西山、4年連続のライバル対決制す ~ヒューリック杯白玲戦振り返り~

 西山朋佳白玲に福間香奈女流六冠が挑戦したヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負。今期から大幅に賞金がアップされ、注目度の増したシリーズだ。

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第1局

 第1局は東京都港区「グランドニッコー東京 台場」にて。角交換型の相振り飛車から、手厚く指して西山がリードを奪った。

【第1図は▲4五歩まで】

 ここで△4五同桂は飛車を見捨てる勝負手だが、▲同桂△2五飛▲8六桂と玉を直接攻めるのが速い勝ち方。以下は的確に寄せて、西山が開幕戦を制した。


写真:玉響

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第2局

 第2局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。駆け引きの末に、西山が振り飛車、福間が5筋位取りになった。

【第2図は△3八銀まで】

 終盤戦らしく、飛車取りを手抜いて▲3三と△4九銀不成▲4五馬△3三金▲7二馬△同玉▲5五桂と、一気に後手玉を寄せにいった。形勢としては際どかったがこの踏み込みが流れを引き寄せ、福間が押し切っている。


写真:飛龍

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第3局

 第3局は奈良県奈良市「ふふ奈良」にて。第1局と同じく角交換型の相振り飛車へ。福間の攻めがつながるかどうかの戦いとなった。

【第3図は▲4三桂まで】

 △4一香に対して▲4三桂で受け止めに掛かったが、この手は危険で△1七馬と4四の歩を狙われて忙しい。▲1九飛と馬に当てたが、そこで△2七馬と踏み込まれ、飛車の位置が悪く後手の攻めを受け切るのは難しくなった。以下▲2四歩に△2六歩で攻めは切れず、福間が押し切って2勝目をあげた。


写真:武蔵

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第4局

 第4局は京都府京都市「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」にて。本局も第2局同様、福間の5筋位取りの対抗形となった。福間が優位に進めていたが、西山も粘りを見せて二転三転の大熱戦となった。

【第4図は△4七桂まで】

 ここで▲6八玉とかわしたが、筋悪く△6九金打が好手。▲5七玉△7五角成▲6六歩△6五桂で後手の勝ち筋に。玉をかわすのは詰みで、実戦の▲6五同竜も竜が消えて後手玉が安全になってしまった。第4図では▲5八玉なら際どいながらも先手の勝ち筋だったようだ。西山が逆転で2勝2敗に。


写真:夏芽

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第5局

 第5局は北海道札幌市「札幌ビューホテル大通公園」にて。相振り飛車から早い戦いとなり、西山がリードを奪った。

【第5図は▲5六飛まで】

 厳しい王手銀取りで、どう受けても▲2六飛で局面がスッキリし、先手が抜け出したように見える。だが、ここで△5四角が驚愕の勝負手。▲2六飛なら△2七金で飛車を奪い攻め続ける狙いだ。それも先手が十分だが、実戦は▲5四同飛△5三金右▲5六飛△2七角▲4七玉△3五銀と進行。これも後手が苦しいながら、嫌みを残して勝負形になっている。以下も熱戦が続き、一時は混戦になったが何とか西山が踏みとどまり、3勝目をあげた。


写真:胡桃

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第6局

 第6局は石川県金沢市「ホテル日航金沢」にて。福間が先手では今シリーズ初の相振り飛車となった。

【第6図は△8四香まで】

 先手玉は飛車に弱いので、後手は飛車を狙ってきている。ここで▲6五飛が前局に続く驚愕の勝負手だ。△同歩と取らせて▲6四香と歩の裏に打ち、△7二玉に▲3八玉と手を戻して後手玉にプレッシャーを掛ける。ただ、△7一銀▲8二歩△同玉▲6一香成△同金▲同竜△6二金が冷静な対応で、玉の安全度に差があってやはり後手の勝ちやすい将棋だ。以下はうまく寄せて西山が押し切っている。


写真:潤

 これで西山が4勝2敗で防衛を果たした。昨年は2勝2敗から不戦での決着だっただけに、より防衛の喜びも大きいだろう。来年はクイーン白玲を懸けたシリーズとなるが、果たして挑戦者は誰になるだろうか。

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