将棋コラム

2016年度、プロ棋士に流行った戦型。「矢倉」や「居飛車対振り飛車」の新手法とは?【プロの技】

2016年度、プロ棋士に流行った戦型。「矢倉」や「居飛車対振り飛車」の新手法とは?【プロの技】

更新: 2017年05月15日

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本欄を監修する飯島栄治七段に矢倉や居飛車対振り飛車で2016年度に流行した指し方をうかがいました。

矢倉

昨年度の矢倉戦では6三に銀を構える左美濃の急戦が流行しました。2015年度から千田翔太六段や阿部光瑠六段が指しています。第75期順位戦B級2組1回戦の▲中田宏樹八段-△斎藤慎太郎六段戦が代表的な将棋(第1図)です。結果的にこの対局の勝敗が昇級に大きな影響を与えました(結果は斎藤六段が勝ち、昇級して七段へ。敗れた中田八段は3位で次点だった)。

【第1図は23手目▲7九角まで】

コンピュータ将棋の影響で現れてきた作戦で、これによって矢倉の常識が変わりました。第1図のような展開から△5四銀と出たり、6三銀型のまま△7三桂から△6五歩と仕掛けたりと後手の自由度が高いのは魅力です。日本将棋連盟モバイルで中継された第64期王座戦一次予選の▲金井恒太六段-△梶浦宏孝四段戦のように右金を6二に上げる指し方も現れました(第2図)。7三桂にヒモをつけているのが長所です。

【第2図は24手目△6二金まで】

先手の対策としては、矢倉を目指すときに初手から▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩に▲7七銀とすれば、6三銀型の急戦を牽制できます(後手は6筋を争点にしにくい)。しかし、今度は第64期王座戦五番勝負第3局▲羽生善治王座-△糸谷哲郎八段戦のように、△5三銀右から△5五歩と中央を狙っていく指し方があります(第3図)。第75期A級順位戦▲森内俊之九段-△行方尚史八段戦では6二銀のまま△5五歩と突っかけました。

先手が5手目に▲6六歩から矢倉を目指した場合、第3図のように後手が5筋から動こうとするには途中で△8五歩▲7七銀の交換を入れることになりますが、5手目に▲7七銀から矢倉を目指すと、8四歩のまま中央から動けます。

【第3図は18手目△5五歩まで】

後手の左美濃急戦が流行し、積極的で有力な急戦矢倉が出てきて、先手の矢倉は下火になったといえます。そのような経緯から、居飛車党は主戦場を角換わりに切り替えていった感じです。もう、4六銀・3七桂型などじっくりした形はあまり見られなくなるかもしれません。

居飛車対振り飛車

居飛車対振り飛車では、ゴキゲン中飛車が流行しました。先手の主流は超速3七銀戦法です。
後手は4四に銀を構える(1)銀対抗か、(2)玉の囲いを急ぐかに分かれます。

(1)銀対抗では持久戦なら後手が穴熊を目指すことが多いです。第66回NHK杯の▲佐藤天彦名人-△渡辺明竜王戦(第4図)、JTプロ公式戦の▲深浦康市九段-△羽生善治三冠戦が代表例です。先手は銀対抗にも急戦を狙う将棋もあって、第75期A級順位戦の▲羽生三冠-△渡辺竜王戦などで指されました。

【第4図は40手目△7二金寄まで】

(2)玉を囲う指し方では、第5図の将棋が現れました。従来は△4二銀(参考図)以下▲4五銀△3二金▲3四銀に△2二角と引いていましたが、△4四角と出るのが新しい手です。菅井竜也七段の新手で、第42期棋王戦五番勝負第3局▲千田翔太六段-△渡辺明棋王戦や第6期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局▲加藤桃子女流王座-△里見香奈女流四冠戦と、タイトル戦でも指されました。難解ながら、後手の勝率がいいです(3月末現在、後手の8勝4敗)。先手がどう対応するか注目しています。

