を確保すべく▲4六銀と上がるのが「コーヤン流」の極意。見るからに好形で、堅い穴熊にも決して引けを取らない陣形が完成しました。この4五歩、4六銀の形を作ることが最も重要なポイントです。

【参考1図は▲3七桂まで】

いわゆる「銀挟み」。▲4五歩を△同銀と取ることはできません。

居飛車は手薄となった6筋に△7三桂でアプローチを掛け、△5一金と玉を固めにいきます。さぁ、ここから華麗な仕掛けが始まります。

第3図から
▲5五歩△8六歩▲同歩△5五歩
▲同角△8六飛▲7三角成△8九飛成
▲5三歩△4一金右▲5八飛△5一歩
▲6四歩△同歩▲6三歩(第4図)

【第4図は▲6三歩まで】

次の▲6二歩成が受からず、先手優勢。この手順ができたのも▲4五歩、▲4六銀が好形だからこそ。

穴熊退治の急所は端攻め。第3図から▲1五歩△4一金右▲3七桂△3二金右▲2六歩(参考2図)として▲2五桂からの攻めを見せる手順もありますが、ちょっと固められ過ぎているのも事実。第3図からは▲5五歩と中央で手を作りにいきます。

【参考2図は▲2六歩まで】

いつでも▲2五桂から急所の端攻めができる態勢。四枚穴熊はすこぶる堅いのです。有力ですが、他の手段があります。

△8六歩と突き捨て△5五歩と手を戻したところで、▲5四歩も有力な一手。しかし、△4一金右に▲5五銀と出ると、△8六角▲8八飛△7七角成▲8二飛成△5五馬(参考3図)と手順に銀を取られてしかも「王手」。銀が出ることができないのなら、初めから▲5五角と角をさばきます。

【参考3図は△5五馬まで】

大さばきから△5五馬と銀を取られて、先手失敗です。

△8六飛を許しますが、これも予定の手順。▲7三角成から▲5三歩が好手で△4一金右▲5八飛で角を閉じ込めることに成功。そして▲6四歩~▲6三歩でと金作りが確約され、第4図ははっきり先手優勢。「コーヤン流」炸裂となりました。

実はこの手順、15年以上前の▲中田(功)-△高野戦の手順。「えぇ、△8六飛から飛車を成らせてくれるの?ありがたすぎる」と思って指していたら、▲5三歩~▲5八飛で必敗に気付き愕然。「なんて強い人がいるんだろう」と対局中に感動したのを、思い出します。

さて今回のポイントです。

(1)「コーヤン流三間飛車」は穴熊退治。しかし、早く動く必要はありません。▲4六歩~▲4七金の形を作ります。
2)△4四銀から四枚穴熊を目指す居飛車に▲4五歩~▲4六銀の好形を作ります。この形を作ることが「コーヤン流」の極意といっても過言ではありません。

(3)穴熊の急所は端攻めだが、5筋からも手が作れます。▲5五角と飛び出して、穴熊の飛車を成らせるなど、通常では考えられませんが、▲7三角成~▲5三歩が好手で「コーヤン流」炸裂。

「コーヤン流」の極意は▲4五歩~▲4六銀。この好形で穴熊を退治しましょう!

次回からは「向かい飛車編」。どんどん攻める▲7八金型をご覧いただきます。

はじめての戦法入門

高野秀行六段

ライター高野秀行六段

1972年6月横浜市生まれ。1984年に6級で中原誠十六世名人に入門。1998年4月に四段。棋風は居飛車本格派。趣味はゴルフ。将棋教室で多くの子供たちに将棋を教えている。

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