JT杯決勝、佐藤天彦名人と豊島将之七段の20代対決!次世代を担う2人のライバル関係に注目

JT杯決勝、佐藤天彦名人と豊島将之七段の20代対決!次世代を担う2人のライバル関係に注目

ライター: 直江雨続  更新: 2016年10月21日

2016年度将棋日本シリーズ東京大会、JTプロ公式戦の決勝戦がいよいよ10月23日(日)に東京ビッグサイトにて開催されます。今年度の決勝戦に進んだのは28歳の佐藤天彦名人と26歳の豊島将之七段。二十代同士によるJT杯の決勝戦は1999年の羽生善治四冠(当時)対丸山忠久八段(当時)以来です。まさに将棋界の世代交代を印象付けるフレッシュな決勝戦となりましたが、実はこの二人、因縁のライバルでもあります。今回、このJT杯決勝戦を前に、二人の過去の戦いと、ライバル関係についてご紹介したいと思います。

その因縁は三段リーグから始まった。佐藤天彦と豊島将之のライバル関係

img_6712.jpg

佐藤天彦名人のプロ入りは2006年10月1日で棋士番号は263、豊島将之七段のプロ入りは2007年4月1日で棋士番号は264。年齢は二つ違いの両者ですが、プロ入りは半年違いで棋士番号は一つ違い。実はこの半年違いのプロ入りには、ある因縁が秘められていました。

二人の奨励会入会は佐藤6級1998年9月、豊島6級1999年9月で1年違い。入会が早かった佐藤名人のほうが先に三段リーグに参加します。2003年の第34期、2004年の第35期三段リーグで次点となり、次点2回でのフリークラス入りの権利を得ます。しかし、佐藤三段はこの権利を放棄。フリークラスではなく順位戦に参加できる四段としてのプロデビューを目指し、引き続き三段リーグで戦うことを決意したのです。そして当時14歳の豊島三段が第36期より三段リーグに参加します。

二人の運命が交錯したのは第39期三段リーグでの直接対決。ここで勝利したのは佐藤三段でした。結果、14勝4敗で2位となった佐藤三段がついにプロ入りを決めます。一方の豊島三段もまた14勝4敗、しかし順位の差で3位となりプロ入りはなりませんでした。もし、直接対決で豊島三段が勝っていれば、結果は逆だったのです...!

続く40期三段リーグでは豊島三段は14勝4敗の成績で1位となり、ライバル佐藤四段に遅れること半年でのプロ入りを決めました。こうしてプロ棋士として、同世代のライバルとしての二人の関係が始まったのです。

プロ入り後の佐藤天彦と豊島将之のライバル関係

img_6505.jpg

次点2回の権利を放棄し、満を持してプロ入りした佐藤四段は、いずれタイトルを取る大器との前評判も高く、期待の新人でした。また、豊島四段もまた9歳でアマ六段(!)とプロ入り前から天才少年として有名で、プロ入り後は糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、村田顕弘五段とともに「関西若手四天王」と呼ばれていました。そんな二人の直接対決の成績を振り返ります。

2007年-2010年

プロ入り後の最初の順位戦でさっそく二人は激突します。2007年11月27日、第66期順位戦C級2組7回戦。結果は豊島勝ち。しかし、この年は両者昇級できませんでした。

2008年は、直接対決はありません。2008年の第39回新人王戦では豊島四段はベスト8どまりでしたが、佐藤四段は決勝三番勝負に進出。星野良生三段(当時)に2連勝して、棋戦初優勝。佐藤新人王となりました。

2009年6月1日、第22期竜王戦5組ランキング戦決勝がこの二人の顔合わせでした。結果は豊島勝ち。初参加からの2年連続優勝という快挙でした。この年は順位戦でも直接対決がありました。第68期順位戦C級2組2回戦。ここでも豊島勝ち。そしてこの年のC級2組を10戦全勝(!)した豊島五段はC級1組への昇級を決めました。

遅れまじと佐藤五段は翌年、2010年度第69期順位戦C級2組を10戦全勝(!)で昇級。「お前が全勝なら俺だって」という声が聞こえてくるような展開です。9月14日の第23期竜王戦4組昇級者決定戦準決勝でも二人の対局がありました。結果は佐藤五段の勝利。その勢いのまま竜王戦3組への昇級を決めています。