【第5図は24手目△4四角まで】

【参考図は20手目△4二銀まで】

石田流も一時期よりは減りましたが、指されています。藤井猛九段が2年くらい前から参入しているのは注目されます。

第6図は第29期竜王戦1組ランキング戦▲藤井猛九段-△丸山忠久九段戦。左美濃は後手の有力な対策のひとつです。▲7七角に△4四歩▲9八香△3三角▲1六歩△1四歩▲2八玉△2二玉▲9六歩△5四歩▲8六歩...と先手から動いて戦いになりました。結果は千日手ですが、いろいろな戦い方があると感じた将棋です。後手は△4四歩と角道を止めることで、▲6五歩と突かれても角交換になりません。

【第6図は23手目▲7七角まで】

似た形の第7図は第29期竜王戦1組ランキング戦決勝の▲久保利明九段(現王将)-△丸山九段戦。ここから1筋の歩も突かずに△7四歩と仕掛ける作りが新しいです。以下は▲同歩△同銀▲6五歩△7五歩▲6六飛...から決戦に。結果は後手快勝で、成否が注目されます。

【第7図は23手目▲7七角まで】

第29期竜王戦▲久保-△三浦弘行九段戦は囲いを組み合った展開です。第8図から▲9六歩△5五歩に▲4五銀△2三銀▲6五歩△同歩▲7四歩△同銀▲3六飛△6二飛▲3四銀と3筋に飛車を転じて攻めていきました。

第8図から銀冠に組めれば後手は不満がないので、その前に先手が総攻撃する将棋になります。

【第8図は30手目▲5四歩まで】

第9図は第24期銀河戦▲藤井九段-△糸谷哲郎八段戦。第9図は後手が左美濃ではありませんが、△7四歩を見せています。そこで先手が先に▲9五歩△同歩▲同香△9三歩▲6五歩△同歩▲9六飛△8二飛▲4五歩と動きました。

▲9三香成△同香▲9四歩の香交換や角交換を含みに、攻めの糸口が広いのが先手の強みです。藤井九段がうまく攻めをつなげて快勝。銀河戦優勝に向けて大きな勝ち星でした。

【第9図は32手目△7二飛まで】

このように石田流は、先手からいろいろと攻めを繰り出していけるのが特徴です。ただし、後手に堅く囲われる前に攻めたり、後手の不備を突いたりする仕掛けのタイミングが難しいといえます。
居飛車の対策も多く、今年も流行の兆しはあると思います。

飯島七段注目の戦型

最近私が注目したのは、増田康宏四段の対四間飛車の左美濃です。第10図、通常は▲7八玉から舟囲いにしますが、増田四段は▲7八銀から▲7九玉と左美濃に組みました。そして、銀冠にして▲6六角。私は引き角戦法をやっていますが、これは出る角戦法というのでしょうか(笑)。△6五歩と突かせてから▲7七角として銀冠穴熊を目指します。

【第10図は12手目△7二銀まで】

個性的な駒組みで革命的な予兆を感じます。第11図は中盤戦です。先手陣が乱されましたが、▲8七歩と打って固めたのが巧妙でした。自陣に補強する形が特殊な感じがします。このあとは強く攻め合って、穴熊の遠さを 生かして快勝しています。

【第11図は54手目△3四飛まで】

第47期新人王戦決勝三番勝負第2局の▲増田-△石田直裕四段戦でも銀冠穴熊を目指す将棋になりました。飯島七段は、「ソフト的な考え方が入っているのかは、わからないのですが、居飛車穴熊の駒組みの可能性を示して、対四間飛車の有力な対策が増えました。藤井システムにも対応できると思います」と見解を示しました。

飯島栄治

監修飯島栄治七段

棋士・七段
1979年9月東京都生まれ。桜井昇八段門下。2000 年プロ棋士となる。居飛車党で、攻めの棋風。飯島流引き角戦法で第37回升田幸三賞を受賞。 著書に『研究で勝つ!相横歩取りのすべて』『横歩取りハメ手裏定跡』(マイナビ出版)などがある。
君島俊介

ライター君島俊介

2006年6月からネット中継のスタッフとして携わる。2016年現在は順位戦・棋王戦・棋聖戦などで観戦記を執筆。将棋連盟ライブ中継で棋譜中継を楽しむ日々。

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