もうひと押しが必要な時は歩を活用。穴熊を攻略するための組み合わせを覚えよう【穴熊の崩し方 vol.13】

もうひと押しが必要な時は歩を活用。穴熊を攻略するための組み合わせを覚えよう【穴熊の崩し方 vol.13】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2017年05月08日

今回のコラムからは、さまざまな攻め方や、いままでにご紹介した攻めを組み合わせて応用していく指し方をご紹介していきます。まずは第1図をご覧ください。

【第1図】

竜と角が7一の金をにらんでおり、それを生かして攻めたいところです。 まずは▲7一角成はどうでしょうか。△同金にさらに▲同竜と切り、△同銀に▲6一金と貼りついていきます。以前に大駒を豪快に切っていき、金銀で貼りついていく攻め方をご紹介いたしましたが、残念ながら今回のケースでは、△8二玉と上がられても上部が広く開けていて捕まりませんし、△2一飛と打たれても、▲7一金△同飛▲6二金に△7八飛成とされて、これ以上後手玉に迫る手段がありません。

では、▲6四歩と垂らす手はどうでしょうか。次に▲6三歩成△同金と7二の金を連結から外せば、▲7一角成△同銀▲同竜と穴熊を崩壊させることができます。しかし、△6二歩と受けられると次の攻めがありません。

さて、残るは▲5二歩からのと金攻めしかないかと思われるところですが、実はたった1手で穴熊を崩壊させる急所を突く手があります。▲7三歩(第2図)が急所のたたきで、どう応じても後手の穴熊が崩壊します

【第2図は▲7三歩まで】

まず、△7三同銀、△同金はいずれも▲7一角成から金銀を二枚はがして迫れますよね。 △7三同桂には3通り攻め方があり、まずは(1)▲7四歩と打って、△6五桂には▲7三歩成で金銀どちらで取っても▲7一角成で崩壊ですし、△6一歩も▲7三歩成△同銀▲6三桂と攻め込んでいけます。(2)▲6二歩と垂らせば、△同金寄には▲同角成で8一の桂が跳ねているので△同金と取れず、▲6一歩成からのと金攻めが約束されます。

いちばん過激なのは(3)▲7一角成で、△同金には▲7二歩△8一金▲7一金で寄りですし、△同銀も▲6二金と打てば△同銀とは取れませんし、△同金は▲7一竜△8一金▲8二銀までの詰みがあります。

最後に、第2図の▲7三歩に対し、△6二金寄と逃げる手ですが、▲同角成△同金▲7二金(第3図)としてこれも後手陣は崩壊します。

【第3図は▲7二金まで】

いかに▲7三歩のたたきが強烈かということがわかっていただけたかと思います。
続いて第4図です。

【第4図】

今度は二枚飛車で7一の金をにらんでいる局面です。7三に後手の歩があるため、たたく手がなく、代わりの手を考えたいところです。歩がもう1枚あれば、▲7四歩と打ち、△同歩に▲7三歩と打てるのですが、あいにく1枚しかありません。
ここは、▲6二歩(第5図)と垂らす手が好手となります。

【第5図は▲6二歩まで】

次に▲6一歩成がありますが、△同金上と取るのは、▲8一飛成までの詰みとなりますし、△同金寄も▲7一飛成△同銀▲同飛成として後手陣は崩壊します。

第1図、第4図ともに、金銀3枚が密集した穴熊でしたが、たった1枚歩をたたいたり垂らしたりしただけで穴熊は崩壊しました。2枚の大駒で穴熊陣をにらんでいるときに、もうひと押しがないな、というときには、歩をたたいたり垂らしたりする手が決め手になることも多いです。

次回のコラムは第4図を少し変えた形から見ていきます。

穴熊の崩し方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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阿部光瑠

監修阿部光瑠六段

棋士・六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。

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