「プロとしてやってきた約8年の経験が問われる」A級連勝中の稲葉八段が考える、今の自分【注目の若手・稲葉八段インタビュー vol.3】

「プロとしてやってきた約8年の経験が問われる」A級連勝中の稲葉八段が考える、今の自分【注目の若手・稲葉八段インタビュー vol.3】

ライター: 池田将之  更新: 2017年01月26日

今回は、稲葉陽八段に自分自身の将棋や勝負に対する意識などを語っていただきました。

 ーープロ棋士になり、将棋の内容や意識の変化はありましたか?

「将棋の内容が変わった、ということはないですね。年齢制限を気にせずに将棋を指せるという安心感はありました。ただ、最近はもっと勝ちにこだわらなければならないという思いが強くなっているので、意識は少しずつ変わってきていると思います」

 ーーデビューしてすぐ、第80期棋聖戦で挑戦者決定戦まで勝ち進みました。

「自分でも何が起こっているのか分からないというのはありましたよ。昔から強い人と指すのが好きなので、伸び伸びと指すことができて実力以上のものが出たのかなとは思います」

 ーー挑戦者決定戦では木村一基八段に惜敗しました。

「対局室に入ると報道陣の多さに緊張しました。始まってしまえばいつも通りでしたけど。木村先生の研究の方が上で作戦負けになり、そこからうまく粘って混戦になりました。しかし最後、時間が無くなってきたときに慌ててしまいました。それまでの対局は勢いよく指して時間を余すことが多く、強い人とギリギリの勝負を経験していませんでした。そういう状況になったときの課題が残りましたね」

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 ーータイトル戦に手が届きそうだったという悔しさは?

「負けた直後はこんなこともあると思っていたのですが、五番勝負が始まると悔しさがこみ上げてきました。三段リーグのときもそうだったのですが、昇段した競争相手が公式戦を指していると『なんで自分じゃないんだ』と、悔しい気持ちになりました

 ーー今期、初参加のA級順位戦で4連勝(取材日2016年10月27日時点)スタートを切りました。

「基本的に強い人と指すのが好きなので、伸び伸び指せているところがあると思います。ただ、リーグ戦が煮詰まってくると違う感情が出てくると思うので、そのときにどういう将棋が指せるかはまだわかりません。これが勢いだけなのか、力がついているのか。プロとしてやってきた約8年の経験が問われると思います

次回は、同世代のライバルについて語っていただきます。お楽しみに。

取材協力稲葉陽八段

2000年に6級で井上九段に入門。2008年に四段。2016年に八段。2013年の第21期銀河戦で優勝。2017年の第75期名人戦でタイトル初挑戦。

稲葉八段インタビュー

池田将之

ライター池田将之

2010年からフリーライターとして活動開始。2015年まで将棋連盟モバイル中継記者。現在は新聞社に観戦記、将棋世界で「関西本部棋士室24時」などの記事を執筆している。

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