将棋コラム

2016年、プロ棋士に流行った3つの戦型。「横歩取り、角換わり、相掛かり」それぞれの新手法とは?【プロの技】

2016年、プロ棋士に流行った3つの戦型。「横歩取り、角換わり、相掛かり」それぞれの新手法とは?【プロの技】

更新: 2017年02月15日 08:30

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本コラムを監修する飯島栄治七段に昨年流行した戦型をうかがいました。

横歩取り

近年の横歩取りで主流の形は第1図。後手は△7二銀から動きを見せます。対して先手は▲5八玉の中住まいから(1)▲3八金~▲4八銀とオーソドックスに構えたり、(2)▲3八銀と上がったりする指し方が多いです。

【第1図は△5二玉まで】
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(1)は第74期名人戦第4局、第87期棋聖戦第1局と第3局、第57期王位戦第7局と2016年のタイトル戦だけで4局指されました。(2)は第41期棋王戦第4局(第43回将棋大賞名局賞を受賞)、第57期王位戦第3局などで指されています。

(1)は第2図が大きなテーマ図です。

【第2図は▲7七角まで】
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以下△7七同角成▲同桂△3三桂▲7五歩に△4五角と打ったのが三枚堂達也四段の新手(第3図)。△1六歩▲同歩△1八歩の香取りが狙いですが、これまでにない指し方で、2016年の横歩取りでいちばん印象に残りました。三枚堂流により、現在は先手が第2図を指すのに勇気のいる情勢です。

【第3図は△4五角まで】
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ほかに、先手が横歩を取った直後に▲6八玉(第4図)と上がる佐々木勇気五段流の実戦が増えました。注目の指し方で、▲5八玉から▲3六歩とする青野(照市九段)流とは玉の位置が一路変わって玉の耐久力が違います。また、後手は8五飛型で玉を4一や5二に構える将棋も再び出てきました。それらも今年増えるかどうか注目しています。

【第4図は▲6八玉まで】
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角換わり

角換わり腰掛け銀は2015年からの動きですが、先後ほぼ同じ形(第5図)で後手が△6五歩▲同歩△同桂▲6六銀△3五歩と仕掛ける新手法が出ました。斬新な攻め方です。従来は△6五同桂で△7五歩とさらに歩をぶつけるのが定跡かつ常識でしたから。

【第5図は▲3七桂まで】
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端の関係は大きいですが、先攻した側が悪くありません。そこで先手も▲1六歩を省略して▲4五歩から攻めるようになりました。つまり、長年のテーマだった純先後同型(第6図)は現れにくくなったのです。ここで角換わりの新たな段階に入ったと思います。

【第6図は△3三銀まで】
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そんな中、千田翔太六段が新しい形を発表しました。第7図は第65回NHK杯決勝▲村山慈明七段-△千田五段(当時)戦。4二玉型のまま△6五歩▲同歩△同桂と仕掛けたのが目新しい。村山七段は△6五同桂に▲6六銀△6四歩▲4五銀と進めましたが、先攻した後手は悪くないと見る向きもあります。

【第7図は▲3七桂まで】
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△6五同桂に▲同銀△同銀▲6三歩と反撃する指し方も先手有力です。将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝▲佐藤天彦名人-△豊島将之七段戦の進行で、これも難解。千田流の仕掛けは玉形にこだわらない素晴らしい着想です。

最近は先手が2九飛・4八金型に組む将棋も増えました。第5図の仕掛けを取り入れたのと同じ構図ですね。

相掛かり

相掛かりでは第8図で▲2四歩△同歩▲同飛と歩交換するのが普通の進行です。先手は2八に飛車を引いて、右銀を▲2七銀と繰り出すか、腰掛け銀を目指すか。後手は先手の様子を見てから歩交換するのがポイントで、8四や8二だけでなく8五に引く含みを持たせます。これが従来の定跡です。

【第8図は△3二金まで】
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ところが、2016年になって第8図から▲3八銀△7二銀に(1)▲9六歩や(2)▲5八玉と先手が様子を見る手段が増えてきました。

(1)▲9六歩は佐々木大地四段が多用していて、△9四歩なら▲3六歩△8六歩▲同歩△同飛▲3七銀(第9図)と銀の進出を優先させます。▲9六歩は第9図で△8七歩に▲9七角を用意しています。△9四歩で△3四歩なら▲2四歩から横歩を狙います。

【第9図は▲3七銀まで】
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第8図で(2)▲5八玉は変わった指し方で、コンピュータの影響もあるかもしれません。こちらは佐々木勇気五段が多用して白星を稼ぎました。

▲5八玉に△6四歩なら▲2四歩△同歩▲同飛△1四歩▲1六歩△6三銀▲2三歩△1三角▲2八飛(第10図)で、▲1五歩の端攻めが厳しく先手十分。▲5八玉と事前に5七を受けているのが光ります。また、▲5八玉に△3四歩も▲2四歩でやはり横歩取りを狙います。30年前に流行した塚田スペシャルを応用しているのが特徴です。

【第10図は▲2八飛まで】
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第8図とは違う出だしですが、横歩取り模様から横歩を取らずに▲5八玉(第11図)と上がり、以下△8四飛なら▲2二角成△同銀▲6六角△8二飛▲8三歩と攻める将棋も出てきました。第1期電王戦第1局の▲Ponanza-△山崎隆之叡王戦で現れた将棋で、後手の駒組みを制限させて、先手は角を手放しても気持ちよく駒組みができます。第2期叡王戦決勝三番勝負第1局の▲千田翔太五段-△佐藤天彦九段戦は、△8四飛で△4一玉として、▲2二角成△同銀▲7七角△8二飛▲8三歩と進んでいます。

【第11図は▲5八玉まで】
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また、第11図から△5二玉として、▲2二角成△同銀▲7七角に△8九飛成と攻め合う将棋もあります。これは激しい変化で公式戦では現れにくい形ですが、結論が出るかもしれません。

紹介した対局は各棋戦の公式サイトや中継サイトで棋譜をご覧いただけます。最先端の将棋を堪能していただけたら幸いです。

飯島栄治

監修飯島栄治七段

棋士・七段
1979年9月東京都生まれ。桜井昇八段門下。2000 年プロ棋士となる。居飛車党で、攻めの棋風。飯島流引き角戦法で第37回升田幸三賞を受賞。 著書に『研究で勝つ!相横歩取りのすべて』『横歩取りハメ手裏定跡』(マイナビ出版)などがある。
君島俊介

ライター君島俊介

2006年6月からネット中継のスタッフとして携わる。2016年現在は順位戦・棋王戦・棋聖戦などで観戦記を執筆。将棋連盟ライブ中継で棋譜中継を楽しむ日々。

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