将棋コラム

羽生三冠にも勝って6勝1敗。AbemaTV『藤井聡太四段 炎の七番勝負』第7局収録舞台裏(藤井四段コメントあり)

羽生三冠にも勝って6勝1敗。AbemaTV『藤井聡太四段 炎の七番勝負』第7局収録舞台裏(藤井四段コメントあり)

更新: 2017年04月25日

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デビューからの公式戦連勝記録を更新中の藤井聡太四段。その記録は将棋界のみならず、一般メディアでも取り上げられていることからも、注目度の高さがうかがえる。

炎の七番勝負、その最終戦の会場にも多くのマスメディアが集まった。対戦相手は将棋界史上最強の棋士、羽生善治三冠である。最終戦が行われた収録の1日を紹介したい。

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収録当日。対局開始は午後だが、午前中には羽生三冠と株式会社サイバーエージェント社長の藤田晋氏の対談が行われた。対局前に別の仕事を行うのは異例とも思われるが、将棋界一忙しい羽生三冠にとっては慣れたことである。本局に限らず、テレビ収録が行われる早指し棋戦の前後に別の取材を受けるのは、もはや様式美と言ってもいいくらいだ。相次ぐ取材で、将棋会館にある応接室のスケジュール表を見ると、羽生三冠の名前で1日が埋め尽くされているのも珍しくない。

対談の収録が無事終わる。午後になると藤井四段も収録会場に姿を現した。対局開始は午後1時55分で、冒頭の撮影が許可される。前述したとおり、以前の6局と比べると報道陣の集まりが段違いで、開始時の写真を撮るのも一苦労だ。撮影に適したポジショニングが入れ代わり立ち代わりとなる。うっかり主催社のカメラにぶつかったり、カメラの視線に入ったりしたら一大事だ。対局開始時の撮影マナーに関しては筆者も駆け出しの頃に先輩記者から多くのお叱りをいただいたものである。

今までの収録と異なり、本局のみ、持ち時間2時間・切れたら1分将棋。これまでより倍の持ち時間で藤井四段が第一人者相手にどのような戦いを見せるか。もっとも、持ち時間に関しては三段リーグ(1時間半・切れ1分)に条件が近いので、最近では藤井四段の方がより慣れていたと言えるかもしれない。

将棋は先手藤井四段の角換わりから▲4五桂跳ね急戦に。昨年の第29期竜王戦七番勝負第1局でも類型が見られた進行だ。公式戦での出現は5局(※4月19日の糸谷八段―佐藤康九段戦を含む)と少ないが、水面下で多くの研究が進んでいる最新型である。この作戦は、駒損した先手の攻めが続くかどうか、というのが作戦の是非に直結する。本局は藤井四段の攻め、羽生三冠の受けという構図が長く続いた。図はその最終盤。

【図は97手目▲2二角成まで】


藤井四段の攻めが的確で羽生玉は風前の灯火だ。「6勝1敗か。強すぎるなあ」という嘆息が控室で挙がった時に、羽生三冠の手がすっと藤井玉へ伸びた。

△6九金が驚きのただ捨てだ。▲同玉と取らせて△3九飛と攻防に打つ。3六の歩を払えれば入玉の見込みも出てくる。もっとも▲4九歩の受けに対し、単に△3六飛成では▲4五銀左で後手勝てない。

底歩には△4七角! が第二弾の驚手。対して▲同金は△4九飛成以下詰み。▲7九玉△6九金▲8八玉まで決めてから△3六飛成なら、▲4五銀左には△8六竜からやはり先手玉が詰む。「ひえ~っ、手はあるものだなあ」と終盤の技巧に控室は大興奮。

だが、藤井四段は冷静だった。▲2五金△同竜と竜の位置を変えてから▲4七金と角を取る。これで先手勝ちだ。対して△2六竜と詰めろをかけるのは▲2五歩から後手玉が詰む。また△3四竜も▲同銀成から即詰みだ。羽生は△8六飛と走り、▲8七歩を見て頭を下げた。

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炎の七番勝負は藤井新四段の6勝1敗で幕を閉じた。開始前にこの成績を予想した人がどれほどいただろうか。このメンバーに6勝となれば、トップクラスに限りなく近い実力を持っていると断言してよいだろう。

藤井は羽生戦を振り返って「ずっと形勢判断が難しい将棋で、ようやく勝ちになったと思った局面で予想外の手を指されました。あらためて羽生先生の強さを感じました」と語る。

こうなると、公式戦での羽生―藤井戦が待ち遠しい。感想戦後の共同インタビューで「いつになると思いますか」とさりげなく水を向ける。羽生三冠は苦笑し、藤井四段は「早く戦えるように頑張ります」と控えめに語った。

羽生三冠はその後、別のお好み対局で藤井四段と再戦し、こちらでは貫録を見せた。将棋界の超新星が、史上最強棋士からそのバトンを受け継ぐ日はいつになるのだろうか。これからの戦いぶりに要注目である。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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