攻めさせて一気にさばくのも「石田流」。ポイントは▲6五歩のタイミング【はじめての戦法入門-第10回】

攻めさせて一気にさばくのも「石田流」。ポイントは▲6五歩のタイミング【はじめての戦法入門-第10回】

ライター: 高野秀行六段  更新: 2017年04月03日

皆さん、こんにちは。高野秀行です。前々回からお送りしている「石田流」編。組み上がるまでの注意、そして前回は▲7六飛~▲9七角~▲7七桂の本組みと呼ばれる形から、穴熊を攻略しました。今回は居飛車が工夫の駒組みをしてきた際の対処法についてご紹介したいと思います。まずは第1図をご覧ください。

【第1図は▲7六飛まで】

前回の第1図と同じ局面。これが「石田流」の基本図となります。

前回と同じく飛車を▲7六飛と浮き、これから玉の囲い、駒組みとへ進む局面です。前回はここから△5四歩~△5三銀と5筋を突いてきましたが、今回は隣の筋を突いていきます。

第1図からの指し手
△6四歩▲3九玉△6三銀▲5八金左 △5二金右▲9六歩△7二飛(第2図)

【第2図は△7二飛まで】

今回は△6四歩?△6三銀と6筋を盛り上がってきました。これが「石田流」の有力な対策です。第2図は△7二飛と攻めの形を作ってきた局面です。

△5四歩に変えて△6四歩と隣の筋の歩を突いて△6三銀と上がります。これが「石田流」に対する有力な対策です。振り飛車は前回と同じように▲3九玉、▲5八金右、そして▲9六歩と駒組みを進めます。居飛車は△6三銀の形を作ることで、一つの攻め筋が生じます。それが△7二飛です。

石田流の7五歩を目標に△7四歩から逆襲を狙っています。5筋を突いた形と同じように、本組みを作ってはいけないのでしょうか?

第2図からの指し手
▲7七桂△7四歩▲9七角△7五歩 ▲同角△7四銀▲6四角△7五歩 (第3図)

【第3図は△7五歩まで】

あれれ、早くも飛車の動く場所が・・・。△6三銀?△7二飛には「本組み」は危険です。

▲7六飛に▲9七角~▲7七桂という形が「石田流」の本組みと呼ばれる形です。もう覚えていただけましたね。この形を作るため、早くに▲7六飛と浮いているのですが、この△6四歩~△6三銀、そして△7二飛の居飛車の速攻には格好の餌食となってしまいます。

第3図まで進むと、アレ?飛車が・・・。ここで▲7三歩と切り返す手はあるのですが、△6二飛▲7五角△同銀▲同飛△6六角(参考1図)と手順に角をさばかれるので、うまくいったとはいえません。△6三銀~△7二飛はこのような狙いを秘めているのです。

【参考1図は△6六角まで】

△6六角が気持ちの良い活用。避けるべき変化。

では、この△7二飛にはどうしたら良いのでしょうか?第2図に戻ります。

第2図からの指し手
▲2八玉△7四歩▲同歩△同銀 ▲6五歩(第4図)

【第4図は▲6五歩まで】

「何もしない」で悠々▲2八玉と入るのが、正解。▲6五歩が厳しいカウンターパンチ!

△7五歩▲3六飛 △6五歩 (第5図)

【第5図は△6五歩まで】

飛車を横に使います。さぁ、技を掛けよう!

居飛車の狙いは△7四歩からの逆襲。これをどう対処するのが良いのか。

正解は「何もしない!」

そんなぁー、という声が聞こえてきそうですが、▲2八玉と悠然と入城しておきましょう。当然△7四歩と仕掛けてきますが、▲同歩△同銀に▲6五歩(第4図)が狙い澄ましたカウンターパンチ。以下△同歩なら▲7三歩△同飛▲2二角成△同銀▲8二角(参考2図)で、次に▲7三角成~▲7四飛と▲9一角成があり、実質的に両取りが掛かった局面となります。

【参考2図は▲8二角まで】

実質「両取り」で駒得確定。

そこで△7五歩と飛車先を押さえますが、▲3六飛と回るのが気持ちの良い一手。△6五歩(第5図)に早くも技が掛かります。

第5図からの指し手
▲2二角成△同銀▲5五角△3三角 ▲3四飛△9二香▲7三歩△同桂 ▲3三角成△同銀▲7四飛(第6図)

【第6図は▲7四飛まで】

飛車、角の大活躍で銀得に成功。手順中、天王山の▲5五角が光っています。

▲2二角成と角交換をしてから▲5五角と天王山に角を据えます。△4四角なら▲3四飛△3三銀▲4四飛△同銀▲9一角成(参考3図)で先手優勢。飛車を渡しましたが、△6九飛に▲6八角と閉じ込める手があり、飛車の打ち場所がありません。

△3三角にも▲3四飛と走り、▲7三歩~▲3三角成~▲7四飛と大技が決まりました。

【参考3図は▲9一角成まで】

飛車を渡しても、先手順に打ち込む隙はありません。

では今回のポイントです。

(1) △6四歩~△6三銀は居飛車の有力な「石田流」対策。
(2) この形から△7二飛が狙いの攻め筋。これに対し、本組みは危険。
(3) 正解は「何もしない!」
(4) ▲2八玉と玉を入城し、△7四歩▲同歩△同銀に▲6五歩が狙い澄ましたカウンターパンチ
(5) ▲3六飛と回り、天王山に据えた▲5五角から大技を決めます!

普通、攻めてくるところの数を増やして対応するものですが、このように相手に攻めさせて、一気にさばくのも「石田流」の魅力です。▲6五歩のタイミングをぜひ習得してください。

はじめての戦法入門

高野秀行六段

ライター高野秀行六段

1972年6月横浜市生まれ。1984年に6級で中原誠十六世名人に入門。1998年4月に四段。棋風は居飛車本格派。趣味はゴルフ。将棋教室で多くの子供たちに将棋を教えている。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています