将棋コラム

お正月の伝統行事、「指し初め式」をご紹介。羽生三冠、佐藤名人と1手指せる夢のイベント。

お正月の伝統行事、「指し初め式」をご紹介。羽生三冠、佐藤名人と1手指せる夢のイベント。

更新: 2017年02月19日

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お正月休み明けの将棋界に一年の始まりを告げる恒例行事があります。 千駄ヶ谷の鳩森八幡神社で行われる『将棋堂祈願祭』と、そのあとに東京将棋会館の特別対局室で行われる『指し初め式』です。今回2017年1月5日に行われたこの二つの恒例行事の模様を取材いたしました。

将棋堂祈願祭

東京将棋会館のすぐ隣に位置する鳩森八幡神社の将棋堂で、鳩森八幡神社関係者と将棋関係者が一同に集い、将棋界の発展、棋力向上をお祈りする『将棋堂祈願祭』が執り行われました。

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鳩森八幡神社の神主さんにより、神道の祭事に先立って行う清めの儀礼である、修祓(しゅばつ)や、祭神に祭祀の意義や目的を奏上する、祝詞奏上(のりとそうじょう)などが執り行われます。

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続いて参列者の玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われました。 玉串奉奠とは玉串(榊(さかき)の枝に紙垂(しで)や木綿(ゆう)といわれる紙片を付けたもの)を神様にささげる神道の儀式であり、それを行うことで神様に願いが伝わるとされています。

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玉串を受け取る羽生三冠。

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将棋堂に手を合わせます。

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最後に神酒拝戴(しんしゅはいたい)です。神酒を手に全員で乾杯をしました。 将棋堂の扉が開き、室内にある大駒を直接見ることができるのはこの将棋堂祈願祭の時だけで、とても貴重です。

また、昨年末に行われた「プロ棋士が子どもたちに将棋盤・駒をお届け!~日本将棋連盟|reU funding from ヤフオク!」という企画にて、ヤフーオークションで『指し初め式 参加権利』が出品され、今回3名の方がその権利を落札されました。

落札者様は戸辺誠七段と山口恵梨子女流二段のアテンドで『将棋堂祈願祭』を見学し、『指し初め式』に参加されました。将棋堂祈願祭を見学した『指し初め式 参加権利』の落札者様と戸辺七段、山口女流二段とで記念撮影も行いました。

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この記念撮影の後、戸辺七段と山口女流二段の案内で、みなさんは将棋会館の特別対局室に向かわれました。

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将棋堂由来記

将棋堂は、昭和61年に当時の将棋連盟会長大山康晴十五世名人が山形県の駒師香月氏が製作した大駒を鳩森八幡神社に奉納し、その大駒を納めるために同年11月に建てられたものです。毎年年初に祈願祭が行われています。棋力向上を願う参拝者はその願いを絵馬に託して奉納することができます。

指し初め式

「指し初め式」は一年間の幸福や健闘を祈念し、一局の将棋を棋士や関係者らが一手ずつ指し継いでいく伝統行事です。いわゆる全員参加の『リレー将棋』であり、棋士チームと関係者(来賓)チームに分かれての対局となります。

指し初め式は、決着がつくまでは指さず、指しかけとするのが伝統となっています。 ちなみに東京の指し初め式は1つの将棋盤と駒を使って参加者が1手ずつ指しますが、関西の指し初め式では同時に六面を使い、参加者は数手ずつ指すという違いがあります。

関係者側で最初に指すのは、『指し初め式 参加権利』の落札者様の娘さんである、松本侑夏さん(小学2年生)でした。侑夏さんは将棋を始めて1年くらい。昨年は将棋日本シリーズJTプロ公式戦と並行して行われた「テーブルマークこども大会」に初めて参加し、嬉しい大会初勝利をあげたそうです。

侑夏さんは、この日のためにお父さんと大橋流での駒の並べ方を特訓してきたそうです。 しっかりした手付きで駒を並べていく侑夏さんの姿に、近くで様子を見守っているトップ棋士たちもすっかり笑顔に。

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侑夏さんは堂々とした手つきで△3四歩。

1手ずつ指したので、これで次の方に交代となります。 大役を終えてお父さんのもとにかけよる侑夏さんに、羽生三冠が笑顔で拍手されていたシーンが印象に残りました。

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プロ棋士側は渡辺竜王に交代して3手目が指されました。関係者側で指したのは二人目の落札者様。飛車を振って三間飛車の戦型になりました。

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交代してプロ棋士側は佐藤名人が5手目を指します。三人目の落札者様が6手目を指して交代。

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羽生三冠と指したのは将棋連盟の子供将棋スクールの生徒さん。

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郷田王将と指したのも同じく将棋連盟の子供将棋スクールの生徒さんでした。

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森内九段と指した方は、将棋のルールをあまりご存知でなかったようで、桂馬を1マス上に進めてしまい、棋士側のみなさんがちょっとあわてるという一幕も。「その隣の香車なら大丈夫です」との棋士のみなさんからのアドバイスで△9二香と上がって無事に続行。 見守っているみなさんが笑顔になったとても良いワンシーンとなりました。

この対局はプロ棋士側の居飛車穴熊と関係者側の三間飛車の対抗型となりました。 そしてプロ棋士側も関係者側もどんどん交代して1手ずつ指し継いでいきます。

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プロ棋士側の大トリを務めたのは佐藤秀司七段でした。

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こちらは指し初め式が終わったときの局面です。ここで指しかけとなりました。

お正月の恒例行事である『将棋堂祈願祭』と『指し初め式』の様子をお伝えしました。 冬晴れの中で行われたこの行事には棋士も関係者も2017年をいい年にしようという気持ちで参加されていたようです。厳粛な雰囲気の中行われていた将棋堂祈願祭からは、伝統文化としての将棋を大切に守っていこうという棋士のみなさんの真摯な気持ちが伝わってきました。

また、指し初め式は真剣な中にも、時に笑いが起きたり、次に指す番の譲り合いがあったりと、終始ほのぼのとした空気感に包まれていました。一局の将棋を指し継いでいくことで生まれる参加者のみなさんの会話や笑顔から、将棋は人と人とが仲良くなるための素晴らしいコミュニケーションツールであることを、改めて感じる時間となりました。

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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