2011年-2014年

img_6494.jpg

二人の次の直接対決は2011年4月11日、第61回NHK杯戦1回戦第6局。結果は豊島六段の勝利。第42期新人王戦の決勝三番勝負は佐藤六段と豊島六段の対決となりました。1局目は豊島六段の勝利。しかし、佐藤六段の逆襲がここから始まりました。新人王戦三番勝負、第2局、第3局と佐藤六段が連勝し、二度目の新人王に輝いたのです。豊島六段の棋戦初優勝はお預けとなりました。

2011年度の第70期順位戦C級1組6回戦、直接対決は佐藤六段の勝ち。8勝2敗の一位となった佐藤六段、7勝3敗で二位となった豊島六段は同時昇級(!)となりB級2組へ。

2012年4月20日。まったく同じ日に二つのニュースが将棋連盟のHPに掲載されました。

(昇段日はどちらも4月19日でした。)

豊島七段は竜王ランキング戦連続2回昇級により、第25期3組決勝進出を決めた日付での七段昇段。佐藤七段は竜王戦1組昇級、第25期2組決勝進出を決めた日付での七段昇段でした。そうなんです。つまりこの二人は偶然にも同日に七段となったのです。

2014年度第73期順位戦B級1組5回戦。ついにB1での直接対決が実現します。結果は佐藤七段の勝ち。佐藤七段は最終的に10勝2敗で昇級!ライバルよりも先にA級へ。そして八段昇段も決めました。一方の豊島七段は6勝6敗の成績に終わってしまいます。

この年は二人の直接対決がもう一局ありました。2014年12月18日、第28期竜王戦1組ランキング戦。二人は1回戦で激突。この対局は豊島七段が勝利。これで二人のプロ入り後の通算成績は佐藤5勝、豊島6勝となりました。

2015年-2016年

この年の二人はタイトル戦への挑戦者決定戦でなんと2回も激突しています。

まずは2015年4月30日に行われた第86期棋聖戦挑戦者決定戦。豊島七段が佐藤八段に勝利。自身3度目のタイトル戦への出場を決めました。豊島七段は前年の王座戦に続いて羽生棋聖との番勝負を戦いますが、1勝3敗で敗れます。

そして2015年7月21日、第63期王座戦でも、またも挑戦者決定戦は佐藤八段対豊島七段の対決となりました。結果は佐藤八段が豊島七段に勝利。豊島七段の2年連続の王座挑戦を阻むとともに、自身初のタイトル挑戦を決めました。しかし羽生王座との五番勝負は2勝3敗で敗れてしまいます。

そして今年、佐藤八段は1期目のA級をトップで駆け抜け名人戦の挑戦者になると羽生名人を相手に4勝1敗で名人を奪取。佐藤名人となりました。ライバル豊島七段よりも先にA級に昇級し、そして初のタイトルが名人! 先を越された豊島七段の心中はいかばかりか。

いよいよ今週末、和服で直接対決!

佐藤名人が勝って三度目の棋戦優勝となるか、豊島七段が勝ってついに棋戦初優勝となるか。二人のライバルのこれまでの戦績は見てきていただいた通り佐藤6勝、豊島7勝とほぼ互角! お互いにとって絶対に負けたくない一戦ですね。

JT杯の決勝戦は10月23日(日)に東京ビッグサイトで公開対局で行われます。重要なポイントとして、両対局者は和服で対局します! タイトル戦などでしか見られない貴重な和服姿は必見ですよ!

詳しくはこちらのJT杯公式サイトをご確認ください。
大会日程:10月23日(日)16:20開演予定(14:20開場予定)
大会会場:東京ビッグサイト 東5・6ホール

入場は無料で、事前申し込みも必要ありません。(ただ、満員の場合は入場できない場合がございます。)将棋ファンの皆様はぜひ現地に足を運んで、ライブでの対局観戦を楽しんでみてください! ちなみに、JT杯ではイベント終了後、勝利者と握手することができますよ。どちらが勝つにせよ、和服姿の棋士と握手できるめったにないチャンス。もうこれは行く一手ですね!

*写真はすべて棋聖戦中継ブログより引用

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています