小林宏七段インタビュー。師匠・真部九段に初めて会った時の思い出「オーラに圧倒されて、勝てなかった」【師匠との思い出・小林宏七段インタビュー vol.1】

小林宏七段インタビュー。師匠・真部九段に初めて会った時の思い出「オーラに圧倒されて、勝てなかった」【師匠との思い出・小林宏七段インタビュー vol.1】

ライター: 相崎修司  更新: 2017年03月07日

将棋のプロ棋士を目指すには、原則として、奨励会というプロ棋士を養成する機関に所属することになります。そして、奨励会入会時には師匠となる棋士の推薦が必要となります。つまり、師弟の関係はその時点から始まり、プロとなっても続きます。

こちらのコラムでは、師弟の固い絆や思い出について語っていただこうと思います。シリーズ2回目は、真部一男九段について、弟子の小林宏七段に思い出を話していただきました。(インタビュー:相崎修司)

真部一男九段
1973年に四段に昇段し、プロ棋士となる。「棋界のプリンス」と呼ばれたほど容姿端麗で、女性ファンも多かった。才能あふれる棋風は、タイトル戦での活躍も期待されたが、棋戦優勝は、1982年の第16回早指し将棋選手権のみだった。 2007年11月24日に転移性肝腫瘍のため死去。同日付で九段を追贈。第35回将棋大賞で東京将棋記者会賞と絶局となった「対豊島戦幻の△4二角」が升田幸三賞特別賞となった。

小林宏七段
1978年に6級で真部九段に入門。1984年に四段。2009年に七段。1992年の第11回早指し新鋭戦で優勝。

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インタビューを受ける小林七段。撮影:相崎修司

 ――最初に小林七段が真部九段に入門した経緯などについてお聞きしたいと思います。

「小学校高学年のころ、将棋が好きになりまして、中学3年生の時に中学生名人戦でベスト4まで進みました。準決勝で有森さん(浩三七段)に負けたんですけど、のちに有森さんが奨励会に入ったことを、『将棋世界』を読んで知りました。じゃあ僕も、という気持ちになりまして、プロ入りに関してはそれがひとつのきっかけですね」

 ――有森七段にはライバル意識のようなものを持っていたのですか?

「当時の感情は思い出せないけど、ライバル意識というよりは、刺激をもらったという感じですね。奨励会に入る時は師匠を決めないといけませんが、当時は自宅の近くに下平先生(幸男八段)の教室があって、そこに通っていたんです。今から考えると、下平先生にお願いすべきだったんですが、父の友人にNHK将棋部の方がいまして、師匠がそこに教えに行っていたんです。父の友人曰く、『真部さんも素晴らしい、その師匠の加藤治郎さん(名誉九段)も素晴らしい人格者で、ぜひ』と勧められたんです。一度将棋部に参加させてもらって、それがきっかけになりましたね」

 ――初対面の印象はどのようなものでしたか?

オーラがありましたよね。当時の師匠は若手のバリバリ。B級1組に上がる直前で、一番注目されていた時期です。試験は将棋になりませんでした。飛車香落ちで一回も勝てなかったのだから、よく入門を許されたと思います。当時の私の棋力はアマ四段くらいでしょうか。師匠のオーラを感じるから勝てないんです。他の方なら、同じ手合いでもまた違っていたと思います」

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 ――小林七段が奨励会入りしたのは1978年ですが、入会が決まった時に、真部九段から何か言葉はありましたか?

「特には何もなかったですね。おめでとうとも言われていないと思います。1年前に兄弟子の藤沢秀敏(囲碁棋士、藤沢秀行名誉棋聖の四男)さんが入会していましたが、苦戦していたので、大変な世界だとはわかっていました。師匠から将棋に対する心構えなどを教わったのは初段になってからです。級位者のころは、そういうアドバイス以前の段階だと見られていたのではと思います」

 ――初段になり、プロ将棋の骨格ができたということでしょうか。

「そうですね。それからはいろいろな話をしてもらえましたし、自分の中でプロ意識も強くなりました」

次回は、真部九段と小林七段の思い出話をしていただきます。師弟関係としては、年齢差がさほどなく、真部九段の気さくな一面が垣間見ることができます。お楽しみに。

小林宏七段インタビュー

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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