将棋コラム

佐藤天彦名人vs稲葉陽八段。第75期名人戦七番勝負の展望は?(両者のコメントあり)

佐藤天彦名人vs稲葉陽八段。第75期名人戦七番勝負の展望は?(両者のコメントあり)

更新: 2017年04月05日

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いよいよ第75期名人戦七番勝負が開幕する。佐藤天彦名人に挑むのは、A級1年目にして挑戦権を手にした稲葉陽八段。29歳の名人が28歳の挑戦者を迎え撃つことになった。20代の棋士同士で名人位を争うのは、第54期(1996年)の羽生善治名人と森内俊之八段(肩書は当時)以来21年ぶりのことだ。

奨励会時代の二人の関係

2人の所属は東西に分かれているが、出身は佐藤名人が福岡県、稲葉八段が兵庫県とどちらも関西。奨励会で研鑽を積んでいた時期も重なっている。少年時代の2人は、相手をどのように見ていたのだろう。

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第74期名人戦七番勝負第1局。撮影:常盤秀樹

佐藤名人
「稲葉さんと顔を合わせたのは、奨励会が初めてだったと思います。奨励会時代は意外と関わりがなかったかもしれません。年齢は近いですが、稲葉さんが確か2年くらい後に入ってこられたので。評判としては、すごい早指しということは聞いていました」

稲葉八段
「はっきりといつごろというのはわかりませんが、同じ関西奨励会でしたので当然、面識はありました。数人の輪の中に佐藤さんもいて喋るということはありましたが、直接2人で喋るということはほとんどなかったように思います。関西奨励会にいたころは佐藤さんがすごい勢いで昇級していたので、当たることはありませんでした」

2人が奨励会で初めて対戦したのは2005年、第37回三段リーグでのこと。稲葉三段は、三段リーグ1期目の最終日で佐藤三段と相まみえた。

稲葉八段
「こちらは4勝12敗と、連敗したら降級点という状況。相手は昇級争いと明暗がはっきりしていたのですが、そこで勝つことができて自信を持つことができました」

この1年後、第39回三段リーグでは佐藤三段が稲葉三段に勝って借りを返している。佐藤三段にとっては、結果的に四段昇段を決める1勝になった。

公式戦での対戦成績は?

では、2人の公式戦での対戦成績を見てみよう。  

対局日または放送日 棋戦 先手 後手 戦型
2011年1月11日 順位戦C級2組 稲葉● ○佐藤 三間飛車
2012年12月16日 NHK杯戦本戦 佐藤○ ●稲葉 矢倉
2015年6月14日 NHK杯戦本戦  稲葉● ○佐藤 横歩取り
2016年8月4日 王将戦二次予選 稲葉● ○佐藤 横歩取り


4戦して佐藤名人の全勝という結果だが、対局数が少ないため参考程度に考えたほうがよさそうだ。直近の王将戦はどちらが勝ってもおかしくない接戦で、最後は佐藤名人に勝運があった。注目の戦型だが、両者とも横歩取りが主戦場。今期七番勝負は横歩取りシリーズになることが予想される。

佐藤名人の横歩取り勝率は先手0.774、後手0.773。対する稲葉八段は先手0.703、後手0.578(どちらも3月28日時点)。佐藤名人の勝率は圧巻の一言だが、稲葉八段も高勝率をあげている。両者とも先手勝率が高いことは、羽生三冠と森内九段が戦ったシリーズを思い起こさせる。後手番での勝利が非常に大きな価値を持つことになるだろう。

名人戦にむけての両者の意気込み

2日制のタイトル戦という舞台についてはどうか。これは佐藤名人に一日の長がある。挑戦者から名人へと立場を変えて臨むことについては「大きくは変わらないと思います」と、さほど意識していない様子だ。

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第75期順位戦A級8回戦。撮影:常盤秀樹

一方、稲葉八段はすべてが初体験。「封じ手は気になります。また対局中に一晩寝るという経験がないので、寝られるかが気になっているところではあります」と語った。1日目に眠れぬ夜を過ごすことは、これまでに数々の大棋士が経験してきたことでもある。長丁場の名人戦は体調管理も戦いのうち。どう乗り切るか注目したい。

最後に、両対局者の意気込みを紹介する。

佐藤名人
「名人獲得以後の約1年間の成果を出して、よい結果につなげられるよう精いっぱい頑張ります」

稲葉八段
「自分らしい将棋が指せればと思います」

稲葉八段は本コラムのインタビューで、同世代の棋士について「佐藤さん(天彦名人)のことをいちばん意識します」と答えていた。短い言葉の中にも秘めた闘志がうかがえる。

第1局は4月6・7日、東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で開幕する。

松本哲平

ライター松本哲平

2009年、フリーの記者として活動を始める。日本将棋連盟の中継スタッフとして働き、名人戦・順位戦、叡王戦、朝日杯将棋オープン戦、NHK杯戦、女流名人戦で観戦記を執筆。連盟フットサル部では開始5分で息が上がる。

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